第9章 決戦!メデューサ(後編)
セラ
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歩行を進めるは、ヒュードラーが象られた石像から続く扉。不意に浮かぶのは彼女の輝かしい笑顔。大丈夫、必ず彼女を助け出す。
・・・
『………』
“セラ…セラ"
薄れゆく意識の中で聞こえた私の名前を呼ぶ優しい声。懐かしいのに何処と無く寂しい声、一体誰が私を呼んでいるの?分からない。私の視界は真っ暗闇の世界だけが映り込んでいる。あぁ、この世界が光に包まれれば何もかも見えるのに。誰かこの世界に光を。眩い光をこの世界に。
『…………』
(今のは………夢?)
切りの良い所でぱちっと目が覚めた。不思議な感覚に陥る夢だった、懐かしい気持ちへと誘われる…そんな夢。未だ朦朧とする頭を必死にフル回転させつつ、辺りを見渡してみる。視界に飛び込んで来たのは何処までも広くて深い真っ暗闇の世界だった。これはまさか………夢?私は夢と現実の区別が一切出来ていないのだろうか?そもそも何故私は此処に居るのだろう?何をしていたんだっけ?何か目的があった気がするんだけれど…うーん、はっきりしない。
「ここは……」
「ヒュードラーが潜伏した街に似てますね」
「この街は幻影なんでしょうか?」何処からともなく聞こえて来た会話のやり取り。聞き覚えのある声。
「おまえとヒュードラーの潜在意識さ」
「メデューサはこの街のイメージを持っていないですからね」
「おまえは鏡の前でむなしく素振りをしているだけなのさ」
「ならば鏡ごと砕いてみせる!」
相変わらず活気溢れる態度に自然と笑みが零れてしまう。“勝利"と言う名の二文字を確信し、決して諦めずに今も尚神器を振るって戦っている、人々に平和を齎す為に光を与える為に。
そうだ、忘れるなんて出来ない。私も少しでも力になろうと神器を振るって戦っていたのだから。私にも何か出来る事がある筈、自分を信じてこの場所へと出向いた。過去の自分と決別を、そんな祈りにも似た願いすら込めて。
『ピット君!頑張って!!』
「セラちゃん?!」
『絶対に………負けないで!!!』
「うん」
ありったけの思いを戦っている彼に向けてエールを送る。届かなくたって良い、気付かなくたって良い。只、伝えたかった。嘘偽りのない私の思いを。
「セラ、やはりおまえはピットやパルテナの味方なんだな」
『違うわ!メデューサ!誰の味方とかそんなの関係ない!私はピット君に負けてほしくないから言ったまでよ!!』
「それはつまりこのメデューサが倒される未来を望んでいるという事だろう?」
『!!』
嘘偽りのない思いをピット君に伝えたつもりで居たが行き着く答えは結果的に“メデューサ討伐"へと繋がってしまう。彼女に指摘された直後はっとした表情を浮かべ、反射行動として下を俯かせてしまった。出来るのならばこの世界で誰とも戦いたくはない。でもそれは単なる綺麗事にしか過ぎなくて、現実は勝利と言う二文字を勝ち取り、大切なものを守らなければならない。どうしてこうも行き違ってしまうのだろう。
『でも、出来るのならば貴女と戦いたくはない』
「……同じだな」
『えっ?』
「セラ、おまえが私の元に居て人間どもを石に変えていた頃、いつも今みたいに悲しい顔をしていたな。おまえの力を横取りするかもしれない奴等を排除していたと言うのに一番望んでいなかったのはおまえ自身だった」
『そう、だったのね』
なかなか見つからない答えを探す中で“あの時と同じだ"と話される私とメデューサとの間にあったらしい過去。成り行きではあるものの、初めて張本人の口から聞くエピソードは哀愁が漂っているが何だか安心してしまった。メデューサに仕えていた前後の記憶が存在しない私は、当然の如く第三者から聞く情報だけが頼りだ。正直な心境を言えば、人々を石に変えていたメデューサを止められなかったのかと悔いられる。それでもメデューサには必死に訴えていたのだと言う事実を知り、不謹慎だと分かっていながらほっと安堵してしまった。
「セラ、おまえは何も変わっていないんだな」
『メデューサ、貴女は何もかも変わってしまったようね』
会話終了を知らせる暫しの沈黙からの睨み合い。互いに一歩も引かない真っ暗闇内での言わば無言の戦闘。“蛇に見込まれた蛙"なんて言葉を良く聞くが、今まさにその状況だったとしても不思議と“恐怖心"は自分の中にはなかった。寧ろ余裕を持っていると思う。こんなにも冷静で居られるのは今も尚、私達が住む世界に光を与えようと必死になって戦ってくれている彼のお陰。
「ヒュードラー!おまえが勝てる確率など万にひとつありはしない!冥府の海に帰るがいい!!」
「気合入ってますね、ピット」
「当然です!メデューサを倒せばみんなが助かるんですから!!」
・・・
『………』
“セラ…セラ"
薄れゆく意識の中で聞こえた私の名前を呼ぶ優しい声。懐かしいのに何処と無く寂しい声、一体誰が私を呼んでいるの?分からない。私の視界は真っ暗闇の世界だけが映り込んでいる。あぁ、この世界が光に包まれれば何もかも見えるのに。誰かこの世界に光を。眩い光をこの世界に。
『…………』
(今のは………夢?)
切りの良い所でぱちっと目が覚めた。不思議な感覚に陥る夢だった、懐かしい気持ちへと誘われる…そんな夢。未だ朦朧とする頭を必死にフル回転させつつ、辺りを見渡してみる。視界に飛び込んで来たのは何処までも広くて深い真っ暗闇の世界だった。これはまさか………夢?私は夢と現実の区別が一切出来ていないのだろうか?そもそも何故私は此処に居るのだろう?何をしていたんだっけ?何か目的があった気がするんだけれど…うーん、はっきりしない。
「ここは……」
「ヒュードラーが潜伏した街に似てますね」
「この街は幻影なんでしょうか?」何処からともなく聞こえて来た会話のやり取り。聞き覚えのある声。
「おまえとヒュードラーの潜在意識さ」
「メデューサはこの街のイメージを持っていないですからね」
「おまえは鏡の前でむなしく素振りをしているだけなのさ」
「ならば鏡ごと砕いてみせる!」
相変わらず活気溢れる態度に自然と笑みが零れてしまう。“勝利"と言う名の二文字を確信し、決して諦めずに今も尚神器を振るって戦っている、人々に平和を齎す為に光を与える為に。
そうだ、忘れるなんて出来ない。私も少しでも力になろうと神器を振るって戦っていたのだから。私にも何か出来る事がある筈、自分を信じてこの場所へと出向いた。過去の自分と決別を、そんな祈りにも似た願いすら込めて。
『ピット君!頑張って!!』
「セラちゃん?!」
『絶対に………負けないで!!!』
「うん」
ありったけの思いを戦っている彼に向けてエールを送る。届かなくたって良い、気付かなくたって良い。只、伝えたかった。嘘偽りのない私の思いを。
「セラ、やはりおまえはピットやパルテナの味方なんだな」
『違うわ!メデューサ!誰の味方とかそんなの関係ない!私はピット君に負けてほしくないから言ったまでよ!!』
「それはつまりこのメデューサが倒される未来を望んでいるという事だろう?」
『!!』
嘘偽りのない思いをピット君に伝えたつもりで居たが行き着く答えは結果的に“メデューサ討伐"へと繋がってしまう。彼女に指摘された直後はっとした表情を浮かべ、反射行動として下を俯かせてしまった。出来るのならばこの世界で誰とも戦いたくはない。でもそれは単なる綺麗事にしか過ぎなくて、現実は勝利と言う二文字を勝ち取り、大切なものを守らなければならない。どうしてこうも行き違ってしまうのだろう。
『でも、出来るのならば貴女と戦いたくはない』
「……同じだな」
『えっ?』
「セラ、おまえが私の元に居て人間どもを石に変えていた頃、いつも今みたいに悲しい顔をしていたな。おまえの力を横取りするかもしれない奴等を排除していたと言うのに一番望んでいなかったのはおまえ自身だった」
『そう、だったのね』
なかなか見つからない答えを探す中で“あの時と同じだ"と話される私とメデューサとの間にあったらしい過去。成り行きではあるものの、初めて張本人の口から聞くエピソードは哀愁が漂っているが何だか安心してしまった。メデューサに仕えていた前後の記憶が存在しない私は、当然の如く第三者から聞く情報だけが頼りだ。正直な心境を言えば、人々を石に変えていたメデューサを止められなかったのかと悔いられる。それでもメデューサには必死に訴えていたのだと言う事実を知り、不謹慎だと分かっていながらほっと安堵してしまった。
「セラ、おまえは何も変わっていないんだな」
『メデューサ、貴女は何もかも変わってしまったようね』
会話終了を知らせる暫しの沈黙からの睨み合い。互いに一歩も引かない真っ暗闇内での言わば無言の戦闘。“蛇に見込まれた蛙"なんて言葉を良く聞くが、今まさにその状況だったとしても不思議と“恐怖心"は自分の中にはなかった。寧ろ余裕を持っていると思う。こんなにも冷静で居られるのは今も尚、私達が住む世界に光を与えようと必死になって戦ってくれている彼のお陰。
「ヒュードラー!おまえが勝てる確率など万にひとつありはしない!冥府の海に帰るがいい!!」
「気合入ってますね、ピット」
「当然です!メデューサを倒せばみんなが助かるんですから!!」