第18章 三年の歳月(前編)
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深い眠りに就いていた気がする。両目を薄ら薄ら開き、周囲を見渡してみるが何故かそこは真っ暗闇の中だった。
「……。」
何も見えない。何も聞こえない。当然自分がどんな姿でいるのか、何が引き起こっているのかさえも分からない状態だ。
「えーっと……。僕はどうしたんだろう。」
未だ意識は朦朧としているが、必死に記憶を辿ってみる。どうしてこうなってしまったのか、今置かれている状況について知っておきたかった。その為には、自分がどうしていたのか遡らなければならない。
「オーラム軍を退けて……。それから……。」
あの後は、どうしたっけ。オーラム軍からこの星を守った……後は?思い出せない筈がないのだけれど、記憶の部分に靄がかかり何も見えないのだ。そもそもあの後何をしていたか、きちんと認識しているだろうか。それさえも危うい感じだ。つまりは記憶が抜け落ちている様な……そんな感覚。
「指輪?指輪なのかな?」
暗闇の中で金属音が木霊する。これは、人が指にはめる指輪。指輪の表面には文字が刻まれており、不思議な装飾となっている。指輪がカタカタ動くその度に金属音がまたもや木霊し、まるで自分の存在位置を知らせているかのよう。何故指輪が視界にちらついたのか、金属音が自分の耳に届いたのかまるで分からなかった。
「“混沌の遣い”がどうとか 言っていたような。」
記憶が曖昧であるが、あともう一歩で核心に触れられそうな気がする。それなのに、肝心な所で靄がかかり挙げ句遮断され、突き返されてしまう。大切なこと、それだけは分かっているのに。
「なんだっけ……。頭がぼーっとする。」
やはり思い出せない。これは……一種の記憶喪失なのではないか。但し僕の場合、自分の名前も自分が何者であるかもはっきり答えられるから重症ではないが、前後の記憶が失われているとなると重症の一歩手前ぐらいかと思われる。……自分で言っていて悲しくなってきた。好きでこうなったんじゃないぞ!
「おっ?」
様々な考えが脳裏を過る最中、突如ふわり宙に浮く。真っ暗闇であった視界が開け、景色は野原の中に佇み僕を見つめる少女の双眸が窺えた。この少女は一体何をしているのだろう。何故こんなに嬉々とした表情で、僕を見つめているんだ。そんな顔したってダメだぞ!僕にはセラちゃんと言う心に決めた相手が!……まぁ、セラちゃんは僕を相棒としてしか見てくれてないけど。……んっ?そう言えばセラちゃんは?!彼女は何処にいるんだ?!
「な、なんだこれは?!」
ふわり宙に浮いたかと思えば、少女の双眸。相も変わらず、目の前の少女は僕を凝視するばかり。セラちゃんが今何処で何をしているのか分からず、はたまた自分が置かれている状態も飲み込めず混乱している。 いや、落ち着け。正気を保つんだ。
「そうか、指輪だ……。僕はたぶん、指輪にされたんだ。」
一息深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。ここで漸く自分が天使の姿ではなく、指輪にされてしまったのだと知る。自分が指輪にされてしまった事実が本当ならば何故視界に指輪がちらついたのか、金属音が自分の耳に届いたからくりも全て納得出来るのだ。まだ本の一部分に過ぎないが、靄がかかっていた所が取り除かれた気がする。
「だけど、とにかくなんとかしなきゃ。」
だが、問題は山積みだ。指輪にされたのを認識した迄は良いが、どうしてこうなってしまったのか原因を突き止めなければならない。それに、セラちゃんが気になる。僕が指輪にされたのならば、彼女も何処かで身動きが取れずにいるかもしれない。何か別の物に意識が宿されているか、或いは。彼女が気がかりだし、この状況を一刻も早く打開しなければ。そんな時、少女が指輪を気に入ったのか指にはめようとしているのが窺える。
「う、動け……!!」
少女は、まさか僕の意識が指輪に宿されているなんて微塵も思わないだろう。それを証拠に、躊躇なく指輪を指にはめた。少女の右手中指に光る指輪。
「動いた!」
物は試し。懸命に念じてみれば、少女が自分の意思関係なく動かせられるようになる。少女は今僕の意思の下、一本の道を真っ直ぐ歩いている状態だ。
「この指輪をはめた相手をコントロールできそうだ。」
本当に成功出来るとは思いも寄らなかった。だが、結果オーライである。少女が道の上を歩き、街に一歩一歩近付いて行く。時間が掛かりそうだが、何もしないなんて僕には耐えられない。
「ゴメン。このカラダをしばらく借りるよ。なにが起こったのか、調べなきゃ。」
道の左右に草花が咲いており、少女はその真ん中の道を歩く。街までの距離は、ほとほと遠い。街の建造物は垣間見えるのだが、外側から状況を察知する程には至っていないみたいだ。
「……。」
何も見えない。何も聞こえない。当然自分がどんな姿でいるのか、何が引き起こっているのかさえも分からない状態だ。
「えーっと……。僕はどうしたんだろう。」
未だ意識は朦朧としているが、必死に記憶を辿ってみる。どうしてこうなってしまったのか、今置かれている状況について知っておきたかった。その為には、自分がどうしていたのか遡らなければならない。
「オーラム軍を退けて……。それから……。」
あの後は、どうしたっけ。オーラム軍からこの星を守った……後は?思い出せない筈がないのだけれど、記憶の部分に靄がかかり何も見えないのだ。そもそもあの後何をしていたか、きちんと認識しているだろうか。それさえも危うい感じだ。つまりは記憶が抜け落ちている様な……そんな感覚。
「指輪?指輪なのかな?」
暗闇の中で金属音が木霊する。これは、人が指にはめる指輪。指輪の表面には文字が刻まれており、不思議な装飾となっている。指輪がカタカタ動くその度に金属音がまたもや木霊し、まるで自分の存在位置を知らせているかのよう。何故指輪が視界にちらついたのか、金属音が自分の耳に届いたのかまるで分からなかった。
「“混沌の遣い”がどうとか 言っていたような。」
記憶が曖昧であるが、あともう一歩で核心に触れられそうな気がする。それなのに、肝心な所で靄がかかり挙げ句遮断され、突き返されてしまう。大切なこと、それだけは分かっているのに。
「なんだっけ……。頭がぼーっとする。」
やはり思い出せない。これは……一種の記憶喪失なのではないか。但し僕の場合、自分の名前も自分が何者であるかもはっきり答えられるから重症ではないが、前後の記憶が失われているとなると重症の一歩手前ぐらいかと思われる。……自分で言っていて悲しくなってきた。好きでこうなったんじゃないぞ!
「おっ?」
様々な考えが脳裏を過る最中、突如ふわり宙に浮く。真っ暗闇であった視界が開け、景色は野原の中に佇み僕を見つめる少女の双眸が窺えた。この少女は一体何をしているのだろう。何故こんなに嬉々とした表情で、僕を見つめているんだ。そんな顔したってダメだぞ!僕にはセラちゃんと言う心に決めた相手が!……まぁ、セラちゃんは僕を相棒としてしか見てくれてないけど。……んっ?そう言えばセラちゃんは?!彼女は何処にいるんだ?!
「な、なんだこれは?!」
ふわり宙に浮いたかと思えば、少女の双眸。相も変わらず、目の前の少女は僕を凝視するばかり。セラちゃんが今何処で何をしているのか分からず、はたまた自分が置かれている状態も飲み込めず混乱している。 いや、落ち着け。正気を保つんだ。
「そうか、指輪だ……。僕はたぶん、指輪にされたんだ。」
一息深呼吸をして、落ち着きを取り戻す。ここで漸く自分が天使の姿ではなく、指輪にされてしまったのだと知る。自分が指輪にされてしまった事実が本当ならば何故視界に指輪がちらついたのか、金属音が自分の耳に届いたからくりも全て納得出来るのだ。まだ本の一部分に過ぎないが、靄がかかっていた所が取り除かれた気がする。
「だけど、とにかくなんとかしなきゃ。」
だが、問題は山積みだ。指輪にされたのを認識した迄は良いが、どうしてこうなってしまったのか原因を突き止めなければならない。それに、セラちゃんが気になる。僕が指輪にされたのならば、彼女も何処かで身動きが取れずにいるかもしれない。何か別の物に意識が宿されているか、或いは。彼女が気がかりだし、この状況を一刻も早く打開しなければ。そんな時、少女が指輪を気に入ったのか指にはめようとしているのが窺える。
「う、動け……!!」
少女は、まさか僕の意識が指輪に宿されているなんて微塵も思わないだろう。それを証拠に、躊躇なく指輪を指にはめた。少女の右手中指に光る指輪。
「動いた!」
物は試し。懸命に念じてみれば、少女が自分の意思関係なく動かせられるようになる。少女は今僕の意思の下、一本の道を真っ直ぐ歩いている状態だ。
「この指輪をはめた相手をコントロールできそうだ。」
本当に成功出来るとは思いも寄らなかった。だが、結果オーライである。少女が道の上を歩き、街に一歩一歩近付いて行く。時間が掛かりそうだが、何もしないなんて僕には耐えられない。
「ゴメン。このカラダをしばらく借りるよ。なにが起こったのか、調べなきゃ。」
道の左右に草花が咲いており、少女はその真ん中の道を歩く。街までの距離は、ほとほと遠い。街の建造物は垣間見えるのだが、外側から状況を察知する程には至っていないみたいだ。
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