第20章 女神の魂(後編)
セラ
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建造物内に入れば、中は薄暗く、此処が本当に神殿内なのか錯覚する程だ。蝋燭に火は灯されているのだが、明るさは保てていないように思えた。それでなのか、複数の牢屋が設置されているらしい。以前は必要なかった筈の設備。そんなものを造るんだったら、温泉スパリゾートなんてものを造ってほしかったものだ。きっと……厭、絶対安息できるだろう。何日間も入り浸る自信がある。罪人を裁くのは冥府だけで充分だと思うのは私だけだろうか。なぁんて考えていたその時、何処からか分からないが誰かの声が聞こえてきた気がした。広間に差し掛かった辺りだろう。
「あーはっはっはっは。こりゃ愉快。」
「ハデス!」
「現れおったな。」
『(今の声って……ハデス?)』
だが、よく聞き取れなかった。その上にハデスの声に掻き消されてしまった。気のせいなのだろうが、どうにも聞き覚えのある声である。忘れてはならない人物。だが、幾ら考えども考えども思い出せない。首をうんうん捻ってみるが、答えには到達出来なかった。懐かしさが胸中を過ったのは間違いないのだけれど。パルテナ様やイカロス、入り込んだ冥府軍と私達の他に誰かが侵入でもしたのだろうか。もし、そうなら何のために?考えを巡らせてみたけれど、明らかに可能性は低い。恐らく、杞憂に過ぎないだろう。
「おっと、聞かれる前に答えるけど混沌の遣いのことは、知らないよ?ヤツは月の神殿に封じられ うっぷんがたまっていたらしいからねぇ。」
「僕が余計なことをしたのか……?」
『それは私も一緒だよ。』
「セラちゃんはちがうよ!」
『ううん。私も同じだよ、ピット君。』
「あのとき、わらわがおればの。事情を話せばよかったものを。静寂のアロンはカタブツなのじゃ。が、そなたらを恨んでなんかおらん。敵の拠点をたたこうとするのは 当然の行動じゃからな。それに、なるべくしてなった結果じゃ。」
広間を歩いて行くと、中心部分に鍵が掛かっている開かない扉が窺えた。扉を開くには、鍵は必須アイテム。だが、周囲を見渡しても鍵が運良く落ちている気配はない。言わずもがな、地道に探す他方法はないみたいだ。探しに行きたいけれど、私達の行く手を阻むイカロス達を一先ず浄化しなければならないらしい。手っ取り早く浄化すべく、ピット君が動き出す。イカロス達を相手にするのは果てしなく心が痛むが、パルテナ様を助け出す上では時には非常にならなければならないのかもしれない。幾つかの迷いも今は捨て去るべきか。復活力が高いとは言え、浄化という形で部下に手を掛けるなど本来したくはないだろう。胸を痛めているのは何も私だけではない。彼だって同じなのだ。これ以上、彼に重荷を背負わせたくはない。意を決して、神器を手中に一歩前に出る。だが、彼の右腕が私の動きを静止させた。そんな、ピット君と目が合う。彼は微笑を浮かべつつ、首を横に振った。その役割は自分だけでいいという意思表示だろうか。右腕を下ろし、ピット君は瞬く間に妨害するイカロス達へ向かって行く。その姿を私は真っ直ぐ見守っているだけだった。
「左様。いずれにせよ、混沌の遣いを封じることはできなかったんでしょ?このハデスさんでさえ 手を焼くぐらいだからねぇ。」
「なんでそんな怪物を作るんだ!」
「生きとし生けるものたちは大切にしなきゃあ。すべての生きものが望まれて生まれると思ってんの?せっかく生まれてきたのになかったことにはできないっしょ?」
『平等性……ね。』
「戦いとなれば、別じゃがの。」
「そりゃ、文句言えないね。お互いさまだし。」「ならば、僕たちが混沌の遣いを倒す!そしてパルテナ様を救うんだ!!」
『うん!待ってなさい!混沌の遣い!!』
広間にいるイカロス達を全員浄化し終えたピット君は、先に進もうとした刹那道上に調理された骨つき肉が此見よがしに転がっているのを発見する。空腹になっても困るし、回復していたい彼にとっては拾い食いしたい所。骨つき肉の元へ真っ先に歩み寄るピット君。だが、骨つき肉を取った瞬間床が抜け、彼は真下へ真っ逆さまに落下してしまう。慌てて、抜けてしまった床を覗き込む。
『ピット君〜?だいじょうぶぅ?』
「うん。セラちゃんも来てごらんよ!こっちのルートが正解みたいだよ!」
『そうなの?それなら……えいッ!』
落下してしまったピット君を見つめてみるけれど、怪我はしていない様子だ。胸を撫で下ろしたのも束の間、聞けば下に落下するのが正規ルートらしい。もしかしたら、広間の中心に構えていた開かない扉の鍵も何処かに落ちているかもしれない。彼の言葉に促され、勢い良く下へ落下する。着地するぐらい訳ないのだが、ピット君は私の着地ポイントを瞬時に読み取り両腕で見事キャッチしてくれた。彼からしてみたら、なんてことはないらしい。
「あーはっはっはっは。こりゃ愉快。」
「ハデス!」
「現れおったな。」
『(今の声って……ハデス?)』
だが、よく聞き取れなかった。その上にハデスの声に掻き消されてしまった。気のせいなのだろうが、どうにも聞き覚えのある声である。忘れてはならない人物。だが、幾ら考えども考えども思い出せない。首をうんうん捻ってみるが、答えには到達出来なかった。懐かしさが胸中を過ったのは間違いないのだけれど。パルテナ様やイカロス、入り込んだ冥府軍と私達の他に誰かが侵入でもしたのだろうか。もし、そうなら何のために?考えを巡らせてみたけれど、明らかに可能性は低い。恐らく、杞憂に過ぎないだろう。
「おっと、聞かれる前に答えるけど混沌の遣いのことは、知らないよ?ヤツは月の神殿に封じられ うっぷんがたまっていたらしいからねぇ。」
「僕が余計なことをしたのか……?」
『それは私も一緒だよ。』
「セラちゃんはちがうよ!」
『ううん。私も同じだよ、ピット君。』
「あのとき、わらわがおればの。事情を話せばよかったものを。静寂のアロンはカタブツなのじゃ。が、そなたらを恨んでなんかおらん。敵の拠点をたたこうとするのは 当然の行動じゃからな。それに、なるべくしてなった結果じゃ。」
広間を歩いて行くと、中心部分に鍵が掛かっている開かない扉が窺えた。扉を開くには、鍵は必須アイテム。だが、周囲を見渡しても鍵が運良く落ちている気配はない。言わずもがな、地道に探す他方法はないみたいだ。探しに行きたいけれど、私達の行く手を阻むイカロス達を一先ず浄化しなければならないらしい。手っ取り早く浄化すべく、ピット君が動き出す。イカロス達を相手にするのは果てしなく心が痛むが、パルテナ様を助け出す上では時には非常にならなければならないのかもしれない。幾つかの迷いも今は捨て去るべきか。復活力が高いとは言え、浄化という形で部下に手を掛けるなど本来したくはないだろう。胸を痛めているのは何も私だけではない。彼だって同じなのだ。これ以上、彼に重荷を背負わせたくはない。意を決して、神器を手中に一歩前に出る。だが、彼の右腕が私の動きを静止させた。そんな、ピット君と目が合う。彼は微笑を浮かべつつ、首を横に振った。その役割は自分だけでいいという意思表示だろうか。右腕を下ろし、ピット君は瞬く間に妨害するイカロス達へ向かって行く。その姿を私は真っ直ぐ見守っているだけだった。
「左様。いずれにせよ、混沌の遣いを封じることはできなかったんでしょ?このハデスさんでさえ 手を焼くぐらいだからねぇ。」
「なんでそんな怪物を作るんだ!」
「生きとし生けるものたちは大切にしなきゃあ。すべての生きものが望まれて生まれると思ってんの?せっかく生まれてきたのになかったことにはできないっしょ?」
『平等性……ね。』
「戦いとなれば、別じゃがの。」
「そりゃ、文句言えないね。お互いさまだし。」「ならば、僕たちが混沌の遣いを倒す!そしてパルテナ様を救うんだ!!」
『うん!待ってなさい!混沌の遣い!!』
広間にいるイカロス達を全員浄化し終えたピット君は、先に進もうとした刹那道上に調理された骨つき肉が此見よがしに転がっているのを発見する。空腹になっても困るし、回復していたい彼にとっては拾い食いしたい所。骨つき肉の元へ真っ先に歩み寄るピット君。だが、骨つき肉を取った瞬間床が抜け、彼は真下へ真っ逆さまに落下してしまう。慌てて、抜けてしまった床を覗き込む。
『ピット君〜?だいじょうぶぅ?』
「うん。セラちゃんも来てごらんよ!こっちのルートが正解みたいだよ!」
『そうなの?それなら……えいッ!』
落下してしまったピット君を見つめてみるけれど、怪我はしていない様子だ。胸を撫で下ろしたのも束の間、聞けば下に落下するのが正規ルートらしい。もしかしたら、広間の中心に構えていた開かない扉の鍵も何処かに落ちているかもしれない。彼の言葉に促され、勢い良く下へ落下する。着地するぐらい訳ないのだが、ピット君は私の着地ポイントを瞬時に読み取り両腕で見事キャッチしてくれた。彼からしてみたら、なんてことはないらしい。