第13章 月の静寂(後編)
セラ
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「どうかした?」
『……何か…変な感じがするの。うまく言葉に出来ないんだけど……この先に進んではいけないって……』
自身が彼に伝えた言葉は全て嘘偽りのないものだった。この先に進んでしまえば、また大切な存在同士争ってしまいそうな……そんな気がしてならないのだ。ギブアップするつもりは毛頭ないのだけれど、この先に進んではいけないと自身の神経が事もあろうに囁いている。勝手な思い過ごしならばそれで良いと願って止まない。だがピット君は不安そうな顔を浮かべているであろう私に優しく微笑んでこう言った。
「大丈夫だよ、セラちゃん。心配しないで」
『違うの!ピット君!ピット君は絶対負けないって分かってる!けれど……また無益な戦いが起こってしまいそうで……それが怖いの』
「セラちゃんは本当に優しいね。誰のことを言っているのか分からないけれどそいつは絶対に傷付けないよ。約束する」
『ピット君の首を……絞めることになっても?』
「うん」
確信なんて何処にもなかった。只、変な感覚が自身を襲うだけ。無視をする行為なんて容易く出来た筈、でもそれをしようとはしなかった。ピット君に伝えるだけでも状況は変化すると思ってしまったのだ。彼は私に疑心の目を向けず、信じて約束を取り付けてくれた。何故かは分からないけれど、彼の微笑みを見ていたら知らず知らず安堵の溜め息を吐いているのに気付く。
『でもピット君が危なくなったら全力で止めるからね!』
「ありがとう」
それでも前に進まなくてはならないし、直面し時には戦う選択肢を要しなければならない。そんなのは頭では充分分かっているつもりでいるがいざ目の前に突き出されてしまうと迷ってしまう時もある。正直何故不安に駆られてしまったのか果てしなく謎であるがピット君ならば必ず約束を守ってくれると信じている、今迄もそうであったからだ。ピット君と共に開かれた扉から次の間へと移動する。然すれば……見覚えのある黒き翼が視界に飛び込んで来た。
「ブラピ!!」
『ブラピ君!!』
「だからなんだよ!そのブラピって!!」
妙な胸騒ぎと黒き翼の正体は、察しの通りブラピ君であった。ブラピ君は満悦な表情を浮かべていたかと思えば所持していた神器を華麗に構え助走をつけてはピット君に襲い掛かった。咄嗟の機転でありながらピット君も神器で応戦。瞬く間にピット君とブラピ君は戦闘を開始してしまう。付近で構えていた私であったが、何故かこちらに攻撃を加える様子はない。飽く迄標的はピット君のみだ。早くも凄まじい戦いが繰り広げられる中、パルテナ様とアロンの会話が展開されているのが耳に入る。
「アロン。貴方がブラピを呼んだのですか?」
「左様にございます」
メデューサとの戦い真っ只中“ヤツらを無性に叩きたくなった”とかで一度だけ加勢してくれたけどあれ以来姿を見せていなかった。だからこそ妙なタイミングで何処に居るのか等と考えを巡らせてしまった訳だが、まさか待ち構えているなんて予想すらしていなかった。互いのポテンシャルを高めてくれる存在と成り得ているのか、段々と戦いが白熱している気もする。
「あのブラピがよく荷担する気になりましたね」
「カンタンなことでございますよ。ピット様とセラ様がここにお越しになる、とそう伝えたまでで」
『……私も?(でもブラピ君は攻撃してくる気がないみたいだけれど)』
「やはり戦わなければ気が済まないのですね……」
「その通り!!」
「ムダなことを!!」
私は二人が戦っている様を黙って見つめている。どちらも引けを取らず、隙のない攻防。ピット君の懐に一撃を加えようと神器を薙ぎ払うブラピ君。攻撃を喰らうまいとぎりぎりの所迄引き付けて回避し、素早く攻撃を仕掛けようと奮闘するが見切られて躱される。射撃に回り、どちらも打ち合うが弾が相殺しているのが際立つ。今の所、どちらが勝利するか或いは敗北するか見当が付かない。戦闘中なのは分かっているのだがどうにもブラピ君と先程から目と目が合う気がするのだ。気の所為だと言われればそれ迄なのだが、ブラピ君の頬が赤いのも気になる。此処の空間ってそんなに暑かっただろうか。それとも戦いが白熱している所以だろうか。明らかに後者の考えがしっくり来るし、当て嵌まる。
『(そうなのね。ブラピ君)』
「(セラは一体何を勘違いしているのかしら)」
首を二、三回うんうん頷いていたのをパルテナ様に見られていたとは露知らず、話が脱線してしまったので元に戻しピット君とブラピ君の戦いに焦点を合わせようと思う。見当が付かないと思っていた戦いに終わりが近付いているのが何処となく分かってしまった。戦いの行く末を黙って見守っていたが、話が脱線していたお陰で見ていなかった部分があり、いつの間にかピット君……ではなくブラピ君が優勢となってしまっていた。私がピット君に“傷付けてほしくない”とお願いした性だろうか。そんなのは絵空事に……過ぎないのだろうか。可能ならば例え敵同士であったとしても誰であろうと傷付いてほしくはない。外傷であろうと何であろうと。
『……何か…変な感じがするの。うまく言葉に出来ないんだけど……この先に進んではいけないって……』
自身が彼に伝えた言葉は全て嘘偽りのないものだった。この先に進んでしまえば、また大切な存在同士争ってしまいそうな……そんな気がしてならないのだ。ギブアップするつもりは毛頭ないのだけれど、この先に進んではいけないと自身の神経が事もあろうに囁いている。勝手な思い過ごしならばそれで良いと願って止まない。だがピット君は不安そうな顔を浮かべているであろう私に優しく微笑んでこう言った。
「大丈夫だよ、セラちゃん。心配しないで」
『違うの!ピット君!ピット君は絶対負けないって分かってる!けれど……また無益な戦いが起こってしまいそうで……それが怖いの』
「セラちゃんは本当に優しいね。誰のことを言っているのか分からないけれどそいつは絶対に傷付けないよ。約束する」
『ピット君の首を……絞めることになっても?』
「うん」
確信なんて何処にもなかった。只、変な感覚が自身を襲うだけ。無視をする行為なんて容易く出来た筈、でもそれをしようとはしなかった。ピット君に伝えるだけでも状況は変化すると思ってしまったのだ。彼は私に疑心の目を向けず、信じて約束を取り付けてくれた。何故かは分からないけれど、彼の微笑みを見ていたら知らず知らず安堵の溜め息を吐いているのに気付く。
『でもピット君が危なくなったら全力で止めるからね!』
「ありがとう」
それでも前に進まなくてはならないし、直面し時には戦う選択肢を要しなければならない。そんなのは頭では充分分かっているつもりでいるがいざ目の前に突き出されてしまうと迷ってしまう時もある。正直何故不安に駆られてしまったのか果てしなく謎であるがピット君ならば必ず約束を守ってくれると信じている、今迄もそうであったからだ。ピット君と共に開かれた扉から次の間へと移動する。然すれば……見覚えのある黒き翼が視界に飛び込んで来た。
「ブラピ!!」
『ブラピ君!!』
「だからなんだよ!そのブラピって!!」
妙な胸騒ぎと黒き翼の正体は、察しの通りブラピ君であった。ブラピ君は満悦な表情を浮かべていたかと思えば所持していた神器を華麗に構え助走をつけてはピット君に襲い掛かった。咄嗟の機転でありながらピット君も神器で応戦。瞬く間にピット君とブラピ君は戦闘を開始してしまう。付近で構えていた私であったが、何故かこちらに攻撃を加える様子はない。飽く迄標的はピット君のみだ。早くも凄まじい戦いが繰り広げられる中、パルテナ様とアロンの会話が展開されているのが耳に入る。
「アロン。貴方がブラピを呼んだのですか?」
「左様にございます」
メデューサとの戦い真っ只中“ヤツらを無性に叩きたくなった”とかで一度だけ加勢してくれたけどあれ以来姿を見せていなかった。だからこそ妙なタイミングで何処に居るのか等と考えを巡らせてしまった訳だが、まさか待ち構えているなんて予想すらしていなかった。互いのポテンシャルを高めてくれる存在と成り得ているのか、段々と戦いが白熱している気もする。
「あのブラピがよく荷担する気になりましたね」
「カンタンなことでございますよ。ピット様とセラ様がここにお越しになる、とそう伝えたまでで」
『……私も?(でもブラピ君は攻撃してくる気がないみたいだけれど)』
「やはり戦わなければ気が済まないのですね……」
「その通り!!」
「ムダなことを!!」
私は二人が戦っている様を黙って見つめている。どちらも引けを取らず、隙のない攻防。ピット君の懐に一撃を加えようと神器を薙ぎ払うブラピ君。攻撃を喰らうまいとぎりぎりの所迄引き付けて回避し、素早く攻撃を仕掛けようと奮闘するが見切られて躱される。射撃に回り、どちらも打ち合うが弾が相殺しているのが際立つ。今の所、どちらが勝利するか或いは敗北するか見当が付かない。戦闘中なのは分かっているのだがどうにもブラピ君と先程から目と目が合う気がするのだ。気の所為だと言われればそれ迄なのだが、ブラピ君の頬が赤いのも気になる。此処の空間ってそんなに暑かっただろうか。それとも戦いが白熱している所以だろうか。明らかに後者の考えがしっくり来るし、当て嵌まる。
『(そうなのね。ブラピ君)』
「(セラは一体何を勘違いしているのかしら)」
首を二、三回うんうん頷いていたのをパルテナ様に見られていたとは露知らず、話が脱線してしまったので元に戻しピット君とブラピ君の戦いに焦点を合わせようと思う。見当が付かないと思っていた戦いに終わりが近付いているのが何処となく分かってしまった。戦いの行く末を黙って見守っていたが、話が脱線していたお陰で見ていなかった部分があり、いつの間にかピット君……ではなくブラピ君が優勢となってしまっていた。私がピット君に“傷付けてほしくない”とお願いした性だろうか。そんなのは絵空事に……過ぎないのだろうか。可能ならば例え敵同士であったとしても誰であろうと傷付いてほしくはない。外傷であろうと何であろうと。