第18章 三年の歳月(後編)
セラ
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「女神パルテナの乱心がエンジェランドを崩壊させた。いまやパルテナは人類の敵じゃ。冥府軍とはまだ戦っておるがの。」
「自然軍とは?!」
「もちろん交戦することもある。人類に敵対しておる今はあまり必要なさそうじゃがの。」
『そう、なんだ……。』
「あぁ……。パルテナ様……。僕がしっかりしていないばかりに。」
「うぬぼれておるヒマがあったら 前を見よ。」
パルテナ様がエンジェランドを美しく保って下さっていた。彼女が乱心して美しさを保てなくなったのは分かるが、ここ迄とは。目を背けても何も変わらないのに、現実を受け止められそうにない。花に水をあげる私を、優しい眼差しで見つめて下さったあのパルテナ様がそんな気持ちさえ忘れてしまわれたのだろうか。
「パルテナの神殿じゃ!」
「あぁ、こんなに荒れて……!」
『まるで別の建物みたい……。』
変わり果てた姿に変貌を遂げたのは、何もエンジェランドだけではなかった。それは、私達が住む神殿も同じだったのだ。私達が懸命に育てていた花達もこの分では枯れてしまっただろう。花が咲くのを、あんなに楽しみにしていたのに。今の有り様をもうこれ以上見ていたくなくて思わず下を俯かせてしまう。これは、ガツンと来るダメージだ。願えるのならば、全て夢であってほしい。叶わない願いであるが。
悲しみや寂しさに打ち拉がれている。この表現がピッタリ合っているだろう。ピット君だって、ショックを受けているに違いない。その感情の起伏は、こちらに伝達されるかの様だ。私も段々、悲しみを通り越して怒りが湧いて来そうである。驚愕したり、悲しみに打ち拉がれたり、感情を激しくする最中こちらの動向に気付いたのか何なのか突如パルテナ様の幻影が神殿上に浮かび上がった。その表情は……いつも見つめていた慈愛溢れるものではなく、何処か遠くを見つめる虚無のものであった。
「ひさしぶりですね、ピット。セラ。」
「あぁ、パルテナ様!どうしてこんな!」
『パルテナ様!どうしちゃったんですか!』
「悲しいことですが 時代は流れていくものです。幾多の戦いを通じ 人間にもつくづく愛想がつきました。セラ、私にその力を受け渡すのです!ピット、意識が戻ったのなら、あなたはここで死になさい!」
「なッ……?!」
『そんな……!』
「聞いたか ピット!セラ!これが現実じゃ。」
けれど決して再会を心から喜べたりはしなかった。パルテナ様から耳を疑う発言をされてしまう。今日一番のダメージだ。あのパルテナ様が、私の力を欲しがっているなんて思いたくなかった。あんなに守ると言って下さったのに、手の平を返す物言い。次から次へと建造物攻撃を放たれるが、ひらひら躱して行く。何とか回避出来ているものの、心のダメージは思ったより重くぎりぎり躱している形になる。その上何処からともなく出現したイカロス達の手に寄って攻撃されているのだ。頭が混乱して、働かない。涙が出そうだ。
「パルテナ様は誰かに操られているんだ!」
「そう思いますか?」
「僕は認めない!ナチュレ!突っ込んでくれ!!」
「ホントにいいんじゃな?」
「もちろん!早く!!」
「どうなっても知らんぞ!」
『ムチャよ!ピット君!』
だが、ピット君は前を向いて瞳を逸らさなかった。この状況でも彼はパルテナ様を信じきり、ナチュレちゃんへ神殿に突っ込もうと叫んでいる。無謀な行動であるのは一目瞭然であった。だが、彼は決して諦めず、猛スピードで神殿に体当りすべく行動を起こしたのだ。まさに向こう見ず。
「パルテナ様ぁぁぁぁ!!」
彼女の名を叫びながら、神殿へ突っ込むピット君。けれど、思いや行動も空しく彼は神殿に突っ込んだ反動で見えない壁の様なバリアに弾かれてしまう。
「うぐわぁぁぁぁ!!」
『ピット君、大丈夫?!』
「だから言ったんじゃ!居城はフォースフィールドで守られておる。」
「なんで意地悪するんだ……。」
「しょうがないのう。きょうはこちらで引き取ってやろうぞ。」
作戦は大失敗。弾かれてしまったピット君は、空中にぐるぐるぐる回転しながら留まる。どうやら怪我はしていないみたいだ。だが、新たな問題が浮上した。無論神殿への侵入を許さないナチュレちゃんの言うフォースフィールドだ。あのバリアを破壊しなければ、パルテナ様への接触は不可能。パルテナ様を今直ぐにでも助けたいピット君にはもどかしくて仕方がないだろう。その気持ちは、私だって同じ。彼女が何者かに操られているのなら、一刻も早く助け出したい。私達の思いは、石の如く固まった。厭、元々固まっていたのかもしれない。必ずフォースフィールドを打ち破り、パルテナ様を救出する。
だが、その前に今日のところは大人しくナチュレちゃんの元へ回収してもらおう。くるくるくる回転していたピット君と私は、エンジェランドとは別の……ナチュレちゃんの神殿へ回収してもらい、事無きを得た。ここからが勝負どころであるが、今日はゆっくり休もうと思う。
『かならず、助け出そう。』
ナチュレちゃんの神殿に立ち尽くす天使二人。いつになく真剣な表情のピット君にそれ以外の言葉は何処にも見つからなかった。
(To be continued...)
前編に続いて後編が短い。前編が15ページに比べて、後編は2ページ。驚愕の短さです。書き終わったのもわりかし短い期間だった記憶がございます。もう少し捻ればよかったのでしょうけどね(汗)こうなってしまいました。前編で書き連れなかった話題をこちらで書こうと思ったのですが……あっ!そういえば、ヒロインに助言する役割をメデューサにしてしまったのですが辻褄は合いましたでしょうか。プレイしている皆様は既にご存知の通り、物語の終盤にてメデューサがピットくんを助けてくれますが実は身近で身体を再生しながらも様子を窺っていたのだろうと推察し、ついつい登場させてしまうという(汗)姿は見えずとも、助言は出来るに違いない。そんな考えに至り、あのような流れに。悪役さながらも毅然な態度が美しいメデューサ。管理人がメデューサ好きなばっかりにこういうものに(汗)ヒロインに対しては、べらぼうに甘いメデューサでいてほしい。そんな願いすら込められている訳です。書いていて楽しかったです。
ここ迄読んで下さってありがとうございました!
by虹
「自然軍とは?!」
「もちろん交戦することもある。人類に敵対しておる今はあまり必要なさそうじゃがの。」
『そう、なんだ……。』
「あぁ……。パルテナ様……。僕がしっかりしていないばかりに。」
「うぬぼれておるヒマがあったら 前を見よ。」
パルテナ様がエンジェランドを美しく保って下さっていた。彼女が乱心して美しさを保てなくなったのは分かるが、ここ迄とは。目を背けても何も変わらないのに、現実を受け止められそうにない。花に水をあげる私を、優しい眼差しで見つめて下さったあのパルテナ様がそんな気持ちさえ忘れてしまわれたのだろうか。
「パルテナの神殿じゃ!」
「あぁ、こんなに荒れて……!」
『まるで別の建物みたい……。』
変わり果てた姿に変貌を遂げたのは、何もエンジェランドだけではなかった。それは、私達が住む神殿も同じだったのだ。私達が懸命に育てていた花達もこの分では枯れてしまっただろう。花が咲くのを、あんなに楽しみにしていたのに。今の有り様をもうこれ以上見ていたくなくて思わず下を俯かせてしまう。これは、ガツンと来るダメージだ。願えるのならば、全て夢であってほしい。叶わない願いであるが。
悲しみや寂しさに打ち拉がれている。この表現がピッタリ合っているだろう。ピット君だって、ショックを受けているに違いない。その感情の起伏は、こちらに伝達されるかの様だ。私も段々、悲しみを通り越して怒りが湧いて来そうである。驚愕したり、悲しみに打ち拉がれたり、感情を激しくする最中こちらの動向に気付いたのか何なのか突如パルテナ様の幻影が神殿上に浮かび上がった。その表情は……いつも見つめていた慈愛溢れるものではなく、何処か遠くを見つめる虚無のものであった。
「ひさしぶりですね、ピット。セラ。」
「あぁ、パルテナ様!どうしてこんな!」
『パルテナ様!どうしちゃったんですか!』
「悲しいことですが 時代は流れていくものです。幾多の戦いを通じ 人間にもつくづく愛想がつきました。セラ、私にその力を受け渡すのです!ピット、意識が戻ったのなら、あなたはここで死になさい!」
「なッ……?!」
『そんな……!』
「聞いたか ピット!セラ!これが現実じゃ。」
けれど決して再会を心から喜べたりはしなかった。パルテナ様から耳を疑う発言をされてしまう。今日一番のダメージだ。あのパルテナ様が、私の力を欲しがっているなんて思いたくなかった。あんなに守ると言って下さったのに、手の平を返す物言い。次から次へと建造物攻撃を放たれるが、ひらひら躱して行く。何とか回避出来ているものの、心のダメージは思ったより重くぎりぎり躱している形になる。その上何処からともなく出現したイカロス達の手に寄って攻撃されているのだ。頭が混乱して、働かない。涙が出そうだ。
「パルテナ様は誰かに操られているんだ!」
「そう思いますか?」
「僕は認めない!ナチュレ!突っ込んでくれ!!」
「ホントにいいんじゃな?」
「もちろん!早く!!」
「どうなっても知らんぞ!」
『ムチャよ!ピット君!』
だが、ピット君は前を向いて瞳を逸らさなかった。この状況でも彼はパルテナ様を信じきり、ナチュレちゃんへ神殿に突っ込もうと叫んでいる。無謀な行動であるのは一目瞭然であった。だが、彼は決して諦めず、猛スピードで神殿に体当りすべく行動を起こしたのだ。まさに向こう見ず。
「パルテナ様ぁぁぁぁ!!」
彼女の名を叫びながら、神殿へ突っ込むピット君。けれど、思いや行動も空しく彼は神殿に突っ込んだ反動で見えない壁の様なバリアに弾かれてしまう。
「うぐわぁぁぁぁ!!」
『ピット君、大丈夫?!』
「だから言ったんじゃ!居城はフォースフィールドで守られておる。」
「なんで意地悪するんだ……。」
「しょうがないのう。きょうはこちらで引き取ってやろうぞ。」
作戦は大失敗。弾かれてしまったピット君は、空中にぐるぐるぐる回転しながら留まる。どうやら怪我はしていないみたいだ。だが、新たな問題が浮上した。無論神殿への侵入を許さないナチュレちゃんの言うフォースフィールドだ。あのバリアを破壊しなければ、パルテナ様への接触は不可能。パルテナ様を今直ぐにでも助けたいピット君にはもどかしくて仕方がないだろう。その気持ちは、私だって同じ。彼女が何者かに操られているのなら、一刻も早く助け出したい。私達の思いは、石の如く固まった。厭、元々固まっていたのかもしれない。必ずフォースフィールドを打ち破り、パルテナ様を救出する。
だが、その前に今日のところは大人しくナチュレちゃんの元へ回収してもらおう。くるくるくる回転していたピット君と私は、エンジェランドとは別の……ナチュレちゃんの神殿へ回収してもらい、事無きを得た。ここからが勝負どころであるが、今日はゆっくり休もうと思う。
『かならず、助け出そう。』
ナチュレちゃんの神殿に立ち尽くす天使二人。いつになく真剣な表情のピット君にそれ以外の言葉は何処にも見つからなかった。
(To be continued...)
前編に続いて後編が短い。前編が15ページに比べて、後編は2ページ。驚愕の短さです。書き終わったのもわりかし短い期間だった記憶がございます。もう少し捻ればよかったのでしょうけどね(汗)こうなってしまいました。前編で書き連れなかった話題をこちらで書こうと思ったのですが……あっ!そういえば、ヒロインに助言する役割をメデューサにしてしまったのですが辻褄は合いましたでしょうか。プレイしている皆様は既にご存知の通り、物語の終盤にてメデューサがピットくんを助けてくれますが実は身近で身体を再生しながらも様子を窺っていたのだろうと推察し、ついつい登場させてしまうという(汗)姿は見えずとも、助言は出来るに違いない。そんな考えに至り、あのような流れに。悪役さながらも毅然な態度が美しいメデューサ。管理人がメデューサ好きなばっかりにこういうものに(汗)ヒロインに対しては、べらぼうに甘いメデューサでいてほしい。そんな願いすら込められている訳です。書いていて楽しかったです。
ここ迄読んで下さってありがとうございました!
by虹
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