第18章 三年の歳月(前編)
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建造門から中に入れば、街の風景が犬を通じて視界に映る。家々から立ち籠めている煙、酷く荒んだ様子に言葉を失う。これでは、冥府軍と何ら変わらない。この有様をパルテナ軍が引き起こしたのか。どうにも俄には信じられなかった。
「あれは!!」
だが、家々の上空から神器で攻撃している僕の姿が映った。普段ならば神器を手に人間達を守備している筈が、建造物はたまた人間達に手を掛けるだなんて。今は、形勢逆転している。俄に信じられずにいたが、全て事実らしい。
「やばい、なんか泣きそう。人間に対して攻撃してどうするつもりだよ!!」
犬の姿だと感情が読み取れないだろうが、僕はショックを受けている。涙が出そうだ。意志は指輪に宿っているのに、肉体は今も尚上空を飛行中。衝撃的場面を目撃し、複雑な感情が込み上がっている。
「あぁどうしよう。なにができる……??」
困惑しているが平常心を保とうと、自分に何が出来るか考えてみる。だが、こういう時決まって良策は思い浮かばない。彼女であれば、きっと良策を思いつき助言してくれるだろう。彼女の微笑みが、僕を落ち着かせてくれる。彼女に会いたいって心から願ってしまう僕の気持ち。
「とにかくヤツを探そう。それしかなさそうだ。」
彼女の微笑みを思い描き、前を向いて只管駆け出す。入り組んだ道を行き、犬や小動物が通過出来そうな抜け穴をすいすい通って行く。抜け穴を通過すれば、今は荒んでおり街に水が流れていないみたいだが、大きな噴水広場に出た。此見よがしにイカロス達が怖い顔をして、ぐるぐる見回りしている。犬の姿だから無害だと判断されているのか、あちらが攻撃を仕掛けて来る様子はない。きっと美しい街並みであっただろう。それじゃあ今は、全く彷彿としない。変わり果てた姿だ。
「ひどいやられかただワン……。なんちゃって。」
草木、花は枯れ果て建造物も修復されていない。恐らく修復したとしても、また壊され……その繰り返し。きっと人間達は何度も味わっただろう、絶望と言う名の苦々しい味を。苦々しく口に放り込むのさえ寸止めてしまう絶望を甘美な希望に変える為、僕は真っ直ぐ突き進んだ。
「うっ。なにかいいニオイがする。犬なみの鼻のよさだもんなぁ。」
真っ直ぐ突き進んでいる刹那、何処からともなく漂って来る香り。
「どこかでお昼を作っていたのか。お肉たっぷりのシチューかなぁ。」
何処からともなく漂って来る香りはきっと、お肉たっぷりのシチュー。パルテナ軍に襲撃されているのに、料理なんて出来る訳がない。きっと人間達は、作っている過程の最中に襲撃されていると知り慌てて避難したのだろう。常に攻撃を受けていたのではなく、一過性であると推察される。でなかったら、家宅に居てまた避難生活等とは出来なかっただろう。人間達が避難してくれているお陰で戦いに巻き込まず済むが。
「あれ?え?ちょ、ちょっと!!よだれを止めてくれぇ!指輪がベタベタだよ!!」
そんな思いに駆られていたら犬の自由は効かなくなるし、指輪はよだれでベタベタだし散々な目に遭う。鼻がききすぎるのも考えものだが、犬であるから仕方ないと言えば仕方ない。無理なのは百も承知だが、溜息をつきたくなってしまった。一時、犬のコントロールがきかず、身動きが取れなくなったが再度犬として動けるようになる。もう大丈夫だ。犬か小動物でしか通れない抜け穴がまたもや存在する。その抜け穴を通って、サクサク進んで行くがここで難関が立ちはだかった。建造物の中に入り込む。さすれば、建造物全体が既に幾つか破壊されており、先に進むのに困難しそうな勢いだ。ここを通らなければ、きっと辿り着けない。
「狭い足場を渡ればなんとか進めそうだ。」
このまま行けば、足止めをくらっていただろう。だが今の僕には、この斑模様の犬がついている。通常だったら、引き返している所だが二本に並ぶ道を発見。狭いけれど、ゆっくり渡れば落下する心配はない。
「犬でよかった。よくないけど。」
犬の姿だからこそ、移動出来る道が生まれる。二本に並ぶ道を交互に渡り歩き、颯爽と駆けて行く。犬の姿なのもあるが、誰も僕を邪魔立てしない。行く先に抜け穴を発見した僕は、真っ先に抜け穴を潜ったのだった。
「あれは?!」
抜け穴を抜けるとそこには……噴水広場にてイカロス等と対等以上に戦う見慣れたシルエットが窺えた。
「マグナ?!」
見慣れたシルエットの正体は、マグナだった。魔王ガイナスの居城に乗り込み、共にガイナスを浄化した人物である。あれ以来姿を見せなかったが、戦場に身を置いているのだけは分かる。振り上げた剣で、イカロスを次々と倒していた。
「マグナ!マグナ!」
今、僕が頼れるのはマグナしかいない。彼に何があったのか、聞く必要があるのだ。
「聞こえないか……。」
何度も何度も呼び掛けるが、指輪からだとやはり何を言っても叫んでも無に帰るだけだった。色々試してみたが、マグナは気付いた様子もなくそのまま去ろうとする。
「あれは!!」
だが、家々の上空から神器で攻撃している僕の姿が映った。普段ならば神器を手に人間達を守備している筈が、建造物はたまた人間達に手を掛けるだなんて。今は、形勢逆転している。俄に信じられずにいたが、全て事実らしい。
「やばい、なんか泣きそう。人間に対して攻撃してどうするつもりだよ!!」
犬の姿だと感情が読み取れないだろうが、僕はショックを受けている。涙が出そうだ。意志は指輪に宿っているのに、肉体は今も尚上空を飛行中。衝撃的場面を目撃し、複雑な感情が込み上がっている。
「あぁどうしよう。なにができる……??」
困惑しているが平常心を保とうと、自分に何が出来るか考えてみる。だが、こういう時決まって良策は思い浮かばない。彼女であれば、きっと良策を思いつき助言してくれるだろう。彼女の微笑みが、僕を落ち着かせてくれる。彼女に会いたいって心から願ってしまう僕の気持ち。
「とにかくヤツを探そう。それしかなさそうだ。」
彼女の微笑みを思い描き、前を向いて只管駆け出す。入り組んだ道を行き、犬や小動物が通過出来そうな抜け穴をすいすい通って行く。抜け穴を通過すれば、今は荒んでおり街に水が流れていないみたいだが、大きな噴水広場に出た。此見よがしにイカロス達が怖い顔をして、ぐるぐる見回りしている。犬の姿だから無害だと判断されているのか、あちらが攻撃を仕掛けて来る様子はない。きっと美しい街並みであっただろう。それじゃあ今は、全く彷彿としない。変わり果てた姿だ。
「ひどいやられかただワン……。なんちゃって。」
草木、花は枯れ果て建造物も修復されていない。恐らく修復したとしても、また壊され……その繰り返し。きっと人間達は何度も味わっただろう、絶望と言う名の苦々しい味を。苦々しく口に放り込むのさえ寸止めてしまう絶望を甘美な希望に変える為、僕は真っ直ぐ突き進んだ。
「うっ。なにかいいニオイがする。犬なみの鼻のよさだもんなぁ。」
真っ直ぐ突き進んでいる刹那、何処からともなく漂って来る香り。
「どこかでお昼を作っていたのか。お肉たっぷりのシチューかなぁ。」
何処からともなく漂って来る香りはきっと、お肉たっぷりのシチュー。パルテナ軍に襲撃されているのに、料理なんて出来る訳がない。きっと人間達は、作っている過程の最中に襲撃されていると知り慌てて避難したのだろう。常に攻撃を受けていたのではなく、一過性であると推察される。でなかったら、家宅に居てまた避難生活等とは出来なかっただろう。人間達が避難してくれているお陰で戦いに巻き込まず済むが。
「あれ?え?ちょ、ちょっと!!よだれを止めてくれぇ!指輪がベタベタだよ!!」
そんな思いに駆られていたら犬の自由は効かなくなるし、指輪はよだれでベタベタだし散々な目に遭う。鼻がききすぎるのも考えものだが、犬であるから仕方ないと言えば仕方ない。無理なのは百も承知だが、溜息をつきたくなってしまった。一時、犬のコントロールがきかず、身動きが取れなくなったが再度犬として動けるようになる。もう大丈夫だ。犬か小動物でしか通れない抜け穴がまたもや存在する。その抜け穴を通って、サクサク進んで行くがここで難関が立ちはだかった。建造物の中に入り込む。さすれば、建造物全体が既に幾つか破壊されており、先に進むのに困難しそうな勢いだ。ここを通らなければ、きっと辿り着けない。
「狭い足場を渡ればなんとか進めそうだ。」
このまま行けば、足止めをくらっていただろう。だが今の僕には、この斑模様の犬がついている。通常だったら、引き返している所だが二本に並ぶ道を発見。狭いけれど、ゆっくり渡れば落下する心配はない。
「犬でよかった。よくないけど。」
犬の姿だからこそ、移動出来る道が生まれる。二本に並ぶ道を交互に渡り歩き、颯爽と駆けて行く。犬の姿なのもあるが、誰も僕を邪魔立てしない。行く先に抜け穴を発見した僕は、真っ先に抜け穴を潜ったのだった。
「あれは?!」
抜け穴を抜けるとそこには……噴水広場にてイカロス等と対等以上に戦う見慣れたシルエットが窺えた。
「マグナ?!」
見慣れたシルエットの正体は、マグナだった。魔王ガイナスの居城に乗り込み、共にガイナスを浄化した人物である。あれ以来姿を見せなかったが、戦場に身を置いているのだけは分かる。振り上げた剣で、イカロスを次々と倒していた。
「マグナ!マグナ!」
今、僕が頼れるのはマグナしかいない。彼に何があったのか、聞く必要があるのだ。
「聞こえないか……。」
何度も何度も呼び掛けるが、指輪からだとやはり何を言っても叫んでも無に帰るだけだった。色々試してみたが、マグナは気付いた様子もなくそのまま去ろうとする。