第7章 深海に潜む神殿(後編)
セラ
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「セラちゃん」
(僕はセラちゃんの為に何が出来るかな?)
衝撃の事実を聞いてしまった私の言葉は途切れ、そのまま口を噤んでしまった。驚きだけじゃない…悲しみや切なさが私自身を取り巻く感覚に陥っている。ピット君が心配そうな表情で私を見守ってくれているのは、気配で分かったけれど複雑な感情が取り巻く中で彼に向けて“大丈夫”だって言える程余裕もなかった。
暫し沈黙が続く。
「セラちゃん。メデューサ様もセラちゃんが戻ってくるのを待ってるんデスよ。わたしと一緒に戻りましょう。セラちゃんは冥府軍にいた方が幸せデスよ。フォッフォッフォ」
「セラ!!」
静寂に包まれていた空間の中で耳に届くタナトスの声。タナトスの声が聞こえたと思ったら、タナトスが私へと攻撃を仕掛けて来た。どうやら私を冥府軍へと送り込もうとしているらしい。当然と言えば当然かも。私は元々メデューサに側近していた唯一の天使らしいし、私の力欲しさだろう。そう言えば魔王ガイナスも、パンドーラもタナトス同様私を冥府軍に送り込もうと攻撃を仕掛けて来ていた。あの時と今は…きっと…同じ…
「セラちゃん!!」
『…ピット君…』
“回避しなくちゃ!”頭脳は只管全神経に向けて信号を出しているが、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいたピット君に一言“大丈夫”とも言えないぐらい余裕を無くしている私に回避出来る判断力は持ち合わせていなかった。私に向けて仕掛けられた攻撃は段々と接近して来る。一刻の猶予もない。
…私に残された選択肢はたった一つ。回避が出来ない程足が動かないのならば、攻撃を相殺させれば良いだけ。…真剣な眼差しで神器を構える。最後の悪足掻きと笑われるかもしれない。でも何もしないよりかはまだましに思えた。例え解決策が見つけられなくてもそれを見つけようと努力するのは許されると思った。だけど…
「ぐうぅ!!」
『…ピット君!!ど、どうして?!!』
タナトスからの攻撃が迫っていた間一髪の所でピット君は、私を抱えながら攻撃とは逆方向へと回避した。神器で迎え撃とうとしていた私とは裏腹の行動。彼のお陰で助かったが、納得が行かず彼に問い詰めてしまう。
「…前に言ったよね?セラちゃんは僕が守るって。セラちゃんがどんなに冥府軍に行こうとしたって僕が止める。セラちゃんは、ずっとずっとパルテナ軍親衛副隊長だよ」
『ピット君…』
「セラ。貴女は確かに元々メデューサに仕えていた天使でした。でもそれは過去の事。今は私達の大切な仲間です。私がセラを手放す筈ないじゃありませんか。貴女の作る料理は世界一なんですから」
『…パルテナ様』
“パルテナ様。料理の話ですか?”“いえいえ。違いますよ”私の傍らでそんな会話を繰り広げているピット君とパルテナ様、私の凍てついた心は瞬時に温かくなる。私が迷い、苦しみ、立ち止まった時二人はいつも私を励ましてくれた…今みたいに。…本当の気持ちを言うと、途轍も無く怖い。何時私が力を使ってしまうのか…もしかしたら無意識にその力を使ってしまうかもしれない。私の命は勿論、ピット君とパルテナ様の命だって危ないのに…世界、人間達の存亡だって危うくなるのに…どうして…どうしてそんなに……優しいの?
『ピット君もパルテナ様も全然分かってない!!私の力は一度発動されてるんだよ?!今度は何時発動するか分からないの!!私と一緒に居ればピット君とパルテナ様の命も危うくなるかもしれないんだよ?!!』
「だからって、セラちゃんを一人にする理由にはならないよ」
『!!』
「例えセラが望んでも断固拒否するでしょう。ピットなら」
「それはパルテナ様もでしょう?」
「ええ。勿論」
「セラ、私達は既に覚悟が出来ています。だから、セラが私達の身を案じて自ら離れる事はしなくて良いのですよ?」
パルテナ様の言葉を聞いた私ははっとする。ピット君に無意識にも視線を移すと、力強く首を縦に頷いてくれた。何時力が発動されるかも分からないのに二人は私の傍から離れないと断言する。それは然も当たり前の様に。驚きを占めていたが、一瞬にして喜びの感情に支配される。私の力について真実が語られて現実の厳しさを知った。受け止めると覚悟をしておきながら、何度も何度も躓いた。衝撃的だった筈なのにも関わらず二人の答えは揺るがなかった。私よりもずっとピット君とパルテナ様は断然強かった。
『ピット君!パルテナ様!私の中に宿るこの力は、明日にでも発動されてしまうかもしれない。でも私は、やっぱりパルテナ軍に居たい!!この気持ちに嘘はありません!!力が発動して私の命が危ないならずっとこの力と生きて立ち向かって行きます!!だって…私は…パルテナ軍親衛副隊長だから!!!!』
神器の切っ先をタナトスへ真っ直ぐと向けて、二人に対して私の率直な思いを伝えた。二人が居てくれなかったら芽生えなかった思い。いつの間にか私達の絆は切っても切れない程強くなっていたみたい。それを証拠に私達の表情には一点の曇りもなかった。もう、私達の心を惑わせる障害は何もない。
(僕はセラちゃんの為に何が出来るかな?)
衝撃の事実を聞いてしまった私の言葉は途切れ、そのまま口を噤んでしまった。驚きだけじゃない…悲しみや切なさが私自身を取り巻く感覚に陥っている。ピット君が心配そうな表情で私を見守ってくれているのは、気配で分かったけれど複雑な感情が取り巻く中で彼に向けて“大丈夫”だって言える程余裕もなかった。
暫し沈黙が続く。
「セラちゃん。メデューサ様もセラちゃんが戻ってくるのを待ってるんデスよ。わたしと一緒に戻りましょう。セラちゃんは冥府軍にいた方が幸せデスよ。フォッフォッフォ」
「セラ!!」
静寂に包まれていた空間の中で耳に届くタナトスの声。タナトスの声が聞こえたと思ったら、タナトスが私へと攻撃を仕掛けて来た。どうやら私を冥府軍へと送り込もうとしているらしい。当然と言えば当然かも。私は元々メデューサに側近していた唯一の天使らしいし、私の力欲しさだろう。そう言えば魔王ガイナスも、パンドーラもタナトス同様私を冥府軍に送り込もうと攻撃を仕掛けて来ていた。あの時と今は…きっと…同じ…
「セラちゃん!!」
『…ピット君…』
“回避しなくちゃ!”頭脳は只管全神経に向けて信号を出しているが、心配そうな表情で私の顔を覗き込んでいたピット君に一言“大丈夫”とも言えないぐらい余裕を無くしている私に回避出来る判断力は持ち合わせていなかった。私に向けて仕掛けられた攻撃は段々と接近して来る。一刻の猶予もない。
…私に残された選択肢はたった一つ。回避が出来ない程足が動かないのならば、攻撃を相殺させれば良いだけ。…真剣な眼差しで神器を構える。最後の悪足掻きと笑われるかもしれない。でも何もしないよりかはまだましに思えた。例え解決策が見つけられなくてもそれを見つけようと努力するのは許されると思った。だけど…
「ぐうぅ!!」
『…ピット君!!ど、どうして?!!』
タナトスからの攻撃が迫っていた間一髪の所でピット君は、私を抱えながら攻撃とは逆方向へと回避した。神器で迎え撃とうとしていた私とは裏腹の行動。彼のお陰で助かったが、納得が行かず彼に問い詰めてしまう。
「…前に言ったよね?セラちゃんは僕が守るって。セラちゃんがどんなに冥府軍に行こうとしたって僕が止める。セラちゃんは、ずっとずっとパルテナ軍親衛副隊長だよ」
『ピット君…』
「セラ。貴女は確かに元々メデューサに仕えていた天使でした。でもそれは過去の事。今は私達の大切な仲間です。私がセラを手放す筈ないじゃありませんか。貴女の作る料理は世界一なんですから」
『…パルテナ様』
“パルテナ様。料理の話ですか?”“いえいえ。違いますよ”私の傍らでそんな会話を繰り広げているピット君とパルテナ様、私の凍てついた心は瞬時に温かくなる。私が迷い、苦しみ、立ち止まった時二人はいつも私を励ましてくれた…今みたいに。…本当の気持ちを言うと、途轍も無く怖い。何時私が力を使ってしまうのか…もしかしたら無意識にその力を使ってしまうかもしれない。私の命は勿論、ピット君とパルテナ様の命だって危ないのに…世界、人間達の存亡だって危うくなるのに…どうして…どうしてそんなに……優しいの?
『ピット君もパルテナ様も全然分かってない!!私の力は一度発動されてるんだよ?!今度は何時発動するか分からないの!!私と一緒に居ればピット君とパルテナ様の命も危うくなるかもしれないんだよ?!!』
「だからって、セラちゃんを一人にする理由にはならないよ」
『!!』
「例えセラが望んでも断固拒否するでしょう。ピットなら」
「それはパルテナ様もでしょう?」
「ええ。勿論」
「セラ、私達は既に覚悟が出来ています。だから、セラが私達の身を案じて自ら離れる事はしなくて良いのですよ?」
パルテナ様の言葉を聞いた私ははっとする。ピット君に無意識にも視線を移すと、力強く首を縦に頷いてくれた。何時力が発動されるかも分からないのに二人は私の傍から離れないと断言する。それは然も当たり前の様に。驚きを占めていたが、一瞬にして喜びの感情に支配される。私の力について真実が語られて現実の厳しさを知った。受け止めると覚悟をしておきながら、何度も何度も躓いた。衝撃的だった筈なのにも関わらず二人の答えは揺るがなかった。私よりもずっとピット君とパルテナ様は断然強かった。
『ピット君!パルテナ様!私の中に宿るこの力は、明日にでも発動されてしまうかもしれない。でも私は、やっぱりパルテナ軍に居たい!!この気持ちに嘘はありません!!力が発動して私の命が危ないならずっとこの力と生きて立ち向かって行きます!!だって…私は…パルテナ軍親衛副隊長だから!!!!』
神器の切っ先をタナトスへ真っ直ぐと向けて、二人に対して私の率直な思いを伝えた。二人が居てくれなかったら芽生えなかった思い。いつの間にか私達の絆は切っても切れない程強くなっていたみたい。それを証拠に私達の表情には一点の曇りもなかった。もう、私達の心を惑わせる障害は何もない。