第13章 月の静寂(後編)
セラ
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もしもブラピ君が此処で勝利を治めてしまったら、私達はどうなってしまうのだろう。ピット君は傷付けられ、私は以前話された通り自分の意思関係なくブラピ君と共に行かなければならないのだろうか。……それは駄目。そんなの、誰も望んでいない。ブラピ君もきっと喜ばないと思う。私も何とかしなくちゃ。かと言って、二人の戦いに水をさす様な真似は出来ない。一体どうしたら誰も傷付かなくて済むのだろう。手加減をしてもヤラレてしまうのならば強制的に戦闘を終了させる必要があるけれど、他に妙案はないのだろうか。
『ピット君!ブラピ君!』
「セラちゃん?!」
「セラ?!一体どうしたんだよ?!」
『駄目!これ以上は!アロンの思うツボだよ!!』
考えを巡らせてみたけれど、結局は何も思いついてはくれなくて気付けば二人に向かって駆け出し、強制的に戦闘を終わらせようとしていた。果たして自身が起こした行動に意味を見出だせるか分からなかったけれど何もせず二人が戦う行く末を只黙って見守るしか出来ないなんておかしいと思ったのだ。何より性に合わない。後悔するのならば、行動を起こしてからうんと後悔したい。そう思ったら居ても立ってもいられなくなった。どう転ぶか分からなかったけれど、形勢逆転出来るかもしれない。きっとアロンが制御コアを守る思惑でブラピ君を利用している魂胆が見え隠れしていたとしても彼ならば構わず攻撃し続けるに違いないし、何より二人には戦い合ってほしくはなかった。幾ら敵対していたとしても、メデューサ戦の時みたいに共闘したり助け合ってほしいのだ。自分のエゴと言われれば反論が出来ないけれどそうなってくれたらどんなに嬉しいか。計り知れない。
「セラちゃん!駄目だ!来てはいけない!!」
「変な所でお転婆だな、セラは。ピット、たまにあいつは向こう見ずな行動をして来る。これからもそんな状況に立たされる時が何度も訪れるだろう。それでもお前はセラを守り通せるのか?俺だったらあんな危険な行動をさせたりしない。やはりセラは俺の隣に居るのが相応しい」
「減らず口を!!」
遠距離から静観していたからか、なかなか二人に辿り着けない。こんなにも距離が開いていたのだろうかと錯覚してしまう程。垂れ流れる一筋の汗を手の甲で拭い、走行スピードを上昇させる。二人の戦闘を止める術を見つけられてはいないけれど、勢いに身を任せる方法を実行するのが得策なのではないかと思う。時には頭で考えるよりも先に行動するのが大切な場合だってある。今まさにそんな状況だ。二人の動きを上手くストップ出来れば良いのだけれど。走行しつつ思念を抱える宛ら、二人が何やら話し込んでいるのが窺える。会話の内容迄は何故か聞こえて来なかったが、二人の表情が確かに変化したのを見逃さなかった。ブラピ君は平然としているのだが、ピット君は何処となく憂いを帯びている気がする。彼に何を言われたのか皆目見当も付かないが気に障る言葉の羅列を並べられたに違いない。神器を搗ち合わせている時よりも向き合って何やら話している今の状況がピリピリしていると感じるのだ。一体何について話しているのだろう。何だか疎外された気分。少々へこんでいると、ピット君とブラピ君が静かに見つめ合った。構える神器。どうやら決着をつけようとしているらしい。距離を狭めた私は、またも静観する姿勢を取る。緊迫した雰囲気に胸の鼓動が高鳴って行く。
「どうだ!!」
見合っていた次の瞬間、ピット君とブラピ君が同時に動き出した。察しの通り、どちらか勝敗をつけるべく先に攻撃を仕掛けた側が勝利を治める方法。どちらが先手必勝となるか。事の成り行きを見守っていると、ブラピ君がこちら側に視線を向けた気がした。何故かは分からない。だが仄かに微笑んでいる様にも見えた。此処で一瞬の隙を見せてしまったブラピ君がピット君から手痛い打撃を喰らってしまう。だが浄化される様子もない。ピット君が私の願いを聞き入れ手加減してくれたのだと理解した時には既に二人の元へ駆け出していた。
『ピット君、大丈夫?』
「うん、大丈夫だよ」
「チッ」
『ブラピ君は?……怪我してるじゃない!』
「こんなの掠り傷だ」
『でも血が出てるよ!待ってて!』
決着がついた。ピット君がブラピ君に渾身の一撃を与えたのが勝利の決め手となる。ブラピ君も浄化される心配もない。自然と安堵の溜め息を吐いてしまうのは仕方がなかった。浄化されなかったのが何よりだが見た所ブラピ君は左腕に怪我をしているらしく傷口からは血液が垂れている。重傷ではないが軽傷でもない。慌てた様子で絆創膏でも良いから何処かにないか探していると、天界から差し出されたであろう救急箱が突如姿を現した。パルテナ様からのせめてもの慈悲だろう。パルテナ様の心遣いに甘えつつ、救急箱から消毒液、ピンセット、脱脂綿を取り出しブラピ君が怪我をしてしまった傷口を手当てする。正直逃げられてしまうかとも思ったがどうやら大人しく手当てさせてくれる様だ。それを証拠に逃げる様子もなく、身を委ねてくれている。
『ピット君!ブラピ君!』
「セラちゃん?!」
「セラ?!一体どうしたんだよ?!」
『駄目!これ以上は!アロンの思うツボだよ!!』
考えを巡らせてみたけれど、結局は何も思いついてはくれなくて気付けば二人に向かって駆け出し、強制的に戦闘を終わらせようとしていた。果たして自身が起こした行動に意味を見出だせるか分からなかったけれど何もせず二人が戦う行く末を只黙って見守るしか出来ないなんておかしいと思ったのだ。何より性に合わない。後悔するのならば、行動を起こしてからうんと後悔したい。そう思ったら居ても立ってもいられなくなった。どう転ぶか分からなかったけれど、形勢逆転出来るかもしれない。きっとアロンが制御コアを守る思惑でブラピ君を利用している魂胆が見え隠れしていたとしても彼ならば構わず攻撃し続けるに違いないし、何より二人には戦い合ってほしくはなかった。幾ら敵対していたとしても、メデューサ戦の時みたいに共闘したり助け合ってほしいのだ。自分のエゴと言われれば反論が出来ないけれどそうなってくれたらどんなに嬉しいか。計り知れない。
「セラちゃん!駄目だ!来てはいけない!!」
「変な所でお転婆だな、セラは。ピット、たまにあいつは向こう見ずな行動をして来る。これからもそんな状況に立たされる時が何度も訪れるだろう。それでもお前はセラを守り通せるのか?俺だったらあんな危険な行動をさせたりしない。やはりセラは俺の隣に居るのが相応しい」
「減らず口を!!」
遠距離から静観していたからか、なかなか二人に辿り着けない。こんなにも距離が開いていたのだろうかと錯覚してしまう程。垂れ流れる一筋の汗を手の甲で拭い、走行スピードを上昇させる。二人の戦闘を止める術を見つけられてはいないけれど、勢いに身を任せる方法を実行するのが得策なのではないかと思う。時には頭で考えるよりも先に行動するのが大切な場合だってある。今まさにそんな状況だ。二人の動きを上手くストップ出来れば良いのだけれど。走行しつつ思念を抱える宛ら、二人が何やら話し込んでいるのが窺える。会話の内容迄は何故か聞こえて来なかったが、二人の表情が確かに変化したのを見逃さなかった。ブラピ君は平然としているのだが、ピット君は何処となく憂いを帯びている気がする。彼に何を言われたのか皆目見当も付かないが気に障る言葉の羅列を並べられたに違いない。神器を搗ち合わせている時よりも向き合って何やら話している今の状況がピリピリしていると感じるのだ。一体何について話しているのだろう。何だか疎外された気分。少々へこんでいると、ピット君とブラピ君が静かに見つめ合った。構える神器。どうやら決着をつけようとしているらしい。距離を狭めた私は、またも静観する姿勢を取る。緊迫した雰囲気に胸の鼓動が高鳴って行く。
「どうだ!!」
見合っていた次の瞬間、ピット君とブラピ君が同時に動き出した。察しの通り、どちらか勝敗をつけるべく先に攻撃を仕掛けた側が勝利を治める方法。どちらが先手必勝となるか。事の成り行きを見守っていると、ブラピ君がこちら側に視線を向けた気がした。何故かは分からない。だが仄かに微笑んでいる様にも見えた。此処で一瞬の隙を見せてしまったブラピ君がピット君から手痛い打撃を喰らってしまう。だが浄化される様子もない。ピット君が私の願いを聞き入れ手加減してくれたのだと理解した時には既に二人の元へ駆け出していた。
『ピット君、大丈夫?』
「うん、大丈夫だよ」
「チッ」
『ブラピ君は?……怪我してるじゃない!』
「こんなの掠り傷だ」
『でも血が出てるよ!待ってて!』
決着がついた。ピット君がブラピ君に渾身の一撃を与えたのが勝利の決め手となる。ブラピ君も浄化される心配もない。自然と安堵の溜め息を吐いてしまうのは仕方がなかった。浄化されなかったのが何よりだが見た所ブラピ君は左腕に怪我をしているらしく傷口からは血液が垂れている。重傷ではないが軽傷でもない。慌てた様子で絆創膏でも良いから何処かにないか探していると、天界から差し出されたであろう救急箱が突如姿を現した。パルテナ様からのせめてもの慈悲だろう。パルテナ様の心遣いに甘えつつ、救急箱から消毒液、ピンセット、脱脂綿を取り出しブラピ君が怪我をしてしまった傷口を手当てする。正直逃げられてしまうかとも思ったがどうやら大人しく手当てさせてくれる様だ。それを証拠に逃げる様子もなく、身を委ねてくれている。