第19章 光の戦車(前編)
セラ
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「ピット、」
『セラ、』
「『いきます!』」
「うむ。出陣じゃ!」
本来ゲートから飛び立つ約五秒前ならば、きちんと気持ちを切り替えて自分がするべき課せられた使命を全うすべく羽翼を広げ大空へ舞っていただろう。過去だろうと現在だろうと誰かを助けられるのならば、それは故に喜びへと変わる。ずっとそうしてきたし、誰かの表情に笑顔が戻るのならば、自分は顧みず無我夢中に戦って来た。これからもそうするし、この瞬間闇夜の中衣を翻し神器を駆使して魔物浄化に勤しんでいる所だ。けれど、決して集中しているとは言えない。前回引き起こった出来事が脳裏に焼きついて離れてくれず、何とも形容し難い気持ちを引きずっている。隣で懸命に戦っているピット君を盗み見て、気持ちの整理がついたのだと内心羨ましく思う。
前回の出来事を少々述べるが、ピット君は指輪にされ、私は昏睡状態にある中世界は大変な目に遭ったいた。我らの主、パルテナ様が三年もの月日突然人類の敵になってしまったのだ。良心が呵責されるが、それは今重要視せず話を進める。問題は、彼女の発言。私の力を決して悲観せず、使わせない方法で戦わせてくれていたのに慈悲深く芯の強いパルテナ様が有ろうことかあの力を欲しがったのだ。ピット君は誰かに操られているからなんて声を大にして叫んでいたが、実際真実は未だ闇の中だ。もしかしたら本心で言ったのかもしれないし、それは誰にも分からない。私だってそうではないって信じたいけれど、なかなか気持ちの整理がついてくれなかった。きっと、ピット君は私の心境を察しているだろう。だが、敢えて言葉にしなかった。真っ直ぐ前を見据えて、戦ってくれるピット君には悪いが複雑な思いは払拭出来ず、それでも今神器で浄化している状況にある。
「冥府軍!」
『お出ましね。』
「若干の援軍は送ってやる。が、かえってジャマになろう。すぐ引っ込めるからの。」
「自然軍と共闘することになろうとは……。」
『なんだか不思議なかんじ。』
雲の影に隠れ、その身を輝かせられなかった月がひょっこり顔を出し、地上を照らしてくれている。朧月だ。更に湖が処々に位置し、木々が生い茂り辺り一面緑に包まれている。風流と称するに相応しい場所。ナチュレちゃんが好みそうな風景だと内心思う。綺麗な景色だと感嘆する傍ら、冥府から派遣された魔物達が次から次へと邪魔して来る。今から向かおうとしている目的地に何か関係があるのだろうか。それを証拠に、私の羽翼にも“飛翔の奇跡”がついている。ナチュレちゃんの考えがあるのは分かるが、それは未だ明確になっておらずこちらを軽く悩ませている。
「パルテナの神殿のフォースフィールドは鉄壁じゃ!そこで光の戦車を借りることにしたのじゃ。」
「『……光の戦車?』」
「銀河をめぐり、星から星へも飛べるという戦闘用馬車。そのスピードとパワーは彗星並みでな。」
「それでバリアを破ると。」
「んん、そうじゃそうじゃ。」
なんて思っていたが、案外あっさり今回の任務内容を話してくれた。私達が神殿の障壁を打ち砕くべく、使用するのが“光の戦車”。正直、聞き覚えもない。だが、ナチュレちゃんが“借りる”と言っているぐらいだから、当然所有者が存在するのだろう。そう簡単に貸してくれるだろうか。それさえも、疑問が尽きない。しかし、話の雲行きは段々怪しくなってきている。
「僕たちが光の戦車に乗ってカタいカベにぶつかれと!」
『(……私も?)』
「もちろんじゃ。」
「死ぬかもしれない?」
「ありえるのぅ。」
「エアバックとかは?」
「そりゃついておらんじゃろ。」
陸のトンネルを擦り抜けて、会話はトントン拍子で進んでいる。明らかに、こちらが不利な状態。光の戦車でフォースフィールドにぶつかる勇ましい行動もなかなかだ。だが、命が幾つあっても足りやしない。それしか方法がないけれど、簡単に頷けないだろう。
ここ迄彼がナチュレちゃんに質問攻めしている辺り、提案を撥ね退ける勢いだ。気持ちは、充分分かる。可能ならば別の方法に縋りたいけれど、彼女のことだ。何としてでも、強行させるだろう。
「……却下!ぜったい却下だ!ムチャぶりだ!」
『私たちの身が危ないよ、ナチュレちゃん。』
「そなたら、パルテナを救いたくないのかの?」
「うッ……。」
『(あっ、痛いトコつかれてる。)』
「パルテナはいま、なにをしているんじゃろうの。心の迷宮に閉じこもっておるかもしれんのう。助けてぇー。ピットセラ助けてぇー。」
「わ、わかった!わかったよ!!パルテナ親衛隊長ピット!覚悟を決めるッ!!」
『(やっぱりピット君が負けちゃうのね。)』
「最初からそう言えばいいものを。ウジウジしおってからに。」
『セラ、』
「『いきます!』」
「うむ。出陣じゃ!」
本来ゲートから飛び立つ約五秒前ならば、きちんと気持ちを切り替えて自分がするべき課せられた使命を全うすべく羽翼を広げ大空へ舞っていただろう。過去だろうと現在だろうと誰かを助けられるのならば、それは故に喜びへと変わる。ずっとそうしてきたし、誰かの表情に笑顔が戻るのならば、自分は顧みず無我夢中に戦って来た。これからもそうするし、この瞬間闇夜の中衣を翻し神器を駆使して魔物浄化に勤しんでいる所だ。けれど、決して集中しているとは言えない。前回引き起こった出来事が脳裏に焼きついて離れてくれず、何とも形容し難い気持ちを引きずっている。隣で懸命に戦っているピット君を盗み見て、気持ちの整理がついたのだと内心羨ましく思う。
前回の出来事を少々述べるが、ピット君は指輪にされ、私は昏睡状態にある中世界は大変な目に遭ったいた。我らの主、パルテナ様が三年もの月日突然人類の敵になってしまったのだ。良心が呵責されるが、それは今重要視せず話を進める。問題は、彼女の発言。私の力を決して悲観せず、使わせない方法で戦わせてくれていたのに慈悲深く芯の強いパルテナ様が有ろうことかあの力を欲しがったのだ。ピット君は誰かに操られているからなんて声を大にして叫んでいたが、実際真実は未だ闇の中だ。もしかしたら本心で言ったのかもしれないし、それは誰にも分からない。私だってそうではないって信じたいけれど、なかなか気持ちの整理がついてくれなかった。きっと、ピット君は私の心境を察しているだろう。だが、敢えて言葉にしなかった。真っ直ぐ前を見据えて、戦ってくれるピット君には悪いが複雑な思いは払拭出来ず、それでも今神器で浄化している状況にある。
「冥府軍!」
『お出ましね。』
「若干の援軍は送ってやる。が、かえってジャマになろう。すぐ引っ込めるからの。」
「自然軍と共闘することになろうとは……。」
『なんだか不思議なかんじ。』
雲の影に隠れ、その身を輝かせられなかった月がひょっこり顔を出し、地上を照らしてくれている。朧月だ。更に湖が処々に位置し、木々が生い茂り辺り一面緑に包まれている。風流と称するに相応しい場所。ナチュレちゃんが好みそうな風景だと内心思う。綺麗な景色だと感嘆する傍ら、冥府から派遣された魔物達が次から次へと邪魔して来る。今から向かおうとしている目的地に何か関係があるのだろうか。それを証拠に、私の羽翼にも“飛翔の奇跡”がついている。ナチュレちゃんの考えがあるのは分かるが、それは未だ明確になっておらずこちらを軽く悩ませている。
「パルテナの神殿のフォースフィールドは鉄壁じゃ!そこで光の戦車を借りることにしたのじゃ。」
「『……光の戦車?』」
「銀河をめぐり、星から星へも飛べるという戦闘用馬車。そのスピードとパワーは彗星並みでな。」
「それでバリアを破ると。」
「んん、そうじゃそうじゃ。」
なんて思っていたが、案外あっさり今回の任務内容を話してくれた。私達が神殿の障壁を打ち砕くべく、使用するのが“光の戦車”。正直、聞き覚えもない。だが、ナチュレちゃんが“借りる”と言っているぐらいだから、当然所有者が存在するのだろう。そう簡単に貸してくれるだろうか。それさえも、疑問が尽きない。しかし、話の雲行きは段々怪しくなってきている。
「僕たちが光の戦車に乗ってカタいカベにぶつかれと!」
『(……私も?)』
「もちろんじゃ。」
「死ぬかもしれない?」
「ありえるのぅ。」
「エアバックとかは?」
「そりゃついておらんじゃろ。」
陸のトンネルを擦り抜けて、会話はトントン拍子で進んでいる。明らかに、こちらが不利な状態。光の戦車でフォースフィールドにぶつかる勇ましい行動もなかなかだ。だが、命が幾つあっても足りやしない。それしか方法がないけれど、簡単に頷けないだろう。
ここ迄彼がナチュレちゃんに質問攻めしている辺り、提案を撥ね退ける勢いだ。気持ちは、充分分かる。可能ならば別の方法に縋りたいけれど、彼女のことだ。何としてでも、強行させるだろう。
「……却下!ぜったい却下だ!ムチャぶりだ!」
『私たちの身が危ないよ、ナチュレちゃん。』
「そなたら、パルテナを救いたくないのかの?」
「うッ……。」
『(あっ、痛いトコつかれてる。)』
「パルテナはいま、なにをしているんじゃろうの。心の迷宮に閉じこもっておるかもしれんのう。助けてぇー。ピットセラ助けてぇー。」
「わ、わかった!わかったよ!!パルテナ親衛隊長ピット!覚悟を決めるッ!!」
『(やっぱりピット君が負けちゃうのね。)』
「最初からそう言えばいいものを。ウジウジしおってからに。」
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