『そういえば、さっきメデューサが人々を血祭りにあげるって言ってたよね？！』

「！！奴ら地上界を攻めてますよ！！」

「飛ばしますよ！ピット！セラ！」

『えっ？！私も？！』


和んでいる場合じゃなかった。決して予断を許さない事態に変わりはなかった。…本当の所は、もう少しだけ喜びと言う名の感情に浸っていたかったし、冥府軍が攻めて来ていなかったら真っ先にエンジェランドに帰還し、パルテナ様とピット君とイカロス達と平々凡々な時間を過ごしたかったけれど仕方ない。


地上の人々を襲ってる冥府軍を放っておく訳にもいかず、地上界へと向かう。（何故か私の翼が勝手にスピードが上がる。）


「うおおおっ！これは気持ち良いですね！！」

『な…慣れない…』

「飛翔の奇跡です。飛行ルートは私がコントロールします、但し５分も持ちません…制限を超えると翼が焼け落ちますよ。」

「はい…お世話になります、飛べない天使でスイマセン。せめてヤラれちゃわない様頑張ります！」

「因みに、セラはピットと違って空を飛べますが、急ぎたかったので飛翔の奇跡を翼に宿させて頂きました。」

『あ…やっぱり私のも“奇跡”つけちゃいましたか。』


苦笑いを浮かべながらピット君が何故飛べているのか分かった所で迫り来る冥府軍（主にモノアイ等）を叩きつつ、パルテナ様が授けてくれた飛翔の奇跡について簡単に説明を受ける。

長所は飛行ルートをコントロールしてもらえ、戦闘に専念できるという事…短所はタイムリミットが存在する事。もし…タイムリミットである５分を過ぎて翼が焼け落ちてしまったら…？

下手な想像をして、背筋が凍りついてしまう。天使のトレードマークである羽根が失くなってしまう、それは絶対に避けたい。

「そろそろ目的地の街が見えて来ますよ。」

「…！！街が冥府軍の攻撃を受けています！！」

『大変！何とかしなくちゃ！！』

「急ぎましょう。民の街を守りなさい。」


下手な想像を消し去りながら飛行ルートは冥府軍が襲う街へと直行する。途絶える事を知らない冥府軍の魔物を浄化しつつ、冥府軍に襲われている街の人々が無事である事を…只、只、切に願った。