第13章 月の静寂(後編)
セラ
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「ピット。いつまでセラと手を繋いでいるつもりですか?」
『パルテナ様。ピット君とたまにはこういうのも良いんじゃないでしょうか?』
「セラ?」
『うっ……ハイ』
「えーと。やっぱり駄目ですか?」
「駄目ですよ」
「ですよね〜」
パルテナ様からの非難の目……否、非難の声を浴びせられ居た堪れなくなったピット君は、すっと繋いでいた手を離し解放してくれた。少々名残惜しく思いながらも、彼女に逆らう訳がなく隣同士に位置しながらも真っ直ぐ突き進む。流れる砂を抜け、大きく移動する目的で引かれるグラインド・レールが私達二人へ乗ってくれと言わんばかりに設置されているのを見受ける。何故かさっさと設置されているグラインド・レールに飛び乗ってしまったピット君を追い掛ける様に自身も飛び移る。その際垣間見えてしまったピット君の両耳は、誰が見ても真っ赤だった。
「(恐らくセラのことだから、ピットが手を繋ぎたがっていた理由を安心感を得る為だとか考えているのでしょうけど、ただ好きな人と手を繋ぎたい欲求を満たす為だとは全く以て気が付いていないでしょうね。まあ、そこがセラの長所ですけれど。私がセラを守らなくては……!)」
グラインド・レールを引いたのは今回パルテナ様ではないらしい。だとするならば月の神殿を設計するにあたり、大きく移動する手段を用いるべく設置したのだと推測される。侵入者を撃退するのも視野に入っているのかスイッチを赤色から青色に変化させなければ奈落へ真っ逆さまする最悪な展開が用意されているのだ。何とかそれだけは阻止したい。グラインド・レールを攻略するのに夢中でパルテナ様が強き誓いを掲げていた等とは知る由もなく射撃で前方にぽつんと存在しているスイッチを赤色から青色に。青色ならばそのままスルー状態に。スイッチを赤色から青色に切り替え落下しない様に注意を払いながらグラインド・レールに乗って行く。と、漸く地へと着地する。華麗にスタッと着地し、ホログラムではない本物の扉が私達天使の行く道を示してくれている。次の間は一体何が待ち受けているのだろう。
等と期待を胸に抱いていたが、魔物の大群に道中を塞がれてしまった。これでは前に進めない。如何にも自分達を倒してから進め状態だ。言われなくともそうするつもりだが、見て明らかなのもどうなのだろうと思わずには居られない。ピット君は隣で神器をフルに使い浄化に勤しんでいたけれど苦笑いを浮かべずには居られない。目にも留まらぬ速度で、魔物の大群を浄化し終えた後傾斜している階段を昇り切り、開かれる扉から中に入ってみると視界に映るは大きな大きな鏡。
「これは……」
「鏡ですね。鏡の中をよく見なさい。現実と違うところがありますよ」
『鏡を見てると不思議な感覚に陥ります』
見渡す限り全て鏡。映っているのは現実と相違ない筈なのだが、何か違うらしいのだ。それが次の進むべき道を指し示すヒントか。ぱっと見ただけではいまいち良く分からない。と思ったら、鏡に映っているスイッチが存在しているのに気付く。只直進するだけでは先に進めない仕様となっており影に隠れて見落としがちになりそうだがどうやらスイッチを押さない限り扉が開かない寸法らしい。実際見てみると、鏡にはちゃんと映っている筈なのにその位置には何もないのだ。鏡を見つめながらスイッチが存在しているであろう場所へゆっくり歩行を進めてみる。確かにポチッとスイッチが押された様な感覚がしたし、相応の音が聞こえた気がした。こういうのも俗にトリック・ミラーと呼んだりするのだろうか。鏡を凝視しつつ現実との区別を付ける不思議の間を無事通過した私達。鏡が設置されているエリアはこの場所だけなのかと思ったのだが然うは問屋が卸さない。またしても鏡を見つめて見極めるエリアに直面してしまう。容易く攻略されてしまっては面白味に欠けるだなんてアロンは考えているのだろうか。いずれにせよこの鏡の間を攻略しなければ先に進めない。ピット君が鏡に映っている景色を頼りに映し出されない見えない床の上を慎重に歩行している。自身も彼同様、見えない床を鏡越しで見つめ慎重に歩く。とても不思議だ。下を見遣れば闇の世界が何処迄も広がっていると言うのに落下する気配はない。下手したら、下から風が流れ込んで来る感じだ。風が吹き抜け、髪が弄ばれているのを手で整えながらピット君の後に続く。彼が早々に鏡には映っているが裸眼には映り込まないスイッチをポチッと押し扉の鍵を開いてくれていた。パルテナ様からの助言もあってか難無く通過出来ている様に見えているが苦戦を強いられてもおかしくはない。スムーズに進めていて良かったと思う。
「セラちゃん……?」
『……』
でも何故なのだろう。妙な胸騒ぎが自身を襲う。恐怖心とはまた違うのだけれど、何かが差し迫る感覚。変な感覚に襲われ思わず足を止めてしまう。急に歩行を止めてしまった私にピット君は不審に思ったらしくこちらを振り返る。首を傾げ、訝し気な表情の彼と目が合った。
『パルテナ様。ピット君とたまにはこういうのも良いんじゃないでしょうか?』
「セラ?」
『うっ……ハイ』
「えーと。やっぱり駄目ですか?」
「駄目ですよ」
「ですよね〜」
パルテナ様からの非難の目……否、非難の声を浴びせられ居た堪れなくなったピット君は、すっと繋いでいた手を離し解放してくれた。少々名残惜しく思いながらも、彼女に逆らう訳がなく隣同士に位置しながらも真っ直ぐ突き進む。流れる砂を抜け、大きく移動する目的で引かれるグラインド・レールが私達二人へ乗ってくれと言わんばかりに設置されているのを見受ける。何故かさっさと設置されているグラインド・レールに飛び乗ってしまったピット君を追い掛ける様に自身も飛び移る。その際垣間見えてしまったピット君の両耳は、誰が見ても真っ赤だった。
「(恐らくセラのことだから、ピットが手を繋ぎたがっていた理由を安心感を得る為だとか考えているのでしょうけど、ただ好きな人と手を繋ぎたい欲求を満たす為だとは全く以て気が付いていないでしょうね。まあ、そこがセラの長所ですけれど。私がセラを守らなくては……!)」
グラインド・レールを引いたのは今回パルテナ様ではないらしい。だとするならば月の神殿を設計するにあたり、大きく移動する手段を用いるべく設置したのだと推測される。侵入者を撃退するのも視野に入っているのかスイッチを赤色から青色に変化させなければ奈落へ真っ逆さまする最悪な展開が用意されているのだ。何とかそれだけは阻止したい。グラインド・レールを攻略するのに夢中でパルテナ様が強き誓いを掲げていた等とは知る由もなく射撃で前方にぽつんと存在しているスイッチを赤色から青色に。青色ならばそのままスルー状態に。スイッチを赤色から青色に切り替え落下しない様に注意を払いながらグラインド・レールに乗って行く。と、漸く地へと着地する。華麗にスタッと着地し、ホログラムではない本物の扉が私達天使の行く道を示してくれている。次の間は一体何が待ち受けているのだろう。
等と期待を胸に抱いていたが、魔物の大群に道中を塞がれてしまった。これでは前に進めない。如何にも自分達を倒してから進め状態だ。言われなくともそうするつもりだが、見て明らかなのもどうなのだろうと思わずには居られない。ピット君は隣で神器をフルに使い浄化に勤しんでいたけれど苦笑いを浮かべずには居られない。目にも留まらぬ速度で、魔物の大群を浄化し終えた後傾斜している階段を昇り切り、開かれる扉から中に入ってみると視界に映るは大きな大きな鏡。
「これは……」
「鏡ですね。鏡の中をよく見なさい。現実と違うところがありますよ」
『鏡を見てると不思議な感覚に陥ります』
見渡す限り全て鏡。映っているのは現実と相違ない筈なのだが、何か違うらしいのだ。それが次の進むべき道を指し示すヒントか。ぱっと見ただけではいまいち良く分からない。と思ったら、鏡に映っているスイッチが存在しているのに気付く。只直進するだけでは先に進めない仕様となっており影に隠れて見落としがちになりそうだがどうやらスイッチを押さない限り扉が開かない寸法らしい。実際見てみると、鏡にはちゃんと映っている筈なのにその位置には何もないのだ。鏡を見つめながらスイッチが存在しているであろう場所へゆっくり歩行を進めてみる。確かにポチッとスイッチが押された様な感覚がしたし、相応の音が聞こえた気がした。こういうのも俗にトリック・ミラーと呼んだりするのだろうか。鏡を凝視しつつ現実との区別を付ける不思議の間を無事通過した私達。鏡が設置されているエリアはこの場所だけなのかと思ったのだが然うは問屋が卸さない。またしても鏡を見つめて見極めるエリアに直面してしまう。容易く攻略されてしまっては面白味に欠けるだなんてアロンは考えているのだろうか。いずれにせよこの鏡の間を攻略しなければ先に進めない。ピット君が鏡に映っている景色を頼りに映し出されない見えない床の上を慎重に歩行している。自身も彼同様、見えない床を鏡越しで見つめ慎重に歩く。とても不思議だ。下を見遣れば闇の世界が何処迄も広がっていると言うのに落下する気配はない。下手したら、下から風が流れ込んで来る感じだ。風が吹き抜け、髪が弄ばれているのを手で整えながらピット君の後に続く。彼が早々に鏡には映っているが裸眼には映り込まないスイッチをポチッと押し扉の鍵を開いてくれていた。パルテナ様からの助言もあってか難無く通過出来ている様に見えているが苦戦を強いられてもおかしくはない。スムーズに進めていて良かったと思う。
「セラちゃん……?」
『……』
でも何故なのだろう。妙な胸騒ぎが自身を襲う。恐怖心とはまた違うのだけれど、何かが差し迫る感覚。変な感覚に襲われ思わず足を止めてしまう。急に歩行を止めてしまった私にピット君は不審に思ったらしくこちらを振り返る。首を傾げ、訝し気な表情の彼と目が合った。