第16章 オーラムの脅威(前編)
セラ
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
巣と言う名の要塞を創り出し、ハチの如く要塞を外敵から守る。今、私達はハチの巣抹殺を狙う外敵、言わば鳥。分かりやすい喩え話に納得した私は首を縦に頷き、見ただけで思わず怯んでしまいそうな要塞に向けて距離を狭めている。飛行スピードも軌道に乗り、風の煽られる心配はない。ぽっかりと浮かんでいる月と、瞬く間に映る星が自身の心に仄かな安らぎを与えてくれる。いつも……とはさすがに言わないが、夜にお勤めをするのも悪くないかもしれない。今回みたいに夕ご飯を作る間際、任務に中らなければならないのは御免蒙るが。本来ならばピット君を単騎駆けで大将の首を取らせ、私はそんな彼の帰りを夕ご飯と共に待ち侘びる所だが、余りにも自身と似つかわしくなくて、想像するのは止めておいた。危険と隣り合わせでも、やはり私はこうして戦いに身を投じているのが性に合っている。出せる力は限られていても、誰かを守れる事実を誇りに思うのだ。戦闘中にも関わらずまさか隣でそんな思いに駆られているとは露知らず、月を眺めている傍ら上空から得体の知れない物質が突如として降って来た。
「流星?!」
「あれもオーラム軍です。パルテナスキャンによると名前は「ロー」。」
『(まさか上から下へ降ってくるから「ロー」って名前だったりして。)』
「パルテナスキャン……?敵の名前がわかるのはその奇跡のおかげですか?」
「オーラムの名前は口で発音できませんが似た響きの言葉にしています。」
『そういえば前にもいたわよね、そういう敵が。』
緑の物質が私達目掛けて降って来る、明らかに故意的だ。一瞬流れ星かとも思われたが、どうやらオーラム軍のメンバーらしい。攻撃をして相殺するのは不可能だ。回避する他方法がない模様。次から次へと上から降って来るし、状況はキツめであるが回避が困難と言う訳でもない。回避しやすい方向に素早く散る。名前は「ロー」と呼称され、こちら側の言葉で発音できないらしい。以前にもそんな敵を相手にし、見事打ち負かした記憶が頭の片隅にあるけれど発言しない方向で、この会話は展開されずに終わりを迎えた。
何隻もの戦艦表面を掻い潜って、球体要塞に接近して行く。遠巻きから窺っていた景色は段々と威圧さを増していくかの様だ。前回核を打ち砕いた例の如く、要塞内に侵入し動力の源に近付いた挙げ句、力を失わせる寸法なのだろうが外観からして近付き難い凄みを効かせている。幾ら数多の敵を倒して来たからとて不安がないと言えば嘘になる。たった今この瞬間両頬をパチパチ叩き気合いを入れ直しているけれど。
「セラちゃん、まだまだイケるね?」
『モチロンよ。』
その動作を偶然見ていたらしいピット君が心配そうな表情を纏い、私の顔を覗き込んで来る。圧倒されそうにはなったけれど、雑念を捨て去り肯定の返事を返した。さすれば、彼は私の顔を覗き込みながら優しい笑みを浮かべ首を縦に頷いてくれたのだ。改めて彼の気遣いや内心感謝の意を述べつつ、彼と共にそっと前を見据えた。
「セラ、決して無理はしないでくださいね。」
『はいッ!パルテナ様!』
無論女神様も、私の体力を心配してくれた。幾ら日々戦い、強くなって来ていると自負しているけれどピット君には遠く及ばない。何も目の前の敵だけが、全ての打ち倒すべき敵とは限らない。自身に巣食う弱虫だって敵と言える。けれど、どことなく大丈夫だと胸を張れる気がした。保証なんてない、それでもこの思いは本物である。
自身を奮い立たせてくれる仲間が居る、何と素晴らしいか。次第に私が見せたのは、戦闘中にそぐわない程の満面の笑顔だった。まさか前を見据えているピット君がこちら側の満面の笑顔を盗み見ているとは露知らず、顔面迄も赤く染めていたなんて分かる筈もなかった。
「あのオーラム……。見るがいいわ。冥府軍のミックやモノアイとそっくりじゃ。」
「『えッ?!』」
「サクッとコピーしたと。やるねぇ。」
「ヤツらめ。星を吸い取るだけでなく 敵軍を模倣して進化していくらしい。」
『なんかどっかのかわいいピンクボールみたい。』
「セラ、それは言わないように。」
順調にルートを飛行していると、物質そのものは全く別物。なのにも関わらず冥府の魔物ミック、モノアイとそっくりな敵がこちら側に攻撃を仕掛けるべくスタンバイしていた。身体が覚えているのか、浮遊しているオーラム製ミックとモノアイを悉く浄化して行く。話を聞けば、オーラム軍は敵軍を模倣する能力が備わっているそうだ。ナチュレちゃんの情報は信憑性も高いし、信用出来そう。でもその話が事実なら、私やピット君もコピーされる可能性があると考えておくべきかな。
「もしや、宝箱やビートルもコピーしたものなのでしょうか……。」
「なんとも言えん。」プレゼントだけどね。」
「おまえかッ!!」
『道理で……。』
「ピット君とセラちゃんに愛情一本!!って思ってね。」
もしもピット君がメカニックデザインでコピーされてこちらに奇襲を掛けてきたら?……勝てる気がしない。様々な想像を膨らませてみては、条件反射で苦笑いを浮かべてしまう。でも幾らピット君のコピーと言えど、もしかしたらブラピ君の様に必ずしも攻撃を仕掛けて来るとは限らないかもしれない。じゃあ私は……?正直ピット君とブラピ君を見つめていると、自分の分身が居るのもアリなのではと考えてしまう。攻撃を仕掛けられて『私がホンモノのセラよ!』と豪語された日には、さすがに困惑しそうだが共に暮らせるのならば楽しそうだなぁなんて願望を抱いてみたりもする。絶賛想像中の傍ら、自身の思考を読まれたみたいに話は“私のコピーがいたら?”に変更された。何故か皆、真剣に悩んでいる様子だ。
「ホンモノのセラが一番じゃが、やむを得ないときはそちらをもらおうかの。“ナチュレちゃん、お茶にしない?”とか言ってもらうんじゃ!」
『ナチュレちゃん、お茶会したいの?』
「“闇に飛来する可憐な天使”いいねぇ。セラちゃんなら、なんでも絵になるわァ。」
『え……っと。やってあげようか?』
「セラちゃんのコピーだろうと、誰にも渡さない!!」
「モチロン、セラ本人も渡す気はありません。」二人の言動を一刀両断したパルテナ軍両二名は、そのまま会話を強制的に終了させた。思いきり願望がだだ漏れなのに対して、どういう表情を浮かべて良いのか反応に困る。いずれも私が叶えてあげられそうな内容だし助力しても良いのだけれど、ピット君もパルテナ様も許諾してはくれないだろう。一刀両断している時点で、願望毎打ち砕きそうだ。困った顔を纏い、発言に迷っていれば「セラちゃんは優しすぎるんだよ。」と怒られてしまった。
「浮遊大陸に近づきます。突起をかいくぐれば戦艦群からは身を守れるでしょう。」
ついさっき迄展開されていた会話が嘘みたいに、パルテナ様からの助言が両耳に届く。有り難い助言を両耳に留め、自分達の身を守る目的で戦艦の突起から中へと入り込んで行く。意志力がないにしても、味方の戦艦に攻撃を加えたりはしないだろう。戦艦の影に隠れながら、やり過ごそうと目論んでいた私達。行動を起こし、オーラム軍の裏をかいていたつもりだったが戦艦の隙間から別の戦艦が姿を現した。と思ったら、こちら側に向けて猛攻撃を繰り出して来た。これには各々の感想が瞬時に飛び交う。
「あれは?!」
「あんなところに巡洋艦が!!」
『もーう!見境ないんだから!!』
「なんたる根性!敵ながらあっぱれ!!」
回避に専念しているが、未だ猛攻撃は続く。敵を徹底的に追い詰め、空の塵にする迄は決して攻撃の手を緩めたりはしないだろう。それはこちらとて同じ。今はまだ戦況を観察しているけれど、確実に反撃出来る機会を窺っている。
「戦艦には、ブリッジのようなものはないようじゃのう。」
「流星?!」
「あれもオーラム軍です。パルテナスキャンによると名前は「ロー」。」
『(まさか上から下へ降ってくるから「ロー」って名前だったりして。)』
「パルテナスキャン……?敵の名前がわかるのはその奇跡のおかげですか?」
「オーラムの名前は口で発音できませんが似た響きの言葉にしています。」
『そういえば前にもいたわよね、そういう敵が。』
緑の物質が私達目掛けて降って来る、明らかに故意的だ。一瞬流れ星かとも思われたが、どうやらオーラム軍のメンバーらしい。攻撃をして相殺するのは不可能だ。回避する他方法がない模様。次から次へと上から降って来るし、状況はキツめであるが回避が困難と言う訳でもない。回避しやすい方向に素早く散る。名前は「ロー」と呼称され、こちら側の言葉で発音できないらしい。以前にもそんな敵を相手にし、見事打ち負かした記憶が頭の片隅にあるけれど発言しない方向で、この会話は展開されずに終わりを迎えた。
何隻もの戦艦表面を掻い潜って、球体要塞に接近して行く。遠巻きから窺っていた景色は段々と威圧さを増していくかの様だ。前回核を打ち砕いた例の如く、要塞内に侵入し動力の源に近付いた挙げ句、力を失わせる寸法なのだろうが外観からして近付き難い凄みを効かせている。幾ら数多の敵を倒して来たからとて不安がないと言えば嘘になる。たった今この瞬間両頬をパチパチ叩き気合いを入れ直しているけれど。
「セラちゃん、まだまだイケるね?」
『モチロンよ。』
その動作を偶然見ていたらしいピット君が心配そうな表情を纏い、私の顔を覗き込んで来る。圧倒されそうにはなったけれど、雑念を捨て去り肯定の返事を返した。さすれば、彼は私の顔を覗き込みながら優しい笑みを浮かべ首を縦に頷いてくれたのだ。改めて彼の気遣いや内心感謝の意を述べつつ、彼と共にそっと前を見据えた。
「セラ、決して無理はしないでくださいね。」
『はいッ!パルテナ様!』
無論女神様も、私の体力を心配してくれた。幾ら日々戦い、強くなって来ていると自負しているけれどピット君には遠く及ばない。何も目の前の敵だけが、全ての打ち倒すべき敵とは限らない。自身に巣食う弱虫だって敵と言える。けれど、どことなく大丈夫だと胸を張れる気がした。保証なんてない、それでもこの思いは本物である。
自身を奮い立たせてくれる仲間が居る、何と素晴らしいか。次第に私が見せたのは、戦闘中にそぐわない程の満面の笑顔だった。まさか前を見据えているピット君がこちら側の満面の笑顔を盗み見ているとは露知らず、顔面迄も赤く染めていたなんて分かる筈もなかった。
「あのオーラム……。見るがいいわ。冥府軍のミックやモノアイとそっくりじゃ。」
「『えッ?!』」
「サクッとコピーしたと。やるねぇ。」
「ヤツらめ。星を吸い取るだけでなく 敵軍を模倣して進化していくらしい。」
『なんかどっかのかわいいピンクボールみたい。』
「セラ、それは言わないように。」
順調にルートを飛行していると、物質そのものは全く別物。なのにも関わらず冥府の魔物ミック、モノアイとそっくりな敵がこちら側に攻撃を仕掛けるべくスタンバイしていた。身体が覚えているのか、浮遊しているオーラム製ミックとモノアイを悉く浄化して行く。話を聞けば、オーラム軍は敵軍を模倣する能力が備わっているそうだ。ナチュレちゃんの情報は信憑性も高いし、信用出来そう。でもその話が事実なら、私やピット君もコピーされる可能性があると考えておくべきかな。
「もしや、宝箱やビートルもコピーしたものなのでしょうか……。」
「なんとも言えん。」プレゼントだけどね。」
「おまえかッ!!」
『道理で……。』
「ピット君とセラちゃんに愛情一本!!って思ってね。」
もしもピット君がメカニックデザインでコピーされてこちらに奇襲を掛けてきたら?……勝てる気がしない。様々な想像を膨らませてみては、条件反射で苦笑いを浮かべてしまう。でも幾らピット君のコピーと言えど、もしかしたらブラピ君の様に必ずしも攻撃を仕掛けて来るとは限らないかもしれない。じゃあ私は……?正直ピット君とブラピ君を見つめていると、自分の分身が居るのもアリなのではと考えてしまう。攻撃を仕掛けられて『私がホンモノのセラよ!』と豪語された日には、さすがに困惑しそうだが共に暮らせるのならば楽しそうだなぁなんて願望を抱いてみたりもする。絶賛想像中の傍ら、自身の思考を読まれたみたいに話は“私のコピーがいたら?”に変更された。何故か皆、真剣に悩んでいる様子だ。
「ホンモノのセラが一番じゃが、やむを得ないときはそちらをもらおうかの。“ナチュレちゃん、お茶にしない?”とか言ってもらうんじゃ!」
『ナチュレちゃん、お茶会したいの?』
「“闇に飛来する可憐な天使”いいねぇ。セラちゃんなら、なんでも絵になるわァ。」
『え……っと。やってあげようか?』
「セラちゃんのコピーだろうと、誰にも渡さない!!」
「モチロン、セラ本人も渡す気はありません。」二人の言動を一刀両断したパルテナ軍両二名は、そのまま会話を強制的に終了させた。思いきり願望がだだ漏れなのに対して、どういう表情を浮かべて良いのか反応に困る。いずれも私が叶えてあげられそうな内容だし助力しても良いのだけれど、ピット君もパルテナ様も許諾してはくれないだろう。一刀両断している時点で、願望毎打ち砕きそうだ。困った顔を纏い、発言に迷っていれば「セラちゃんは優しすぎるんだよ。」と怒られてしまった。
「浮遊大陸に近づきます。突起をかいくぐれば戦艦群からは身を守れるでしょう。」
ついさっき迄展開されていた会話が嘘みたいに、パルテナ様からの助言が両耳に届く。有り難い助言を両耳に留め、自分達の身を守る目的で戦艦の突起から中へと入り込んで行く。意志力がないにしても、味方の戦艦に攻撃を加えたりはしないだろう。戦艦の影に隠れながら、やり過ごそうと目論んでいた私達。行動を起こし、オーラム軍の裏をかいていたつもりだったが戦艦の隙間から別の戦艦が姿を現した。と思ったら、こちら側に向けて猛攻撃を繰り出して来た。これには各々の感想が瞬時に飛び交う。
「あれは?!」
「あんなところに巡洋艦が!!」
『もーう!見境ないんだから!!』
「なんたる根性!敵ながらあっぱれ!!」
回避に専念しているが、未だ猛攻撃は続く。敵を徹底的に追い詰め、空の塵にする迄は決して攻撃の手を緩めたりはしないだろう。それはこちらとて同じ。今はまだ戦況を観察しているけれど、確実に反撃出来る機会を窺っている。
「戦艦には、ブリッジのようなものはないようじゃのう。」