第18章 三年の歳月(前編)
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「セラが眠り続けていた可能性はひとつ。セラの中に眠る強大な力が解放された場合だ。」
『!』
「覚えているか?タナトスの話を。私の元へ連れ帰るハズのおまえが自己防衛で力を発動させた、と。」
『……まさか。』
「力を発動したセラは、回復しようと眠り続けていた。その反動で、前後の記憶も抜け落ちていた。」
『私の力が誰かに狙われ、危機が迫ったから発動した……。』
「だが、おまえはこのとおり生きている。無意識にその力をコントロールしたのだろう。……フッ。セラらしいな。」
話に耳を傾ければ、私が何故深い眠りに就いていたのか考察が飛び回る。信じ難いが、可能性もないとは断言出来ない。私の力を欲しがる存在がいた。でも誰が?まさか、自然軍?厭、確かにナチュレちゃんも欲しがっていたけれど自然軍に連れ去られたならば、あの人達の手で助けられたりはしなかっただろう。であれば冥府軍が怪しいが、メデューサの口振りからしてその説は否定された。正体不明の何者かが私利私欲でこちらに接触し、力を奪取しようと試みたは良いが返り討ちに遭ってしまった、所か。過去にメデューサに仕えていた経歴はあるものの、今は敵同士。私を罠にはめよう目的で嘘を吹き込んでいてもおかしくはない。だが、今のメデューサは信用できる気がしていた。敵対していたあの頃とは何かが違う。メデューサの存在が、私の不安を掻き消してくれるかの様だ。不意に、心の中が温かくなる感覚に陥る。
『あなたとこうして話せる日がくるなんて思わなかったよ。さっきも助けてくれたんでしょ?理由はわからないけど“名乗るな”って言ってくれたじゃない?』
「ああ言えば人間どもを出し抜けると思ったのだ。その理由はじきにわかる。見よ、セラ。おまえが知りたがっていた理由だ。」
『?!あ、あれは!!イカロスが街に攻撃している?!』
「急ぐのだ、セラ。いまならまだ間に合う。」
『うん!』
メデューサがもし味方だったなら、今この瞬間話が出来ている和やかな雰囲気の如く友達として関係を築けていられたのかななぁんて、有りもしないのに考えている。頭の片隅にそんな考えが過っていれば、接近している街の上空に目を見張る光景が映し出された。有ろうことか守備する筈の街や人々に攻撃を加えているイカロスの姿がある。あんなに必死で冥府軍、自然軍、オーラム軍から守り通していたのに今は立場が逆転していたのだ。余りの光景に思わず息を呑む。もしも、一人で見つめていたならば卒倒していただろう。メデューサがいてくれてよかった。彼女が私を思って助言してくれているから、常に冷静でいられる。
『ありがとう、メデューサ。』
「(まさかセラに礼を言われる日がこようとはな。)」
真っ直ぐ前を見据え、街へ向けて低空飛行し始めた。いつもなら隣でピット君と共に行動しているが、何らかの理由ではぐれてしまったのか隣に彼はいない。もしかしたら私が目指している街へ既に到着し、混乱するこの地を鎮めているかもしれないが別行動を取っている。緊急事態だし、時間短縮したいから飛行しよう。
飛行していたお陰で早くも街の入り口らしき建造門が窺え、迷いなく通過する。街に入れば、惨憺たる有り様であった。家や建造物は破壊され、煙が上がり、避難しているから人々の姿は何処を探してもいなかったが、荒廃している状況に変わりなかった。これを全てイカロスが……?あの優しかったイカロス達がここ迄酷い状態を作り出したのか。だからあの親子三人は街を離れ、避難をし危機が去るのを粛静に待っていたのか。そう考えるとメデューサが名乗らせなかった理由も自然に頷ける。仲間だなんて知られた日には何をされるか分からなかったタコ殴りされていたかもしれない。想像を膨らませ、背筋を凍らせる。あの親子が暴力で解決させるとも思えないし、思いたくないが完全にないとも言い切れなかった。何せ街と人々の平和な暮らしを奪った実行犯なのだから。
『こんなのゼッタイおかしいよ!やめさせなくちゃ!』
街に攻撃したって無意味なのに、相も変わらずその行為は続いている。攻撃を仕掛けているイカロスへふわりと近付き、説得させようと口を開く。自分の思いを声に乗せるのだけれど、イカロスの表情は強張ったまま。私の声も届いていない様子だ。毎日私の手伝いを買って出てくれたのに、受け答えすらしてくれないのだ。悲しみの余り、涙ぐむ。一体誰がこんな酷い指示を出している……?厭、考えなくても分かるじゃないか。イカロス達に指示を出せる人物……パルテナ様、ピット君そして……私だ。まさか、ピット君がイカロス等に指示を出して内乱を引き起こしている?それともパルテナ様が全て企て実行に移しているのか……?仲間を疑うなんて、有るまじ行為だ。けれど、考えを改められない。
「セラ、回避しろ!」
『!』
困惑している私にイカロスは無表情、無言で矢を放とうと弓矢を構えた。普段ならば、手中にある神器で太刀打ちするなり回避するなりしていただろう。だがイカロスに対して、攻撃するのは躊躇ってしまう。メデューサの声が両耳に届くが、戦闘する気は毛頭なかった。にこり微笑み、イカロスの傍に近寄る。攻撃され、ダメージを受けても仕様がないなんて諦めていたのだがイカロスは一向に攻撃を加えようとしないのだ。不思議に思い、イカロスの手元を見つめてみる。さすれば、カタカタ弓矢は震え攻撃出来ずにいた。もしかしたら、以前の記憶が残っているのかもしれない。それならば、良い。少しでもイカロスに心が残っているのならばそれで。ふっと笑みを零し、攻撃をやめてしまったイカロスを優しく抱きしめた。今はただ、優しく抱きしめてあげたかったんだ。
『!』
「覚えているか?タナトスの話を。私の元へ連れ帰るハズのおまえが自己防衛で力を発動させた、と。」
『……まさか。』
「力を発動したセラは、回復しようと眠り続けていた。その反動で、前後の記憶も抜け落ちていた。」
『私の力が誰かに狙われ、危機が迫ったから発動した……。』
「だが、おまえはこのとおり生きている。無意識にその力をコントロールしたのだろう。……フッ。セラらしいな。」
話に耳を傾ければ、私が何故深い眠りに就いていたのか考察が飛び回る。信じ難いが、可能性もないとは断言出来ない。私の力を欲しがる存在がいた。でも誰が?まさか、自然軍?厭、確かにナチュレちゃんも欲しがっていたけれど自然軍に連れ去られたならば、あの人達の手で助けられたりはしなかっただろう。であれば冥府軍が怪しいが、メデューサの口振りからしてその説は否定された。正体不明の何者かが私利私欲でこちらに接触し、力を奪取しようと試みたは良いが返り討ちに遭ってしまった、所か。過去にメデューサに仕えていた経歴はあるものの、今は敵同士。私を罠にはめよう目的で嘘を吹き込んでいてもおかしくはない。だが、今のメデューサは信用できる気がしていた。敵対していたあの頃とは何かが違う。メデューサの存在が、私の不安を掻き消してくれるかの様だ。不意に、心の中が温かくなる感覚に陥る。
『あなたとこうして話せる日がくるなんて思わなかったよ。さっきも助けてくれたんでしょ?理由はわからないけど“名乗るな”って言ってくれたじゃない?』
「ああ言えば人間どもを出し抜けると思ったのだ。その理由はじきにわかる。見よ、セラ。おまえが知りたがっていた理由だ。」
『?!あ、あれは!!イカロスが街に攻撃している?!』
「急ぐのだ、セラ。いまならまだ間に合う。」
『うん!』
メデューサがもし味方だったなら、今この瞬間話が出来ている和やかな雰囲気の如く友達として関係を築けていられたのかななぁんて、有りもしないのに考えている。頭の片隅にそんな考えが過っていれば、接近している街の上空に目を見張る光景が映し出された。有ろうことか守備する筈の街や人々に攻撃を加えているイカロスの姿がある。あんなに必死で冥府軍、自然軍、オーラム軍から守り通していたのに今は立場が逆転していたのだ。余りの光景に思わず息を呑む。もしも、一人で見つめていたならば卒倒していただろう。メデューサがいてくれてよかった。彼女が私を思って助言してくれているから、常に冷静でいられる。
『ありがとう、メデューサ。』
「(まさかセラに礼を言われる日がこようとはな。)」
真っ直ぐ前を見据え、街へ向けて低空飛行し始めた。いつもなら隣でピット君と共に行動しているが、何らかの理由ではぐれてしまったのか隣に彼はいない。もしかしたら私が目指している街へ既に到着し、混乱するこの地を鎮めているかもしれないが別行動を取っている。緊急事態だし、時間短縮したいから飛行しよう。
飛行していたお陰で早くも街の入り口らしき建造門が窺え、迷いなく通過する。街に入れば、惨憺たる有り様であった。家や建造物は破壊され、煙が上がり、避難しているから人々の姿は何処を探してもいなかったが、荒廃している状況に変わりなかった。これを全てイカロスが……?あの優しかったイカロス達がここ迄酷い状態を作り出したのか。だからあの親子三人は街を離れ、避難をし危機が去るのを粛静に待っていたのか。そう考えるとメデューサが名乗らせなかった理由も自然に頷ける。仲間だなんて知られた日には何をされるか分からなかったタコ殴りされていたかもしれない。想像を膨らませ、背筋を凍らせる。あの親子が暴力で解決させるとも思えないし、思いたくないが完全にないとも言い切れなかった。何せ街と人々の平和な暮らしを奪った実行犯なのだから。
『こんなのゼッタイおかしいよ!やめさせなくちゃ!』
街に攻撃したって無意味なのに、相も変わらずその行為は続いている。攻撃を仕掛けているイカロスへふわりと近付き、説得させようと口を開く。自分の思いを声に乗せるのだけれど、イカロスの表情は強張ったまま。私の声も届いていない様子だ。毎日私の手伝いを買って出てくれたのに、受け答えすらしてくれないのだ。悲しみの余り、涙ぐむ。一体誰がこんな酷い指示を出している……?厭、考えなくても分かるじゃないか。イカロス達に指示を出せる人物……パルテナ様、ピット君そして……私だ。まさか、ピット君がイカロス等に指示を出して内乱を引き起こしている?それともパルテナ様が全て企て実行に移しているのか……?仲間を疑うなんて、有るまじ行為だ。けれど、考えを改められない。
「セラ、回避しろ!」
『!』
困惑している私にイカロスは無表情、無言で矢を放とうと弓矢を構えた。普段ならば、手中にある神器で太刀打ちするなり回避するなりしていただろう。だがイカロスに対して、攻撃するのは躊躇ってしまう。メデューサの声が両耳に届くが、戦闘する気は毛頭なかった。にこり微笑み、イカロスの傍に近寄る。攻撃され、ダメージを受けても仕様がないなんて諦めていたのだがイカロスは一向に攻撃を加えようとしないのだ。不思議に思い、イカロスの手元を見つめてみる。さすれば、カタカタ弓矢は震え攻撃出来ずにいた。もしかしたら、以前の記憶が残っているのかもしれない。それならば、良い。少しでもイカロスに心が残っているのならばそれで。ふっと笑みを零し、攻撃をやめてしまったイカロスを優しく抱きしめた。今はただ、優しく抱きしめてあげたかったんだ。