第13章 月の静寂(後編)
セラ
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アロンが何処に居るのか所在が掴めないから、ピット君も探り探りでいるのが分かる。機会を窺っているのだ。暗闇のお陰でこちらが不利な状態が続いている。反撃のチャンスを窺っているが、察知するとどうやらアロン側もこちらの動きを全て把握している訳ではないみたいだ。何故ならば、アロンが今し方追尾弾を放ってくるから。幾ら暗闇のフィールドに慣れているとは言え、敵の動きを完全に把握しているのではないと頷ける。でなかったら追尾弾等連射したりしないだろう。と冷静に分析している間にピット君が背後に忍び寄ったアロンに思いきり打撃攻撃を加えていた。渾身の一撃と言える。この一撃でアロンが倒れる筈もなくまたしても闇の世界に姿を晦ましてしまう。今度は一体どんな攻撃を繰り出してくるのだろう。音に耳をすまさなければ勝率は薄い。
『今度は何処に……?』
「此処でございます、セラ様」
『?!』
「わたくしと共にナチュレ様の元へ参りましょう」
耳をすましていれば、突如背後からアロンの声が。驚愕の余り、叫ぶのも忘れ相手に隙を見せるまいと後ろを振り返ればそこに無表情のアロンが闇の中に立ち尽くしていた。以前にもあった窮地に立たされる場面。これはデジャヴかと錯覚しがちだが全て現実に引き起こっている。ピット君が私の名前を叫びながら全速力でこちらに駆けて来るのが分かる……嫌だ……自然軍に入りたくない。ずっとパルテナ軍にいたい。まさか自身の神経はこうなると事前に予期していたのだろうか。だとするならば天晴だと是非とも称讃したい。何てかしこいんだ。私は全く聞き入れなかったが。こうなる運命だったら、聞き入れてれば良かったの……?けれど自分の運命に抗ってこそ意味を持つものだと思うから、後悔なんてない。
ー空蝉!!
「セラちゃああああん!!」
『……?』
ゆっくりと目を閉じる。アロンが私に直接攻撃を下そうとしているのが気配でわかった。そんな中でもピット君の声だけが耳に届き、面目ない気持ちだけが胸中を過る。彼だけが諦めてないのだ。彼だけが必死に行かせまいと抗ってくれている。否彼だけではない。パルテナ様の奇跡発動時の掛け声迄聞こえてくる始末。ピット君だけじゃない、パルテナ様も諦めてないんだ。二人が諦めていないのに私が諦めてどうする。此処で立ち上がらなければ。
「セラ様はいずこに?」
「セラちゃん!!今の内に!!」
『ピット君!!』
何とか反撃しなければ……そう思った刹那、自身の身体が勝手にアロンの背後に回り込んでいると気付く。パルテナ様の奇跡が発動されたらしい。名は“空蝉”。確かに私はアロンから攻撃を喰らったのにダメージを受けた様子がないのだ。意表を突かれたのはアロンだけではない、私もだ。背後に回り込んだ所を神器で思い切り打撃を加える。なかなかの力だと思う。体勢を整えたみたいだが、アロンにダメージを与えたみたいだ。けれどそれだけじゃなかった。全速力で駆けていたピット君がそのままアロンに向かって力の限り攻撃を加えたのだ。半ば反則ではと言い掛けたが咄嗟に止めておいた。見て明らか、ピット君が怒っていたからだ。何に対して怒っていたかは分からない。只相当な理由であるのは理解出来た。何を隠そうアロンが数メートル程吹っ飛んだのは察しの通りである。怒りに任せて攻撃するピット君……何か、怖い。
「うぐっ!」
「その調子です!ピット!!」
「なかなかやりますね。素晴らしいお手前。では、もうちょっとだけ本気を出させていただきます!」
アロンは体勢を整えその言葉の直後に闇の世界を更に濃くさせた。薄っすらと見えていた視界はもう既に何も映らない。完全に耳だけが頼りとなってしまう。有言実行しようと彼は遠距離から四方八方に攻撃を仕掛け、こちらの動揺を誘う。ぎりぎり迄引きつけて回避しているがなかなか対策は見つからない。何か反撃出来る妙案があれば良いのだけれど、なかなかに難儀している。
『!ピット君!』
反撃する好機を狙っていればピット君が何を思ったのか唐突に動き出した。彼が動き出した先を見つめるが真っ暗闇に染まっており見えた状態ではない。だがしかし、彼は行動を起こしている。その先にアロンが浮遊しているのだと今はピット君を信じるしかなかった。黙って見守るだけなんて絶対に嫌だから、当てずっぽうだったとしてもピット君が居る先に向けて射撃を加え援護に回る。真っ暗闇の世界で誰も居ないと思われていたが彼はしっかりとアロンを捉えていた。それもあってか暗闇へ神器をフルに使い打撃コンボで畳み掛けている。最早耐久力の問題だ。先にアロンが倒れるか、ピット君がへばるか。手に汗を握り、事の末を見守っているけれどどちらが勝利を掴むかまだ分からない。
「おろろろろろろろ」
「ふうっ!息が詰まった!!」
『やったよー!ピット君ー!』
たった今ピット君が勝利を手にした。本心から嬉しさの余り、ピット君に抱きついてしまう。またしてもパルテナ軍が勝利を掴んだのだ、嬉しくない筈がない。それにアロンを討伐すれば自然軍の勢いも少しは治まるとパルテナ様もおっしゃっていたし。喜びの連続である。
『今度は何処に……?』
「此処でございます、セラ様」
『?!』
「わたくしと共にナチュレ様の元へ参りましょう」
耳をすましていれば、突如背後からアロンの声が。驚愕の余り、叫ぶのも忘れ相手に隙を見せるまいと後ろを振り返ればそこに無表情のアロンが闇の中に立ち尽くしていた。以前にもあった窮地に立たされる場面。これはデジャヴかと錯覚しがちだが全て現実に引き起こっている。ピット君が私の名前を叫びながら全速力でこちらに駆けて来るのが分かる……嫌だ……自然軍に入りたくない。ずっとパルテナ軍にいたい。まさか自身の神経はこうなると事前に予期していたのだろうか。だとするならば天晴だと是非とも称讃したい。何てかしこいんだ。私は全く聞き入れなかったが。こうなる運命だったら、聞き入れてれば良かったの……?けれど自分の運命に抗ってこそ意味を持つものだと思うから、後悔なんてない。
ー空蝉!!
「セラちゃああああん!!」
『……?』
ゆっくりと目を閉じる。アロンが私に直接攻撃を下そうとしているのが気配でわかった。そんな中でもピット君の声だけが耳に届き、面目ない気持ちだけが胸中を過る。彼だけが諦めてないのだ。彼だけが必死に行かせまいと抗ってくれている。否彼だけではない。パルテナ様の奇跡発動時の掛け声迄聞こえてくる始末。ピット君だけじゃない、パルテナ様も諦めてないんだ。二人が諦めていないのに私が諦めてどうする。此処で立ち上がらなければ。
「セラ様はいずこに?」
「セラちゃん!!今の内に!!」
『ピット君!!』
何とか反撃しなければ……そう思った刹那、自身の身体が勝手にアロンの背後に回り込んでいると気付く。パルテナ様の奇跡が発動されたらしい。名は“空蝉”。確かに私はアロンから攻撃を喰らったのにダメージを受けた様子がないのだ。意表を突かれたのはアロンだけではない、私もだ。背後に回り込んだ所を神器で思い切り打撃を加える。なかなかの力だと思う。体勢を整えたみたいだが、アロンにダメージを与えたみたいだ。けれどそれだけじゃなかった。全速力で駆けていたピット君がそのままアロンに向かって力の限り攻撃を加えたのだ。半ば反則ではと言い掛けたが咄嗟に止めておいた。見て明らか、ピット君が怒っていたからだ。何に対して怒っていたかは分からない。只相当な理由であるのは理解出来た。何を隠そうアロンが数メートル程吹っ飛んだのは察しの通りである。怒りに任せて攻撃するピット君……何か、怖い。
「うぐっ!」
「その調子です!ピット!!」
「なかなかやりますね。素晴らしいお手前。では、もうちょっとだけ本気を出させていただきます!」
アロンは体勢を整えその言葉の直後に闇の世界を更に濃くさせた。薄っすらと見えていた視界はもう既に何も映らない。完全に耳だけが頼りとなってしまう。有言実行しようと彼は遠距離から四方八方に攻撃を仕掛け、こちらの動揺を誘う。ぎりぎり迄引きつけて回避しているがなかなか対策は見つからない。何か反撃出来る妙案があれば良いのだけれど、なかなかに難儀している。
『!ピット君!』
反撃する好機を狙っていればピット君が何を思ったのか唐突に動き出した。彼が動き出した先を見つめるが真っ暗闇に染まっており見えた状態ではない。だがしかし、彼は行動を起こしている。その先にアロンが浮遊しているのだと今はピット君を信じるしかなかった。黙って見守るだけなんて絶対に嫌だから、当てずっぽうだったとしてもピット君が居る先に向けて射撃を加え援護に回る。真っ暗闇の世界で誰も居ないと思われていたが彼はしっかりとアロンを捉えていた。それもあってか暗闇へ神器をフルに使い打撃コンボで畳み掛けている。最早耐久力の問題だ。先にアロンが倒れるか、ピット君がへばるか。手に汗を握り、事の末を見守っているけれどどちらが勝利を掴むかまだ分からない。
「おろろろろろろろ」
「ふうっ!息が詰まった!!」
『やったよー!ピット君ー!』
たった今ピット君が勝利を手にした。本心から嬉しさの余り、ピット君に抱きついてしまう。またしてもパルテナ軍が勝利を掴んだのだ、嬉しくない筈がない。それにアロンを討伐すれば自然軍の勢いも少しは治まるとパルテナ様もおっしゃっていたし。喜びの連続である。