第8章 天かける星賊船(前編)
セラ
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冥府の女王メデューサを討伐する目的を果たす為の第一歩として、私達はメデューサが根城とする冥府界に突入する手段“冥府の通行手形”を手に入れるミッションを掲げ“冥府の通行手形”を所持しているメデューサの右腕、死を司る神タナトスを討伐しに彼が住む“海底神殿”へと出向いた。メデューサの右腕と言われる程の実力の持ち主ならば25年前何故私が幽閉されたのか、私の中に眠る力がどういうものなのか知っているかもしれない。その考えに至った私は、タナトスに色々問い掛けようと試みた。彼が知っている事柄を全て聞き出してみようと思い立ったのだ。どんなに手厳しい真実が待ち受けていようとも、私自身の事なのだからちゃんと受け入れて耳に留めようと思った。けれど、現実は思った以上に残酷で気持ちの収拾が付かなくなる程にショックが大きく冷静な判断が出来なくなってしまった。“私は25年よりも更に前、メデューサに側近していた唯一の天使”だって事、“私の中に眠る世界を破滅へと導く力は私の命と繋がっている”事、“私の力は一度発動されている”事、“次にこの力を発動させれば世界は破滅してしまう”事、そして…例え記憶がなくとも私には…人間達を襲うメデューサを止められなかった罪が存在する事実を知った。
『(ピット君は自分を責めるなって言ってくれたけど、でも……)』
完全に私の所為じゃないって割り切れる筈もなかった。
「セラ?」
『!!パ、パルテナ様』
「こんな所で何をしているのかと思えば……。神器の手入れをしていたのですか」
『はい。じっとしていたくなくて……』
「私も神器の手入れ、手伝っても良いですか?」
『はい!』
実を言うと今私は、神器の手入れをしている真っ最中だった。理由は簡単、今からピット君と私はお勤めの為いつもの様に神器を手にゲートから飛び立つからだ。今回はそれ迄時間に余裕がある。“部屋で休息を取る”案も自分の中で候補に上がっていたけれど、ベッドに寝転がってみてもきっと余計な思考を巡らせるだけ。極力何も考えない様にしていた私は、ベッドに寝転がり休息を取る事よりも何か作業して気を紛らわせる方法を取った。それが神器の手入れだった。手を動かしていたら、余計な思考は巡らないだろうと高を括っていたのだ。だが、やはり効果は皆無だった。タナトスから聞かされた衝撃の事実、言葉一つ一つが耳に焼き付いて離れない…あの時の情景が脳裏に無限ループして来た。そんな折、ふと背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来る。声の主はパルテナ様。私の後ろ姿を見つけ、声を掛けてくれたらしい彼女は私が神器の手入れをしているのが分かったのか自分も手伝うと自ら買って出てくれた。せっかくの厚意を無駄にする理由は当たり前に存在していない。微笑を浮かべ首を縦に頷くと、パルテナ様も優しく微笑みかけてくれた。
『……』
「浮かない顔をしていますね。もしかして気にしているのですか?タナトスと話した事」
『……っ』
黙々と神器を手入れしていると、パルテナ様から突如図星を指されてしまう。タナトス戦から然程時間も経過していないが皆に心配掛けたくはなくて表情や態度に出さない様にしていた。言わばポーカーフェースを装っていたのだ。けれどパルテナ様にはタナトスと会話して聞いた“私の力”についての衝撃の事実を気にしていると簡単に見破られてしまう。返す言葉が見つからなくて押し黙る私。
「貴女の命と貴女の中に眠る力が繋がっているなんて、気にするなと言う方が無理な話ですね」
『それだけじゃありません!!私はメデューサに仕えていた唯一の天使だったのに、メデューサが人々に迫害を繰り返しているのを止められなかった!!記憶はありませんが私が止められてさえいれば誰も傷付かずに済んだんです!!』
「セラ……」
パルテナ様が私に問う言葉の一つ一つに不正解が存在しなかった。全部が全部私が抱えている思い。神器の手入れをしていた私とパルテナ様だったが、話の内容に気を取られ作業が一旦中断する。気付けばいつの間にかパルテナ様の言葉に対して反論している私が居た。私の反論が耳に届いたパルテナ様の表情は、一瞬両目を大きく見開かせた後澄ましたものから悲しみに沈んだものへと変化する。分かっている…パルテナ様を困らせているのは。彼女の表情から感じ取れる“悲しみ”。それは、私を思っての優しさから来るもの。パルテナ様は私が背負っている運命を嘆いてくれている…嫌という程私の心に伝わって来る。だが、伝えずには居られなかった。誰かにぶつけても悲しみや自己嫌悪、良心の呵責と言った複雑な感情が簡単に消え失せる訳じゃない。頭では分かっていても、誰かにぶつけて楽になりたかった。自分の運命からは逃れられないと分かっているからこその行動だった。その複雑な感情をパルテナ様にぶつけても困らせたとしても何も状況は変わらず時間だけが過ぎ去ってしまう等当に分かっていた。それでも誰かに…伝えたかった。
『(ピット君は自分を責めるなって言ってくれたけど、でも……)』
完全に私の所為じゃないって割り切れる筈もなかった。
「セラ?」
『!!パ、パルテナ様』
「こんな所で何をしているのかと思えば……。神器の手入れをしていたのですか」
『はい。じっとしていたくなくて……』
「私も神器の手入れ、手伝っても良いですか?」
『はい!』
実を言うと今私は、神器の手入れをしている真っ最中だった。理由は簡単、今からピット君と私はお勤めの為いつもの様に神器を手にゲートから飛び立つからだ。今回はそれ迄時間に余裕がある。“部屋で休息を取る”案も自分の中で候補に上がっていたけれど、ベッドに寝転がってみてもきっと余計な思考を巡らせるだけ。極力何も考えない様にしていた私は、ベッドに寝転がり休息を取る事よりも何か作業して気を紛らわせる方法を取った。それが神器の手入れだった。手を動かしていたら、余計な思考は巡らないだろうと高を括っていたのだ。だが、やはり効果は皆無だった。タナトスから聞かされた衝撃の事実、言葉一つ一つが耳に焼き付いて離れない…あの時の情景が脳裏に無限ループして来た。そんな折、ふと背後から私の名を呼ぶ声が聞こえて来る。声の主はパルテナ様。私の後ろ姿を見つけ、声を掛けてくれたらしい彼女は私が神器の手入れをしているのが分かったのか自分も手伝うと自ら買って出てくれた。せっかくの厚意を無駄にする理由は当たり前に存在していない。微笑を浮かべ首を縦に頷くと、パルテナ様も優しく微笑みかけてくれた。
『……』
「浮かない顔をしていますね。もしかして気にしているのですか?タナトスと話した事」
『……っ』
黙々と神器を手入れしていると、パルテナ様から突如図星を指されてしまう。タナトス戦から然程時間も経過していないが皆に心配掛けたくはなくて表情や態度に出さない様にしていた。言わばポーカーフェースを装っていたのだ。けれどパルテナ様にはタナトスと会話して聞いた“私の力”についての衝撃の事実を気にしていると簡単に見破られてしまう。返す言葉が見つからなくて押し黙る私。
「貴女の命と貴女の中に眠る力が繋がっているなんて、気にするなと言う方が無理な話ですね」
『それだけじゃありません!!私はメデューサに仕えていた唯一の天使だったのに、メデューサが人々に迫害を繰り返しているのを止められなかった!!記憶はありませんが私が止められてさえいれば誰も傷付かずに済んだんです!!』
「セラ……」
パルテナ様が私に問う言葉の一つ一つに不正解が存在しなかった。全部が全部私が抱えている思い。神器の手入れをしていた私とパルテナ様だったが、話の内容に気を取られ作業が一旦中断する。気付けばいつの間にかパルテナ様の言葉に対して反論している私が居た。私の反論が耳に届いたパルテナ様の表情は、一瞬両目を大きく見開かせた後澄ましたものから悲しみに沈んだものへと変化する。分かっている…パルテナ様を困らせているのは。彼女の表情から感じ取れる“悲しみ”。それは、私を思っての優しさから来るもの。パルテナ様は私が背負っている運命を嘆いてくれている…嫌という程私の心に伝わって来る。だが、伝えずには居られなかった。誰かにぶつけても悲しみや自己嫌悪、良心の呵責と言った複雑な感情が簡単に消え失せる訳じゃない。頭では分かっていても、誰かにぶつけて楽になりたかった。自分の運命からは逃れられないと分かっているからこその行動だった。その複雑な感情をパルテナ様にぶつけても困らせたとしても何も状況は変わらず時間だけが過ぎ去ってしまう等当に分かっていた。それでも誰かに…伝えたかった。
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