第18章 三年の歳月(前編)
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ーセラ、目を……目を……覚ますのだ……
そんな声がまるで海の波の様に、押し寄せては聞こえて来る。口調も声も以前聞いた記憶があるのに、まるで思い出せない。私を呼んで働きかけているのは……誰?依然としてはっきりしない意識に、私は呼び掛けてくれている誰かへ応答できずにいた。そもそも私は、どうしたのだっけ。パルテナ軍としてオーラム軍に立ち向かい、戦い抜いてこの星を守り切れた。なのにも関わらず、その後の記憶は見事に抜け落ちている。まるで真っ暗闇の中を彷徨う旅人のよう。右も左も上も下も分からず、光のない出口に向かって永遠に歩き続ける最悪な展開。唯一自分の情報を上げるとしたら、自分の名前と天使である……変え難い事実ぐらいだろうか。
ーセラ、目を覚ますのだ……
さっきから私に呼び掛けてくるけれど、一体誰なの。懐かしいとは思うし、妙に嬉しい高揚感もある。けれど、一向に思い出せない。まさか、これが記憶喪失とか言うものかしら。では、今私に呼び掛けてくる何処か懐かしい声の主は誰?考えれば考える程不思議に思うのだけれど、夢……ではないのよね。だとするならば、これは……まさかの現実。現実世界で引き起こっている呼び掛けられているシチュエーション。でもどうしてあの声の主は、私を執拗に呼んでいるのだろう。本当に……誰なのだろう。
ーセラ、セラ、早く目覚めよ……
『そんなになんかいも呼ばなくたって、聞こえてるわよ!!』
勢い良くがばっと起きればそこは……ベッドの上だった。窓一つのシンプルな部屋。キョロキョロ周囲を見渡せば、そこは自室ではない……見慣れない部屋だった。毛布を被っていたのを見ると、眠りに就いていたのだと推察される。だが、どれだけ眠っていたかは自分でも分からない。どうして私は、自室ではない部屋で眠っていたのだろう。その理由すら見出せない。この一室には誰かが住んでいる、今分かるのはそれだけだ。
「あっ!おねえちゃん、おきたんだね!ビックリしたよ。おねえちゃん、ずっとおきないんだもん。まるでおはなしの中のねむり姫みたいだって、おかあさんが言ってた!」
『は、はは……。眠り姫、ねぇ。』
「おかあさーん!おにいちゃーん!ねむり姫おきたぁ!!」
『(温かい家族だなぁ。)』
窓の外を眺めていれば、部屋に活発な女の子が嬉々として入って来た。突然の事態に、自然と身体が強張る。だが、女の子の屈託ない笑顔に癒やされ緊張感が解けていく様だ。この子は、敵ではない。頭で認識したのか、肩の力を抜いて彼女と話をする態勢を取った。女の子が母と兄を呼びつけているが、きっと悪人ではないだろう。何せ、私を助けてくれたであろう恩人なのだから。正直、オーラム戦後記憶が抜け落ちている為に何が起こったのか説明を仰ぐしかない。助けてもらった際の状況ぐらいは、分かっているだろう。
「おや、起きたのかい。眠り姫、気分はどうだい?」
『えぇ、もうすっかり。この度は助けていただいて、ありがとうございました。』
「気にしないでおくれよ。お互い様じゃぁないか。驚いたよ。この子がね?道端で倒れてるあなたを見つけてね?息はしてるし、眠っているだけだろうって連れてきたんだよ。」
『あなたが見つけてくれたのね?ほんとうにありがとう。』
「ううん!あと、おにいちゃんもおねえちゃんをおぶってくれたんだよ!」
『おにいちゃん?』
女の子と他愛のない会話を繰り広げていれば、部屋の扉が勢い良く開いた。何事か、と扉を見遣れば女の子の母が豪快に立ち尽くしている。明らかに親子二人似ていない。苦笑いを浮かべていれば、豪快に立ち尽くしていた女の子の母がこちらに歩み寄り頭を撫でてくれたのだ。優しい笑みを纏って。何故かは分からないけれど、急に羞恥心に見舞われてしまった私は、伏し目がちに顔を赤く染めていた。気恥ずかしさの中にくすぐったい、複雑な感情に支配されていたのだと思う。
優しい笑みを纏った女の子の母に見守られながら、私が助けられた経緯を聞く。どうやら行き倒れていた所を、助けられたらしい。前後の記憶がないのだと話せば、親子二人は寂しそうな辛そうな表情を浮かべていた。自分とは関係がないのに、まるで自分の身に振りかかった時の様な顔を見せてくれる二人に笑みを見せる。嬉しかったのだ。その思いも行為も優しさも。そういうひと、私の身近にいたなぁ。ふとあの後ろ姿が脳裏を過った。
「眠り姫が目覚めたのはほんとうか?!」
「あ、おにいちゃん。」
『……この度は助けていただき、ありがとうございました。』
「礼にはおよびません。美しいあなたがあのような場所で倒れているのを見過ごせなかった……ただ、それだけのことです。」
『は、はは……。』
「なに言ってるんだい、この子は。まったく、眠り姫さんが困ってるじゃないか!」
「イテテテテッ!母さん、痛いよ!」
そんな声がまるで海の波の様に、押し寄せては聞こえて来る。口調も声も以前聞いた記憶があるのに、まるで思い出せない。私を呼んで働きかけているのは……誰?依然としてはっきりしない意識に、私は呼び掛けてくれている誰かへ応答できずにいた。そもそも私は、どうしたのだっけ。パルテナ軍としてオーラム軍に立ち向かい、戦い抜いてこの星を守り切れた。なのにも関わらず、その後の記憶は見事に抜け落ちている。まるで真っ暗闇の中を彷徨う旅人のよう。右も左も上も下も分からず、光のない出口に向かって永遠に歩き続ける最悪な展開。唯一自分の情報を上げるとしたら、自分の名前と天使である……変え難い事実ぐらいだろうか。
ーセラ、目を覚ますのだ……
さっきから私に呼び掛けてくるけれど、一体誰なの。懐かしいとは思うし、妙に嬉しい高揚感もある。けれど、一向に思い出せない。まさか、これが記憶喪失とか言うものかしら。では、今私に呼び掛けてくる何処か懐かしい声の主は誰?考えれば考える程不思議に思うのだけれど、夢……ではないのよね。だとするならば、これは……まさかの現実。現実世界で引き起こっている呼び掛けられているシチュエーション。でもどうしてあの声の主は、私を執拗に呼んでいるのだろう。本当に……誰なのだろう。
ーセラ、セラ、早く目覚めよ……
『そんなになんかいも呼ばなくたって、聞こえてるわよ!!』
勢い良くがばっと起きればそこは……ベッドの上だった。窓一つのシンプルな部屋。キョロキョロ周囲を見渡せば、そこは自室ではない……見慣れない部屋だった。毛布を被っていたのを見ると、眠りに就いていたのだと推察される。だが、どれだけ眠っていたかは自分でも分からない。どうして私は、自室ではない部屋で眠っていたのだろう。その理由すら見出せない。この一室には誰かが住んでいる、今分かるのはそれだけだ。
「あっ!おねえちゃん、おきたんだね!ビックリしたよ。おねえちゃん、ずっとおきないんだもん。まるでおはなしの中のねむり姫みたいだって、おかあさんが言ってた!」
『は、はは……。眠り姫、ねぇ。』
「おかあさーん!おにいちゃーん!ねむり姫おきたぁ!!」
『(温かい家族だなぁ。)』
窓の外を眺めていれば、部屋に活発な女の子が嬉々として入って来た。突然の事態に、自然と身体が強張る。だが、女の子の屈託ない笑顔に癒やされ緊張感が解けていく様だ。この子は、敵ではない。頭で認識したのか、肩の力を抜いて彼女と話をする態勢を取った。女の子が母と兄を呼びつけているが、きっと悪人ではないだろう。何せ、私を助けてくれたであろう恩人なのだから。正直、オーラム戦後記憶が抜け落ちている為に何が起こったのか説明を仰ぐしかない。助けてもらった際の状況ぐらいは、分かっているだろう。
「おや、起きたのかい。眠り姫、気分はどうだい?」
『えぇ、もうすっかり。この度は助けていただいて、ありがとうございました。』
「気にしないでおくれよ。お互い様じゃぁないか。驚いたよ。この子がね?道端で倒れてるあなたを見つけてね?息はしてるし、眠っているだけだろうって連れてきたんだよ。」
『あなたが見つけてくれたのね?ほんとうにありがとう。』
「ううん!あと、おにいちゃんもおねえちゃんをおぶってくれたんだよ!」
『おにいちゃん?』
女の子と他愛のない会話を繰り広げていれば、部屋の扉が勢い良く開いた。何事か、と扉を見遣れば女の子の母が豪快に立ち尽くしている。明らかに親子二人似ていない。苦笑いを浮かべていれば、豪快に立ち尽くしていた女の子の母がこちらに歩み寄り頭を撫でてくれたのだ。優しい笑みを纏って。何故かは分からないけれど、急に羞恥心に見舞われてしまった私は、伏し目がちに顔を赤く染めていた。気恥ずかしさの中にくすぐったい、複雑な感情に支配されていたのだと思う。
優しい笑みを纏った女の子の母に見守られながら、私が助けられた経緯を聞く。どうやら行き倒れていた所を、助けられたらしい。前後の記憶がないのだと話せば、親子二人は寂しそうな辛そうな表情を浮かべていた。自分とは関係がないのに、まるで自分の身に振りかかった時の様な顔を見せてくれる二人に笑みを見せる。嬉しかったのだ。その思いも行為も優しさも。そういうひと、私の身近にいたなぁ。ふとあの後ろ姿が脳裏を過った。
「眠り姫が目覚めたのはほんとうか?!」
「あ、おにいちゃん。」
『……この度は助けていただき、ありがとうございました。』
「礼にはおよびません。美しいあなたがあのような場所で倒れているのを見過ごせなかった……ただ、それだけのことです。」
『は、はは……。』
「なに言ってるんだい、この子は。まったく、眠り姫さんが困ってるじゃないか!」
「イテテテテッ!母さん、痛いよ!」