第10章 願いのタネ(前編)
セラ
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「マグマが激しいようですね」
「きびしいですね!」
「すぐそばに洞窟があります」
「おっ!それは都合よしですね!!」
「しかし多少遠回りになりそうです。行き先はピットに任せましょう。火山地帯を突破するなら右に洞窟を抜けるなら左に寄りなさい」
マグマから攻撃を繰り出されひらりと躱しながらも、タネについて論を投じていた。だが結局解決の糸口は見つからず一時保留となる。今重要なのはタネについて追究するよりも下手したら大ダメージを与えかねないマグマをどう回避するのか、これに尽きる。眼中に入れたくはない光景を目の当たりにしてしまったのだが、冥府の魔物がマグマに接触し強制浄化させられている所だ。見た瞬間血の気が引いた。マグマに接触する最悪の事態は起こらないものの、少々衣服が黒く焦げてしまい切なさが押し寄せている。それを経て現在ピット君に究極の選択を強いられる、どちらのルートに進むか、を。見るからに火山一帯を強引に進行するよりかは、洞窟内に入ってしまえば被害は少なく済みそうだ。さぁ、ピット君はどちらを選ぶのか。
『…?』
彼の選択を待ち構えていると、真剣な表情を帯びこちらに視線を向けて来た。どちらにするのか待っていたこちらも彼を見つめていた為目と目が合う。何故こちらを見て来たのか疑問に思い、首を傾げていると彼が視線を逸らし左に寄る。洞窟に進む傾向を示した。
「洞窟に突入します!」
「暑さがしのげれば助かるけど!」
(セラちゃんを思って洞窟に入ったなんて君には言えないけどね)
あの数秒間は一体何だったのだろう。脳裏にそんな考えが過ぎったが重要視せずに終了を迎える。偶にピット君と口では表現出来ない時間が流れる時がある。普段見せる活気づいた表情でもご飯の前に見せる嬉しそうな表情でもない。パルテナ様はこんな彼の一面を知っているのだろうか?真っ直ぐ前を見つめている彼の横顔にはもうあの雰囲気は纏っていなかった。
「溶岩が流れ落ちている……」
「洞窟というより、空洞かしら?」
洞窟に入れば幾分ましだと思って入ってみたは良いものの、溶岩が流れ落ちている事実に寄ってどちらを進行しようが変化ない結論に至る。無性に悲しくなって来た。
「ああっ洞窟の先が!」
『これでは前に進めない!』
「おちついて ピット セラ」
突如目の前に赤いものが進行を塞ぐ。溶岩のお陰で私達は先に進めず八方塞がりになってしまう。こんな所で立ち往生してしまうとは思いも寄らなかった。隣でパニックになってしまったピット君の声を聞く羽目になる。
「このまま蒸し焼きになったら……!」
『天使の蒸し焼きフルコース……!』
「おちつきなさいって」
私までもが慌てふためき惨事になる。もしもこのままパルテナ様が宥めてくれなかったら冷静さを欠き、この先進行するのは不可能だっただろう。パルテナ様の導きで別のルートを飛行する。思わず安堵の溜め息。
「ふぅ。やれやれっと」
岩と岩との間を無事に通過。一時はどうなる事かと思ったが、着実に前進している。いつもより倍以上に険しい道を行っているからか達成感が半端ない。だが喜んでいるのも束の間、それは怒濤にも私達二人に迫り来る。
「ピット、セラ、後ろ!」
「『え?』」
「うわああああっ!!」
『きゃああああっ!!』
後ろと言われ、意のままに振り返れば攻撃を仕掛けていると言わんばかりのマグマが急接近して来た。まさかとは思うが洞窟内に入るよりもマグマの上を通過するのが賢明な判断だったのではと言わざるを得ない。マグマの所為か温度と飛行スピードが急上昇して行く。
「飛ばします!」
「セラちゃん!」
『ピット君!』
迫り来るマグマが足元に接近するのをギリギリで躱し、全速力で突破口を目指す。出口は両眼に映っている。何せ光が見えているのだから。ピット君と手と手を繋ぎ、発動している奇跡のスピードに見を委ねる。
「うおおおおっ!!あぶなかったぁ……」
『し、死ぬ……』
「焼き天使になるところでしたね」
「ワキ汗べっちょりですよ、もう」
ぎりぎりの境界ではあったもののマグマに飲み込まれる最悪の状況は避けられ、ほっと胸を撫で下ろす。汗が額から垂れ流れるのを手の甲で軽く拭いながらゆっくりと進行して行く。どうやらマグマが追い掛けて来るハラハラドキドキ汗ベッチョリ展開は繰り広げられない模様。空中でこんな苦戦したのだから地上ではこれ以上に切羽詰まる可能性が浮上する。思わず引き攣った笑いが込み上がる。
「そろそろ地上に降り立ちますよ」
「この熱さで、靴底が持つかなあ」
「このミッションが終わったら新しいものを買ってあげますよ」
『出来れば服もお願いします』
覚悟を決めよう、この先強大な敵を倒さなければならないのだから。不死鳥フェニックスと願いのタネ。冥府神ハデスがどう関わって来るのか全く読めぬまま、地上に降り立つ準備をする。ピット君に手を引かれた手を見つめつつ、不安はあるものの今迄もそうだったし、彼が隣に居てくれるから大丈夫かななんて改めて思ってしまった。
(To be continued )
「きびしいですね!」
「すぐそばに洞窟があります」
「おっ!それは都合よしですね!!」
「しかし多少遠回りになりそうです。行き先はピットに任せましょう。火山地帯を突破するなら右に洞窟を抜けるなら左に寄りなさい」
マグマから攻撃を繰り出されひらりと躱しながらも、タネについて論を投じていた。だが結局解決の糸口は見つからず一時保留となる。今重要なのはタネについて追究するよりも下手したら大ダメージを与えかねないマグマをどう回避するのか、これに尽きる。眼中に入れたくはない光景を目の当たりにしてしまったのだが、冥府の魔物がマグマに接触し強制浄化させられている所だ。見た瞬間血の気が引いた。マグマに接触する最悪の事態は起こらないものの、少々衣服が黒く焦げてしまい切なさが押し寄せている。それを経て現在ピット君に究極の選択を強いられる、どちらのルートに進むか、を。見るからに火山一帯を強引に進行するよりかは、洞窟内に入ってしまえば被害は少なく済みそうだ。さぁ、ピット君はどちらを選ぶのか。
『…?』
彼の選択を待ち構えていると、真剣な表情を帯びこちらに視線を向けて来た。どちらにするのか待っていたこちらも彼を見つめていた為目と目が合う。何故こちらを見て来たのか疑問に思い、首を傾げていると彼が視線を逸らし左に寄る。洞窟に進む傾向を示した。
「洞窟に突入します!」
「暑さがしのげれば助かるけど!」
(セラちゃんを思って洞窟に入ったなんて君には言えないけどね)
あの数秒間は一体何だったのだろう。脳裏にそんな考えが過ぎったが重要視せずに終了を迎える。偶にピット君と口では表現出来ない時間が流れる時がある。普段見せる活気づいた表情でもご飯の前に見せる嬉しそうな表情でもない。パルテナ様はこんな彼の一面を知っているのだろうか?真っ直ぐ前を見つめている彼の横顔にはもうあの雰囲気は纏っていなかった。
「溶岩が流れ落ちている……」
「洞窟というより、空洞かしら?」
洞窟に入れば幾分ましだと思って入ってみたは良いものの、溶岩が流れ落ちている事実に寄ってどちらを進行しようが変化ない結論に至る。無性に悲しくなって来た。
「ああっ洞窟の先が!」
『これでは前に進めない!』
「おちついて ピット セラ」
突如目の前に赤いものが進行を塞ぐ。溶岩のお陰で私達は先に進めず八方塞がりになってしまう。こんな所で立ち往生してしまうとは思いも寄らなかった。隣でパニックになってしまったピット君の声を聞く羽目になる。
「このまま蒸し焼きになったら……!」
『天使の蒸し焼きフルコース……!』
「おちつきなさいって」
私までもが慌てふためき惨事になる。もしもこのままパルテナ様が宥めてくれなかったら冷静さを欠き、この先進行するのは不可能だっただろう。パルテナ様の導きで別のルートを飛行する。思わず安堵の溜め息。
「ふぅ。やれやれっと」
岩と岩との間を無事に通過。一時はどうなる事かと思ったが、着実に前進している。いつもより倍以上に険しい道を行っているからか達成感が半端ない。だが喜んでいるのも束の間、それは怒濤にも私達二人に迫り来る。
「ピット、セラ、後ろ!」
「『え?』」
「うわああああっ!!」
『きゃああああっ!!』
後ろと言われ、意のままに振り返れば攻撃を仕掛けていると言わんばかりのマグマが急接近して来た。まさかとは思うが洞窟内に入るよりもマグマの上を通過するのが賢明な判断だったのではと言わざるを得ない。マグマの所為か温度と飛行スピードが急上昇して行く。
「飛ばします!」
「セラちゃん!」
『ピット君!』
迫り来るマグマが足元に接近するのをギリギリで躱し、全速力で突破口を目指す。出口は両眼に映っている。何せ光が見えているのだから。ピット君と手と手を繋ぎ、発動している奇跡のスピードに見を委ねる。
「うおおおおっ!!あぶなかったぁ……」
『し、死ぬ……』
「焼き天使になるところでしたね」
「ワキ汗べっちょりですよ、もう」
ぎりぎりの境界ではあったもののマグマに飲み込まれる最悪の状況は避けられ、ほっと胸を撫で下ろす。汗が額から垂れ流れるのを手の甲で軽く拭いながらゆっくりと進行して行く。どうやらマグマが追い掛けて来るハラハラドキドキ汗ベッチョリ展開は繰り広げられない模様。空中でこんな苦戦したのだから地上ではこれ以上に切羽詰まる可能性が浮上する。思わず引き攣った笑いが込み上がる。
「そろそろ地上に降り立ちますよ」
「この熱さで、靴底が持つかなあ」
「このミッションが終わったら新しいものを買ってあげますよ」
『出来れば服もお願いします』
覚悟を決めよう、この先強大な敵を倒さなければならないのだから。不死鳥フェニックスと願いのタネ。冥府神ハデスがどう関わって来るのか全く読めぬまま、地上に降り立つ準備をする。ピット君に手を引かれた手を見つめつつ、不安はあるものの今迄もそうだったし、彼が隣に居てくれるから大丈夫かななんて改めて思ってしまった。
(To be continued )
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