第11章 自然王ナチュレ(後編)
セラ
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『あ、あの……?』
「貴女はわたしの生命の恩人です!!」
『ヘ……?』
「貴女の名前を教えて頂けませんか?」
『セラです』
「可憐で清純な貴女にピッタリの名だ!!」
『はぁ……。どうも』
未だ両手は握られた儘、解放してくれる素振りは見せてくれない。次第に引き攣った笑みを浮かべてしまう。こうしている間にも時間は過ぎ去ってしまうと言うのに目の前にて感喜の言葉を並べている人物は真っ直ぐこちらを見つめるだけで周囲が見えていない様子だ。今迄解放して来た兵士とは明らかに反応が相違する。だが邪険に扱うのも正直躊躇ってしまう。どうしたものか。打開策は何かないか思案しているとピット君の叫声が両耳に届く。
「いつまでそうしているつもりだ!!」
その瞬間、強制的に両手と両手を握り締め合っていたのをベリベリと引き剥がされる。ピット君、ナイスフォロー!心の叫びである。決して口には出さず行動に移さないが内心では親指を突き立てている状態だ。警戒心剥き出しに私の前を庇うピット君が兵士と対峙する。緊迫した雰囲気が一気に醸し出されて行く。冷や汗がたらり。
「君、どういうつもりだ!セラちゃんの手をベタベタ触ったりなんかして!!」
『ピット君、そこまで怒鳴らなくても……』
「セラちゃんは黙ってて!」
『ハイ……』
熱り立つピット君に飄々としている兵士。正反対の二人の態度に打って変わって苦笑い。ピット君の余裕のなさが際立っているのが同軍として恥ずかしく思う。血の気が盛んなのも考えものである。
「セラ様はわたしの生命の恩人。感謝の意を伝えて何が悪いのです?ピット様」
「それにしたって距離感があるだろう?!」
「もしかして……嫉妬ですか?」
「なッ……!」
『?』
「何とお見苦しい…」
お陰で冷静さを失い、相手に言い包められている目の前の彼。背後から彼の顔を少々覗き込めば顔全体が赤く染まっており、如何にも怒り心頭に発する姿勢。黙っててと堰き止められてしまったが、早くこの状況から脱却しなければ剛力のロッカも待ちくたびれてしまうだろう。そろそろナチュレちゃんから催促されてしまうかも知れない。どっちにしろ有り得る話だ。何か言葉を繋がなければ……!だがこういう時、何と言えば良いのか考え倦ねる。下手に刺激してしまえば火に油を注ぐだけで返って逆効果だ。最悪な展開ばかりが予想されて、頭が痛む。
「まぁ、今日はこのぐらいにしておきましょうか。麗しのセラ様の名が分かったのですから」
「あら。イケメン」
どうすれば良いのかオロオロしていると、助けた兵士が話を切り出し退散する姿勢を見せながら被っていた兜を取り外し顔面が露になる。パルテナ様の驚愕を含む声が届く。言われてみれば端正な顔立ちをしており、誰をも魅了しそうだ。呆気に取られている。あんな姿をしていても戦場に赴くのだから世界は分からない。
「セラ様。またお会いしましょう」
『う、うん』
「“また”なんてあるか!!」
兎に角退散してくれる素振りを見せてくれたので良しとする。相も変わらず怒りを剥き出しにしているピット君を他所に彼はウィンクしつつこの場を離脱して行った。嵐が去った……この表現がしっくり来るだろう。妙に疲労感がどっと押し寄せて来るかの様だ。地に落下した神器を拾い上げ手中に納めた後歩行しようとするがピット君は動き出す気配がない。立ち尽くしている。
『ピット君……?』
不思議に思い、彼の名を呼ぶ。風がさらさらと吹き、私達の頬を優しく撫でる。互いの間に暫しの沈黙が生まれた。
「セラちゃんは……」
先に口を開いたのはピット君であった。何か思う所があったのだろう。そうでなければさくさくと次へ進行し、いつもの如くバッタバッタと魔物を倒していた様に思う。彼が言い掛けている思いの丈をちゃんと受け止めなければならない。誰かの思いを聞き入れるのもまた天使の務めなのだ。
「あいつに……また会いたいって……思ってるの?」
風が吹き抜ける中、聞こえる彼の声と疑問。俯き加減でこちらを見ようともしないピット君に困った顔を浮かべ、肩を竦めた。何故彼がそこ迄気にするのか正直謎だ。だが、きっと質疑に対して応答しなければ納得してもらえないだろう。ピット君が気にする理由も、ましてやあの兵士に怒りの感情を抱く理由も分からないけれど自身の気持ちを素直に伝えようと静かに口を開いた。
『ピット君には私が単純な天使に見えてるの?』
「そ!そんな訳ないよ!でも君はあいつにまた会おうって言われて返事をしていたじゃないか!もしかしてその気もあるんじゃない?!」
『あの返事は勢い余ったからなの!場に流されちゃっただけって言うか……そんな事より今は剛力のロッカを討伐しなくちゃ!!』
「そうだけど!!」
『はい!この話題はここでおしまい!』
「貴女はわたしの生命の恩人です!!」
『ヘ……?』
「貴女の名前を教えて頂けませんか?」
『セラです』
「可憐で清純な貴女にピッタリの名だ!!」
『はぁ……。どうも』
未だ両手は握られた儘、解放してくれる素振りは見せてくれない。次第に引き攣った笑みを浮かべてしまう。こうしている間にも時間は過ぎ去ってしまうと言うのに目の前にて感喜の言葉を並べている人物は真っ直ぐこちらを見つめるだけで周囲が見えていない様子だ。今迄解放して来た兵士とは明らかに反応が相違する。だが邪険に扱うのも正直躊躇ってしまう。どうしたものか。打開策は何かないか思案しているとピット君の叫声が両耳に届く。
「いつまでそうしているつもりだ!!」
その瞬間、強制的に両手と両手を握り締め合っていたのをベリベリと引き剥がされる。ピット君、ナイスフォロー!心の叫びである。決して口には出さず行動に移さないが内心では親指を突き立てている状態だ。警戒心剥き出しに私の前を庇うピット君が兵士と対峙する。緊迫した雰囲気が一気に醸し出されて行く。冷や汗がたらり。
「君、どういうつもりだ!セラちゃんの手をベタベタ触ったりなんかして!!」
『ピット君、そこまで怒鳴らなくても……』
「セラちゃんは黙ってて!」
『ハイ……』
熱り立つピット君に飄々としている兵士。正反対の二人の態度に打って変わって苦笑い。ピット君の余裕のなさが際立っているのが同軍として恥ずかしく思う。血の気が盛んなのも考えものである。
「セラ様はわたしの生命の恩人。感謝の意を伝えて何が悪いのです?ピット様」
「それにしたって距離感があるだろう?!」
「もしかして……嫉妬ですか?」
「なッ……!」
『?』
「何とお見苦しい…」
お陰で冷静さを失い、相手に言い包められている目の前の彼。背後から彼の顔を少々覗き込めば顔全体が赤く染まっており、如何にも怒り心頭に発する姿勢。黙っててと堰き止められてしまったが、早くこの状況から脱却しなければ剛力のロッカも待ちくたびれてしまうだろう。そろそろナチュレちゃんから催促されてしまうかも知れない。どっちにしろ有り得る話だ。何か言葉を繋がなければ……!だがこういう時、何と言えば良いのか考え倦ねる。下手に刺激してしまえば火に油を注ぐだけで返って逆効果だ。最悪な展開ばかりが予想されて、頭が痛む。
「まぁ、今日はこのぐらいにしておきましょうか。麗しのセラ様の名が分かったのですから」
「あら。イケメン」
どうすれば良いのかオロオロしていると、助けた兵士が話を切り出し退散する姿勢を見せながら被っていた兜を取り外し顔面が露になる。パルテナ様の驚愕を含む声が届く。言われてみれば端正な顔立ちをしており、誰をも魅了しそうだ。呆気に取られている。あんな姿をしていても戦場に赴くのだから世界は分からない。
「セラ様。またお会いしましょう」
『う、うん』
「“また”なんてあるか!!」
兎に角退散してくれる素振りを見せてくれたので良しとする。相も変わらず怒りを剥き出しにしているピット君を他所に彼はウィンクしつつこの場を離脱して行った。嵐が去った……この表現がしっくり来るだろう。妙に疲労感がどっと押し寄せて来るかの様だ。地に落下した神器を拾い上げ手中に納めた後歩行しようとするがピット君は動き出す気配がない。立ち尽くしている。
『ピット君……?』
不思議に思い、彼の名を呼ぶ。風がさらさらと吹き、私達の頬を優しく撫でる。互いの間に暫しの沈黙が生まれた。
「セラちゃんは……」
先に口を開いたのはピット君であった。何か思う所があったのだろう。そうでなければさくさくと次へ進行し、いつもの如くバッタバッタと魔物を倒していた様に思う。彼が言い掛けている思いの丈をちゃんと受け止めなければならない。誰かの思いを聞き入れるのもまた天使の務めなのだ。
「あいつに……また会いたいって……思ってるの?」
風が吹き抜ける中、聞こえる彼の声と疑問。俯き加減でこちらを見ようともしないピット君に困った顔を浮かべ、肩を竦めた。何故彼がそこ迄気にするのか正直謎だ。だが、きっと質疑に対して応答しなければ納得してもらえないだろう。ピット君が気にする理由も、ましてやあの兵士に怒りの感情を抱く理由も分からないけれど自身の気持ちを素直に伝えようと静かに口を開いた。
『ピット君には私が単純な天使に見えてるの?』
「そ!そんな訳ないよ!でも君はあいつにまた会おうって言われて返事をしていたじゃないか!もしかしてその気もあるんじゃない?!」
『あの返事は勢い余ったからなの!場に流されちゃっただけって言うか……そんな事より今は剛力のロッカを討伐しなくちゃ!!』
「そうだけど!!」
『はい!この話題はここでおしまい!』