第13章 月の静寂(後編)
セラ
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ピット君と共に前を見据えている私天使セラは、黄金色に輝く月の神殿の内部構造に圧倒されながらも神器を手中に今か今かと歩き出そうとしていた。
“月の神殿”と称しているだけあって外部だけではなく内部も所謂“お月さま”を彷彿させる。神殿ではあるが、実は内部もクレーターだけではないのかと思いがちだがどうやら予想は外れてしまったらしい。こう言う居城に住めたなら、天使ではあるけれどお姫様気分を味わえたりするのかなあと脳内の片隅でそんな考えをふと浮かべては想像力を大いに膨らませている私だ。
「なんてきらびやかな……!」
『何処かの宮殿みたい……』
「まるで別世界ですね」
「おほめにあずかりまして恐縮です。ハイ」
三人してそれぞれ感嘆の言葉を口にする。見渡す限り何処迄も広い黄金色に輝く景色を見つめ、例えるならお伽噺に迷い込んだ際の感覚に陥りそう。天使や女神、他の神々が存在しているこの世界で何を言っているのだと鋭い突っ込みを入れられそうだが本心から出てしまったのだから仕方ないと言える。幾ら自分が天使と言えど、感動心ぐらいは持ち合わせているのだ。それは人間の感情の如く悲しい時は泣いたりするし嬉しい時は身体全体を使って大喜びする。ピット君だって、パルテナ様もイカロス達もそうだ。大差なんて何処にもない。……と私は誰にも気付かれず勝手な迄に胸中に留めている。微風がさらさらと吹き抜け、黄金色に輝く世界の中を歩行する天使二人。待ち構えている魔物等を此見よがしに浄化しつつ神殿内探索と攻略はたまたアロン討伐の任務がゆっくり開始の合図を告げた。進み始めた刹那、天界からの贈り物をピット君はムシャムシャ食べているのを横目にふと考えたのだけれど、月の神殿外部と言い内部と言いうまくせしめてパルテナ軍の私有地に出来ないだろうか。それが無理でもパルテナ軍の管理下に置いておくとか出来やしないだろうか……?そうなれば絶対居住してしまうのに。と願わずには居られない。
「月の神殿、いいですね」
「うまいこと接収してこちらで役立てましょうか?」
『賛成です!(ちょこっとお姫様気分を味わってみたいし)』
「もしもし。勝手なことを言わないでくださいまし」
……等と脳内に思考を巡らせていれば、どうやらパルテナ様やピット君も似た様な意見を持ち合わせていたらしい。言わずもがな反対の余地はなく、出来るならば実現して欲しいけれどまさか持ち主のアロンが許す筈もなく異論を唱えられてしまう。当然の反応である。そう易易とこちら側に月の神殿を所有させてくれたなら敵対せずに済んだと思う。戦わずすればどれだけ良かったか計り知れない。パルテナ様もきっと極力戦闘を避けるべきだとお考えの筈だ。なのに環境が許してくれない。
「冗談ですよ」
『なんだ。残〜念〜!』
「こっちは手を抜かないから全力でかかってこい!!」
「御意にございます」
半ば本気だった為か冗談だと告げられ、内心ショックを受ける。侵入者を撃退する設備も施されているし、パルテナ軍が所有出来たならばパルテナ様に頼み込んで月の神殿を管理させて貰うと言うのに……だなんて残念な気持ちに支配されてしまう。何処となく分かっていたが肩を落胆させてしまったのは極々自然の流れだ。邪念を払うべく魔物相手に渾身の一撃を揮っているが明らかに腹いせでしている。そんな私の微妙な気持ちに気付かないだろうと考えていたのだが、今回は隣で絶賛戦闘中のピット君に伝達されてしまったらしく「セラちゃん、大丈夫?」と顔を覗き込まれ心配されてしまった。うまくごまかしたのだけれど、彼は未だ首を傾げつつ歩行を進めている。そうすれば、いつも私達を待ち構えている自然軍の魔物ポックリがぽうっと浮かんでいるのが見えた。待ち構えているのだから当然攻撃を仕掛けてくるのが敵軍の筋。華麗なる動きで攻撃をひらりと躱し、反撃すべく身構えていたのだが一向に仕掛けて来る様子がないのだ。折角素早く浄化しようとしたのに困惑してしまう。どうやら魔物のポックリは、実体のない何か映像から成るものらしいのだ。
「これは……」
「幻影?もしくはホログラムでしょうか」
『紛らわしいなあ』
「まぁ、ピット様やセラ様にはオードブルにもならないことでしょうけど」
『うーん。そうねぇ』
混乱させ、あわよくばこちらの判断を鈍らせる作戦なのか……迄は分かり兼ねるが用意周到であるのは即座に理解する。攻撃される心配はないが別の魔物が潜伏し、こちらへ常に狙いを定めているのは間違いない。実体のない映像否ホログラムに惑わされ、別の方向から攻撃される事態に発展する可能性も……やはりあった。現にたった今この瞬間、ホログラムに気を取られ危うく別の方向から仕掛けられた攻撃を喰らいそうになる。間一髪回避したお陰で難を逃れたが際どい場面であった。
“月の神殿”と称しているだけあって外部だけではなく内部も所謂“お月さま”を彷彿させる。神殿ではあるが、実は内部もクレーターだけではないのかと思いがちだがどうやら予想は外れてしまったらしい。こう言う居城に住めたなら、天使ではあるけれどお姫様気分を味わえたりするのかなあと脳内の片隅でそんな考えをふと浮かべては想像力を大いに膨らませている私だ。
「なんてきらびやかな……!」
『何処かの宮殿みたい……』
「まるで別世界ですね」
「おほめにあずかりまして恐縮です。ハイ」
三人してそれぞれ感嘆の言葉を口にする。見渡す限り何処迄も広い黄金色に輝く景色を見つめ、例えるならお伽噺に迷い込んだ際の感覚に陥りそう。天使や女神、他の神々が存在しているこの世界で何を言っているのだと鋭い突っ込みを入れられそうだが本心から出てしまったのだから仕方ないと言える。幾ら自分が天使と言えど、感動心ぐらいは持ち合わせているのだ。それは人間の感情の如く悲しい時は泣いたりするし嬉しい時は身体全体を使って大喜びする。ピット君だって、パルテナ様もイカロス達もそうだ。大差なんて何処にもない。……と私は誰にも気付かれず勝手な迄に胸中に留めている。微風がさらさらと吹き抜け、黄金色に輝く世界の中を歩行する天使二人。待ち構えている魔物等を此見よがしに浄化しつつ神殿内探索と攻略はたまたアロン討伐の任務がゆっくり開始の合図を告げた。進み始めた刹那、天界からの贈り物をピット君はムシャムシャ食べているのを横目にふと考えたのだけれど、月の神殿外部と言い内部と言いうまくせしめてパルテナ軍の私有地に出来ないだろうか。それが無理でもパルテナ軍の管理下に置いておくとか出来やしないだろうか……?そうなれば絶対居住してしまうのに。と願わずには居られない。
「月の神殿、いいですね」
「うまいこと接収してこちらで役立てましょうか?」
『賛成です!(ちょこっとお姫様気分を味わってみたいし)』
「もしもし。勝手なことを言わないでくださいまし」
……等と脳内に思考を巡らせていれば、どうやらパルテナ様やピット君も似た様な意見を持ち合わせていたらしい。言わずもがな反対の余地はなく、出来るならば実現して欲しいけれどまさか持ち主のアロンが許す筈もなく異論を唱えられてしまう。当然の反応である。そう易易とこちら側に月の神殿を所有させてくれたなら敵対せずに済んだと思う。戦わずすればどれだけ良かったか計り知れない。パルテナ様もきっと極力戦闘を避けるべきだとお考えの筈だ。なのに環境が許してくれない。
「冗談ですよ」
『なんだ。残〜念〜!』
「こっちは手を抜かないから全力でかかってこい!!」
「御意にございます」
半ば本気だった為か冗談だと告げられ、内心ショックを受ける。侵入者を撃退する設備も施されているし、パルテナ軍が所有出来たならばパルテナ様に頼み込んで月の神殿を管理させて貰うと言うのに……だなんて残念な気持ちに支配されてしまう。何処となく分かっていたが肩を落胆させてしまったのは極々自然の流れだ。邪念を払うべく魔物相手に渾身の一撃を揮っているが明らかに腹いせでしている。そんな私の微妙な気持ちに気付かないだろうと考えていたのだが、今回は隣で絶賛戦闘中のピット君に伝達されてしまったらしく「セラちゃん、大丈夫?」と顔を覗き込まれ心配されてしまった。うまくごまかしたのだけれど、彼は未だ首を傾げつつ歩行を進めている。そうすれば、いつも私達を待ち構えている自然軍の魔物ポックリがぽうっと浮かんでいるのが見えた。待ち構えているのだから当然攻撃を仕掛けてくるのが敵軍の筋。華麗なる動きで攻撃をひらりと躱し、反撃すべく身構えていたのだが一向に仕掛けて来る様子がないのだ。折角素早く浄化しようとしたのに困惑してしまう。どうやら魔物のポックリは、実体のない何か映像から成るものらしいのだ。
「これは……」
「幻影?もしくはホログラムでしょうか」
『紛らわしいなあ』
「まぁ、ピット様やセラ様にはオードブルにもならないことでしょうけど」
『うーん。そうねぇ』
混乱させ、あわよくばこちらの判断を鈍らせる作戦なのか……迄は分かり兼ねるが用意周到であるのは即座に理解する。攻撃される心配はないが別の魔物が潜伏し、こちらへ常に狙いを定めているのは間違いない。実体のない映像否ホログラムに惑わされ、別の方向から攻撃される事態に発展する可能性も……やはりあった。現にたった今この瞬間、ホログラムに気を取られ危うく別の方向から仕掛けられた攻撃を喰らいそうになる。間一髪回避したお陰で難を逃れたが際どい場面であった。
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