第13章 月の静寂(前編)
セラ
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「♪きょうもきょうとて宙に舞い♪群がる敵を浄化する♪パルテナ様はいつも笑顔♪僕はおかわり二杯まで」
夜。神器を携えゲートから足を踏み出し飛び立つと、隣で突然ピット君が歌い出しどうしたのかときょとん顔。上機嫌であるからなのか、はたまた別の理由が存在するのか知れないが隣で楽しそうにしているピット君を見つめくすくすと笑ってしまう。何だか妙にピックニック気分だ。もう既にご飯を食べたけれどお弁当でも持って行きたい気分になる。
「……なんですか?その歌は」
『可愛い歌だったけれど……』
「音楽に合わせて歌ってみただけでーす。さぁ、きょうのターゲットはなんでしょう?」
「あ、えーと自然軍幹部、静寂のアロンです」
恐らく訝しげな表情を浮かべているであろうパルテナ様が、ピット君に対し問い掛ける。返答が自身にとって不思議な内容だった為か首を傾げてしまったけれど彼には音楽の何かが聞こえているのだろう。そんな考えに至り、余り深くは追及しなかった。それはそれで怖い気もするが、考えれば考える程深みに嵌まるのは目に見えている。敵陣に侵入した訳ではないけれど、余計な考えは捨て置こうと思う。今見て分かるのはピット君が上機嫌から歌ったのではなく能天気さから歌ったのだと言う確かな事実。微かな笑みを浮かべては、こういう出陣も悪くないかなあ等と思ってしまった。
そんな思いに駆られながら向かって来る魔物浄化に手を加える。前回もだったが、相変わらず攻撃の手は絶えない。パルテナ様の口から出て来た“自然軍幹部 静寂のアロン”について話を展開させて行く。
「『あろん』」
「そう、あろん。目の前に月が見えますよね?」
「ハイ。きょうはお月さまがキレイですね」
『絶景だよね』
雲の中を抜けると、空は星と月だけが瞬いていた。飛行中であるが、夜空を散歩している感覚に陥り何だか得した気分だ。これが戦闘中ではなく、デートの一貫で隣がピット君………ではなく何処かのきらびやかな人物であったなら絶好のシチュエーションであっただろうに。妙に残念な気持ちに支配される。私の、残念な気持ちに誰も気づいた様子はなく前方にぽっかりと浮かんでいるお月さまにウットリと視界が奪われている……不幸中の幸いだったか。邪念が蠢いていたのを悟られない様に戦闘へ集中しているフリをして神器で魔物浄化してみる。カモフラージュは完璧だ。
「じゃあこれは?」もちろんお月さま……って、アレ?」
「『月がふたつ?!』」
私が影ながら努力している傍ら、会話はどんどん展開されて行く。思わず目を丸くしてしまった。ぽっかり浮かんでいる月が二つ並んでいるのだ。伝承からでも何からでも月が二つ存在するとは聞いた試しがない。それこそ、星の如く無数に散らばっている訳ではなし。どちらかが偽物だと頷けるが、此処迄酷似していると何処かの誰かさん達を脳裏に思い出してしまう。無論ピット君とブラピ君だ。ピット君とは今もこうして、時に同じく生活しているけれどブラピ君とはそう上手くは行かない。ピット君に対しては“同族嫌悪”だとか言って敵対しているし私がピット君の隣でパルテナ様からのお勤めをするのが気に入らないみたい。こちらの意見を申し立てるのならば、パルテナ軍に属し腕っぷしを揮ってほしいのだがブラピ君はそう言うタイプではないし、何より自由を愛している。孤高を愛する人物が誰かに屈服する筈がない。けれど、時には顔ぐらい見せに来てほしいとも思う。自分の微かな思いすら届かないのが現状だ。彼は今何処で何をやっているのだろう。不意に……考えてしまった。
「お月見の楽しみも倍ですね」
『風流ですね』
「おだんごをたくさん買っとかなきゃ」
『(花より団子……)』
取り敢えずブラピ君の話は置いておく。今は戦闘中に集中しなくては。雲の上に堂々と聳える真っ白な月は、二つ並んでおりどちらが本物か見分けが付かない程。だがパルテナ様の瞳は既にお見通しでルートは徐々に右側へと進路を変更する。察するに、右側に聳える月に絡繰があると踏んでいる模様。飛行ルートが二つ目の月へ進路変更し接近していると、ピット君が違和感に気付いた。
「おおっと!!あれ、人工物なんですか?」
『へぇ。道理で』
「静寂のアロンが住まう、月の神殿です」
「それは趣味がいい……ってあぶなし!!」
二つ目の月はやはり偽物だった。静寂のアロンは“月の神殿”と称し居を構えていたのだ。空に居城を構えるとは何と強引な。と思ったのだが、エンジェランドも大して変わらなかった。条件反射で苦笑いを浮かべていると、二つ目の月改め月の神殿が突如真ん中から亀裂を入れた……と思えば、核と思わしき物質から何発ものビーム光線を私達目掛けて発射して来る。はっきり言って妨害工作が激しい。敵はこちらを認識している。
夜。神器を携えゲートから足を踏み出し飛び立つと、隣で突然ピット君が歌い出しどうしたのかときょとん顔。上機嫌であるからなのか、はたまた別の理由が存在するのか知れないが隣で楽しそうにしているピット君を見つめくすくすと笑ってしまう。何だか妙にピックニック気分だ。もう既にご飯を食べたけれどお弁当でも持って行きたい気分になる。
「……なんですか?その歌は」
『可愛い歌だったけれど……』
「音楽に合わせて歌ってみただけでーす。さぁ、きょうのターゲットはなんでしょう?」
「あ、えーと自然軍幹部、静寂のアロンです」
恐らく訝しげな表情を浮かべているであろうパルテナ様が、ピット君に対し問い掛ける。返答が自身にとって不思議な内容だった為か首を傾げてしまったけれど彼には音楽の何かが聞こえているのだろう。そんな考えに至り、余り深くは追及しなかった。それはそれで怖い気もするが、考えれば考える程深みに嵌まるのは目に見えている。敵陣に侵入した訳ではないけれど、余計な考えは捨て置こうと思う。今見て分かるのはピット君が上機嫌から歌ったのではなく能天気さから歌ったのだと言う確かな事実。微かな笑みを浮かべては、こういう出陣も悪くないかなあ等と思ってしまった。
そんな思いに駆られながら向かって来る魔物浄化に手を加える。前回もだったが、相変わらず攻撃の手は絶えない。パルテナ様の口から出て来た“自然軍幹部 静寂のアロン”について話を展開させて行く。
「『あろん』」
「そう、あろん。目の前に月が見えますよね?」
「ハイ。きょうはお月さまがキレイですね」
『絶景だよね』
雲の中を抜けると、空は星と月だけが瞬いていた。飛行中であるが、夜空を散歩している感覚に陥り何だか得した気分だ。これが戦闘中ではなく、デートの一貫で隣がピット君………ではなく何処かのきらびやかな人物であったなら絶好のシチュエーションであっただろうに。妙に残念な気持ちに支配される。私の、残念な気持ちに誰も気づいた様子はなく前方にぽっかりと浮かんでいるお月さまにウットリと視界が奪われている……不幸中の幸いだったか。邪念が蠢いていたのを悟られない様に戦闘へ集中しているフリをして神器で魔物浄化してみる。カモフラージュは完璧だ。
「じゃあこれは?」もちろんお月さま……って、アレ?」
「『月がふたつ?!』」
私が影ながら努力している傍ら、会話はどんどん展開されて行く。思わず目を丸くしてしまった。ぽっかり浮かんでいる月が二つ並んでいるのだ。伝承からでも何からでも月が二つ存在するとは聞いた試しがない。それこそ、星の如く無数に散らばっている訳ではなし。どちらかが偽物だと頷けるが、此処迄酷似していると何処かの誰かさん達を脳裏に思い出してしまう。無論ピット君とブラピ君だ。ピット君とは今もこうして、時に同じく生活しているけれどブラピ君とはそう上手くは行かない。ピット君に対しては“同族嫌悪”だとか言って敵対しているし私がピット君の隣でパルテナ様からのお勤めをするのが気に入らないみたい。こちらの意見を申し立てるのならば、パルテナ軍に属し腕っぷしを揮ってほしいのだがブラピ君はそう言うタイプではないし、何より自由を愛している。孤高を愛する人物が誰かに屈服する筈がない。けれど、時には顔ぐらい見せに来てほしいとも思う。自分の微かな思いすら届かないのが現状だ。彼は今何処で何をやっているのだろう。不意に……考えてしまった。
「お月見の楽しみも倍ですね」
『風流ですね』
「おだんごをたくさん買っとかなきゃ」
『(花より団子……)』
取り敢えずブラピ君の話は置いておく。今は戦闘中に集中しなくては。雲の上に堂々と聳える真っ白な月は、二つ並んでおりどちらが本物か見分けが付かない程。だがパルテナ様の瞳は既にお見通しでルートは徐々に右側へと進路を変更する。察するに、右側に聳える月に絡繰があると踏んでいる模様。飛行ルートが二つ目の月へ進路変更し接近していると、ピット君が違和感に気付いた。
「おおっと!!あれ、人工物なんですか?」
『へぇ。道理で』
「静寂のアロンが住まう、月の神殿です」
「それは趣味がいい……ってあぶなし!!」
二つ目の月はやはり偽物だった。静寂のアロンは“月の神殿”と称し居を構えていたのだ。空に居城を構えるとは何と強引な。と思ったのだが、エンジェランドも大して変わらなかった。条件反射で苦笑いを浮かべていると、二つ目の月改め月の神殿が突如真ん中から亀裂を入れた……と思えば、核と思わしき物質から何発ものビーム光線を私達目掛けて発射して来る。はっきり言って妨害工作が激しい。敵はこちらを認識している。
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