第18章 三年の歳月(後編)
セラ
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天候は雨。暗雲から流れ落ちてくる雫、ポタポタ落ちる雨が肌に流れるのを軽く無視して飛行スピードを更に上昇させる。猛スピードで飛んで行ってしまったピット君を追い掛けるべく雨の中を飛行する私。街で戦いを繰り広げている時も、天候は曇り。今にも、雨が降りそうであった。この雨は、堪えきれずに流した誰かの涙だったりして。そんな訳がないけれど、そんな気がしてならないのは私だけだろうか?
『あっ!ピット君、いた!』
妙な思いが胸中を駆け巡る中、私を差し置いてさっさと飛んで行ってしまったピット君の姿を発見する。距離は若干離れているが、見失う程でもない。取り敢えず、彼の姿が見えなくならない様注意を払いながら飛行しようと思う。後方にいても聞こえて来る。どうやら、ピット君はパルテナ様へ話しかけているみたいだ。
「パルテナ様!導いてくださるんですね?!」
「残念じゃったのう。」
「えッ?!」
『この声はまさか……?』
「なにを隠そう、そなたを飛ばしておるのは このわらわじゃ。」
「まさかナチュレ?!こんなことできるなんて 聞いてないぞ!!」
パルテナ様だと思われたがそうではなく“飛翔の奇跡”を発動してくれたのは、あのナチュレちゃんだったのだ。かれこれ三年後の再会である。神様だからなのか、三年間の隔たりがあろうとも全く干渉されていない。それを言うなら、私も人間の年月みたく大人に近付いている訳でもなくそのまま三年前の姿だ。ピット君もあの時のまま、少しも変わっていない。不思議な感覚に陥っている。その反動で、強さが劣化しなくて良かったと思う。もし、そうならばどうしようもなかった。
『ナチュレちゃん!』
「パルテナにできることで、わらわにできないことなぞ、ない!もっとも、そなたが拒否すれば それまでじゃが。」
「たしかに今、僕自身が飛ぶことを望んでいた……。」
「それより、やっと意識を取り戻したようじゃな。セラに至っては、行方不明になっておったのじゃぞ。無事でなによりじゃ。」
『そ、そうなの……?』
「いったい パルテナ様になにが?!」
『教えて!ナチュレちゃん!』
漸くピット君の所迄飛行スピードが追いついた。ほっと安堵の溜息。だが、ナチュレちゃんから驚愕の事実を耳にする。ピット君は分かるが、私は行方不明者扱いになっていたそうなのだ。どうしてそうなったのか、何となく理解出来るが誰からの目を忍び眠り続けていたのか。全て、メデューサがしてくれたのだろう。そう考えると、本当に私の身に危険が迫っていたみたいだ。力を発動してまで守りたかったものって一体何なのだろう。考えれば考える程、深みにはまる謎。こちらが、別の考えに捕われている傍で、パルテナ様に何が起こったのか必死に問うピット君。別の謎が浮上しても、彼と同じ意見だ。私達は主の身に何の変化があったのか知る権利がある。
「それはそなたらの眼(まなこ)でしかと見るのがよかろう。このままエンジェランドまで直行させてしんぜよう。感謝するのじゃ。」
「うぐっ……。背に腹は代えられないか。」
「ソンになることはなかろう。行くぞ!ピットよ!!セラよ!!」
「わかりました!」
『はーい。(ピット君、イヤそう。)』
天候が悪いせいか、竜巻が周囲を襲う。山々を飛び越え見つめた光景は、竜巻が建造物を巻き上げている異様さであった。ナチュレちゃんは、天候が悪くても強行突破で進もうと上へ上へ軌道を修正している。ピット君は嫌々みたいだし、何だか自棄を起こしているがナチュレちゃんは然程気にしていないらしい。端から見たら、良いコンビである。一つ気がかりなのは、未だくっついてくれないもどかしさぐらいだ。いつ互いの気持ちに気付いてくれるだろう。……果てしなく時間が掛かりそうだ。急に溜息をついてしまった。
「そろそろエンジェランドに到着じゃ。」
「お願い、パルテナ様が無事でいますように……。」
「神だのみか?ダレに?ハンパな天使よのう。」
『パルテナ様……。(大丈夫だといいんだけど……。)』
そうこうしている内に、問題のエンジェランドへ辿り着こうとしていた。相も変わらず竜巻に巻き込まれた建造物は上に巻き上げられ、挙げ句私達目掛けて向かって来る。飛行しているから身軽にヒョイヒョイ回避出来てしまうが、相当な竜巻である。建造物を回避し、真っ直ぐエンジェランドへ突き進む。それらしき建造物が視界に入り安堵するのだが、自身がいつも見つめていた景色とは異なり変わり果てた姿が飛び込んで来た。
「なッ……?!あの美しかったエンジェランドが……。」
『そんな……ヒドイ……。』
「ごらんのありさまじゃ。」
幾つも浮遊する浮島、エンジェランド。花は咲き乱れ、木々は生い茂り、綺麗な水が流れている。誰もが見てうっとりする風景。の筈が、今はそんな姿さえ似ても似つかない変わり果てた風景へ変貌を遂げていた。私とピット君は荒廃したエンジェランドを見つめ、絶句する。天使や神が住む場所、とは到底彷彿としなかったのだ。
『あっ!ピット君、いた!』
妙な思いが胸中を駆け巡る中、私を差し置いてさっさと飛んで行ってしまったピット君の姿を発見する。距離は若干離れているが、見失う程でもない。取り敢えず、彼の姿が見えなくならない様注意を払いながら飛行しようと思う。後方にいても聞こえて来る。どうやら、ピット君はパルテナ様へ話しかけているみたいだ。
「パルテナ様!導いてくださるんですね?!」
「残念じゃったのう。」
「えッ?!」
『この声はまさか……?』
「なにを隠そう、そなたを飛ばしておるのは このわらわじゃ。」
「まさかナチュレ?!こんなことできるなんて 聞いてないぞ!!」
パルテナ様だと思われたがそうではなく“飛翔の奇跡”を発動してくれたのは、あのナチュレちゃんだったのだ。かれこれ三年後の再会である。神様だからなのか、三年間の隔たりがあろうとも全く干渉されていない。それを言うなら、私も人間の年月みたく大人に近付いている訳でもなくそのまま三年前の姿だ。ピット君もあの時のまま、少しも変わっていない。不思議な感覚に陥っている。その反動で、強さが劣化しなくて良かったと思う。もし、そうならばどうしようもなかった。
『ナチュレちゃん!』
「パルテナにできることで、わらわにできないことなぞ、ない!もっとも、そなたが拒否すれば それまでじゃが。」
「たしかに今、僕自身が飛ぶことを望んでいた……。」
「それより、やっと意識を取り戻したようじゃな。セラに至っては、行方不明になっておったのじゃぞ。無事でなによりじゃ。」
『そ、そうなの……?』
「いったい パルテナ様になにが?!」
『教えて!ナチュレちゃん!』
漸くピット君の所迄飛行スピードが追いついた。ほっと安堵の溜息。だが、ナチュレちゃんから驚愕の事実を耳にする。ピット君は分かるが、私は行方不明者扱いになっていたそうなのだ。どうしてそうなったのか、何となく理解出来るが誰からの目を忍び眠り続けていたのか。全て、メデューサがしてくれたのだろう。そう考えると、本当に私の身に危険が迫っていたみたいだ。力を発動してまで守りたかったものって一体何なのだろう。考えれば考える程、深みにはまる謎。こちらが、別の考えに捕われている傍で、パルテナ様に何が起こったのか必死に問うピット君。別の謎が浮上しても、彼と同じ意見だ。私達は主の身に何の変化があったのか知る権利がある。
「それはそなたらの眼(まなこ)でしかと見るのがよかろう。このままエンジェランドまで直行させてしんぜよう。感謝するのじゃ。」
「うぐっ……。背に腹は代えられないか。」
「ソンになることはなかろう。行くぞ!ピットよ!!セラよ!!」
「わかりました!」
『はーい。(ピット君、イヤそう。)』
天候が悪いせいか、竜巻が周囲を襲う。山々を飛び越え見つめた光景は、竜巻が建造物を巻き上げている異様さであった。ナチュレちゃんは、天候が悪くても強行突破で進もうと上へ上へ軌道を修正している。ピット君は嫌々みたいだし、何だか自棄を起こしているがナチュレちゃんは然程気にしていないらしい。端から見たら、良いコンビである。一つ気がかりなのは、未だくっついてくれないもどかしさぐらいだ。いつ互いの気持ちに気付いてくれるだろう。……果てしなく時間が掛かりそうだ。急に溜息をついてしまった。
「そろそろエンジェランドに到着じゃ。」
「お願い、パルテナ様が無事でいますように……。」
「神だのみか?ダレに?ハンパな天使よのう。」
『パルテナ様……。(大丈夫だといいんだけど……。)』
そうこうしている内に、問題のエンジェランドへ辿り着こうとしていた。相も変わらず竜巻に巻き込まれた建造物は上に巻き上げられ、挙げ句私達目掛けて向かって来る。飛行しているから身軽にヒョイヒョイ回避出来てしまうが、相当な竜巻である。建造物を回避し、真っ直ぐエンジェランドへ突き進む。それらしき建造物が視界に入り安堵するのだが、自身がいつも見つめていた景色とは異なり変わり果てた姿が飛び込んで来た。
「なッ……?!あの美しかったエンジェランドが……。」
『そんな……ヒドイ……。』
「ごらんのありさまじゃ。」
幾つも浮遊する浮島、エンジェランド。花は咲き乱れ、木々は生い茂り、綺麗な水が流れている。誰もが見てうっとりする風景。の筈が、今はそんな姿さえ似ても似つかない変わり果てた風景へ変貌を遂げていた。私とピット君は荒廃したエンジェランドを見つめ、絶句する。天使や神が住む場所、とは到底彷彿としなかったのだ。
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