第7章 深海に潜む神殿(前編)
セラ
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「こんな事も出来るなんてパルテナ様は凄いなぁ」
『ね~?本当尊敬しちゃうなぁ』
「当然の事です。えっへん」
「コラコラ。ちょっと待ったらんかい」
「ん?」
『?…今誰かの声が…聞こえた様な…』
簡単に海を割ってしまったパルテナ様に対して、感嘆の声を上げていると何処からか声が聞こえて来る。顔を見合わせて首を傾げる素振りを見せる私とピット君。疑問に思っている私達を余所にパルテナ様は声の主の名前を呼ぶ。
「あら、ポセイドン様」
「パルテナの。嘘言っちゃあイカンぞ」
「ゴメンなさい。ちょっと遊んでみただけです」
「え?もしかして海を割ったのは……」
「このワシに決まっておろう」
「海底神殿を攻略する為、海の神たるポセイドン様にお願いしたんです」
「なるほど 道理で……」
“パルテナ様が、海を割った訳じゃなかったんだ…”パルテナ様の口車に乗せられて、てっきりそれが事実なのだと思い込んでいた。どうやら彼は、口振りからして多少彼女の冗談に気付いていた様子。私だけ信じていたみたい…それだけで置いてけぼり感。切なくなって来て、深い溜め息を吐いていたらピット君に“もしかしてセラちゃんは信じちゃってた?”なんて問われてしまう。出来るのならば聞かれたくなかった…これ以上置いてけぼりを喰らいたくなくて、ピット君に否定してみたけれどきっとパルテナ様は私が騙されていた事に気付いているだろう。
割れている海が垂直に、まるで滝の様に私達の脇で流れている。何とも不思議な空間…自分達が通過する部分だけ道が出来ていると言うのも奇っ怪な光景ではある。これも全て海の神ポセイドンのお陰。
「よしんば、他の誰かが海を割ろうとしてもワシが許さんよ。何なら今直ぐ割れた海を戻す事も出来るぞ?」
「わああっ!やめて下さい!やめて下さい!」
『割れた海を戻されたら、私達一溜まりもないよ!』
割れた海を戻されたら、私達は海の藻屑となってしまう。恐ろしい想像を脳裏に過ぎらせ、背筋を凍らせる。脅しのつもりなのか何なのか、真意は分からないけれどポセイドンの機嫌一つで私達の身が最悪の事態になりうる可能性があると言うのは良く分かった。向かって来る冥府軍を浄化しながら、ピット君と目と目を合わせ苦笑いを浮かべる私。
「更に下りますよ」
パルテナ様の言葉に首を縦に頷き、海底へと向かう為更に深い所へと入って行く。物淋しくも感じる薄暗い海の中、私達はその間を飛行する。表面はきらきらと青色に輝いている様に見えていたけれど、海の底はどちらかと言えば闇…悲しみと寂しさが漂っている様に見えた。そう見えるのは、私だけかもしれないけど。
「ワシとしては、パルテナを応援しておる」
「恐れいります。ポセイドン様」
「しゃしゃり出おって冥府軍め。地上や天界に手を広げ過ぎなんじゃ。まあ、こちとらには関係ないがあんまり面白くはない。とことん迄戦ってみよ、パルテナよ。期待しておるぞ」
「必ずやお応えしてみせましょう」
「僕達もやりますよ!!」
『うん!行くわよー!!』
改めてやる気を出しながら、神器を強く握りしめて敵を一掃する。数に限りなく向かって来るのを見ると、相当な数の冥府軍が入り込んでいるのが分かる。やっぱり死を司る神様だからかな…?一体どんな神様なんだろう?25年前、私はメデューサの手に寄って捕われていたから当時メデューサの髪の毛になっていたタナトスを知る筈がないのだけど、心の何処かで引っ掛かっている。面識がある訳がないのに、私はタナトスを見た事がある様な気がしている。
………私は……タナトスを……知っている……?
(わたしと一緒に来てもらいますよ。良いデスね?セラちゃん)
『?!!(今のは…私の記憶…?)』
一瞬フラッシュバックする25年前の映像。25年前、私がメデューサに捕われる前の記憶。平和だったエンジェランドに突如闇が覆ったあの時、あの瞬間、メデューサの手で次々と皆が石に変えられていく無惨な光景…草花や木々は枯れ果てていく悲しい現状。スローモーションの様に流れていたあの時間、片時も忘れた事等なかったのに私は何かを忘れている。どうしてパルテナ軍に所属していない私が、メデューサの目に留まったのだろう?私の力の存在を知ったのは分かるけれど、メデューサに直接襲撃された記憶は存在しないし、何者かが私に接近した記憶しかない。以前、ヒュードラー戦に置いて記憶の断片を思い出せたけれど変な口調をしている人物が私を攫っていった。それが…タナトス…?先程思い出せた新たな記憶も変な口調が特徴的だ。
『(…私は何を思い出せないの…?)』
「…ちゃん!……セラ…ちゃん!…セラちゃん……!セラちゃん!!」
『!えっ!何?』
「何?じゃないよ。どうしたの?難しい顔をして」
『私、難しい顔してた?』
「うん。思い切り」
『何でもないの!ちょっと考え事してただけ!』
隣で魔物達を浄化していたピット君が、私の顔を覗き込みつつ私の名を呼びながら心配そうな表情を浮かべていた。彼が言うには、私は難しい顔をしていたらしい…全く持って気が付かなかった。焦りながらも、彼に心配を掛けたくはないから適当に誤魔化してみる。私が何も話してくれないと分かったのか、不服そうな顔をしながら前に向き直した。安堵の溜め息を吐く私、ピット君に話せる訳がない。彼に話してしまえば、きっと私の身を案じて私の分の負担さえ背負おうとしてしまうだろう。それだけは何としてでも避けたかった。それに、まだ私は記憶の一欠片と思われる部分を思い出しただけ。確証も存在していない。そんな中で好い加減な発言は出来なかった。
『(確かめてみよう。タナトスに会って…25年前、私の身に何があったのか聞き出さなくちゃ!!)』
『ね~?本当尊敬しちゃうなぁ』
「当然の事です。えっへん」
「コラコラ。ちょっと待ったらんかい」
「ん?」
『?…今誰かの声が…聞こえた様な…』
簡単に海を割ってしまったパルテナ様に対して、感嘆の声を上げていると何処からか声が聞こえて来る。顔を見合わせて首を傾げる素振りを見せる私とピット君。疑問に思っている私達を余所にパルテナ様は声の主の名前を呼ぶ。
「あら、ポセイドン様」
「パルテナの。嘘言っちゃあイカンぞ」
「ゴメンなさい。ちょっと遊んでみただけです」
「え?もしかして海を割ったのは……」
「このワシに決まっておろう」
「海底神殿を攻略する為、海の神たるポセイドン様にお願いしたんです」
「なるほど 道理で……」
“パルテナ様が、海を割った訳じゃなかったんだ…”パルテナ様の口車に乗せられて、てっきりそれが事実なのだと思い込んでいた。どうやら彼は、口振りからして多少彼女の冗談に気付いていた様子。私だけ信じていたみたい…それだけで置いてけぼり感。切なくなって来て、深い溜め息を吐いていたらピット君に“もしかしてセラちゃんは信じちゃってた?”なんて問われてしまう。出来るのならば聞かれたくなかった…これ以上置いてけぼりを喰らいたくなくて、ピット君に否定してみたけれどきっとパルテナ様は私が騙されていた事に気付いているだろう。
割れている海が垂直に、まるで滝の様に私達の脇で流れている。何とも不思議な空間…自分達が通過する部分だけ道が出来ていると言うのも奇っ怪な光景ではある。これも全て海の神ポセイドンのお陰。
「よしんば、他の誰かが海を割ろうとしてもワシが許さんよ。何なら今直ぐ割れた海を戻す事も出来るぞ?」
「わああっ!やめて下さい!やめて下さい!」
『割れた海を戻されたら、私達一溜まりもないよ!』
割れた海を戻されたら、私達は海の藻屑となってしまう。恐ろしい想像を脳裏に過ぎらせ、背筋を凍らせる。脅しのつもりなのか何なのか、真意は分からないけれどポセイドンの機嫌一つで私達の身が最悪の事態になりうる可能性があると言うのは良く分かった。向かって来る冥府軍を浄化しながら、ピット君と目と目を合わせ苦笑いを浮かべる私。
「更に下りますよ」
パルテナ様の言葉に首を縦に頷き、海底へと向かう為更に深い所へと入って行く。物淋しくも感じる薄暗い海の中、私達はその間を飛行する。表面はきらきらと青色に輝いている様に見えていたけれど、海の底はどちらかと言えば闇…悲しみと寂しさが漂っている様に見えた。そう見えるのは、私だけかもしれないけど。
「ワシとしては、パルテナを応援しておる」
「恐れいります。ポセイドン様」
「しゃしゃり出おって冥府軍め。地上や天界に手を広げ過ぎなんじゃ。まあ、こちとらには関係ないがあんまり面白くはない。とことん迄戦ってみよ、パルテナよ。期待しておるぞ」
「必ずやお応えしてみせましょう」
「僕達もやりますよ!!」
『うん!行くわよー!!』
改めてやる気を出しながら、神器を強く握りしめて敵を一掃する。数に限りなく向かって来るのを見ると、相当な数の冥府軍が入り込んでいるのが分かる。やっぱり死を司る神様だからかな…?一体どんな神様なんだろう?25年前、私はメデューサの手に寄って捕われていたから当時メデューサの髪の毛になっていたタナトスを知る筈がないのだけど、心の何処かで引っ掛かっている。面識がある訳がないのに、私はタナトスを見た事がある様な気がしている。
………私は……タナトスを……知っている……?
(わたしと一緒に来てもらいますよ。良いデスね?セラちゃん)
『?!!(今のは…私の記憶…?)』
一瞬フラッシュバックする25年前の映像。25年前、私がメデューサに捕われる前の記憶。平和だったエンジェランドに突如闇が覆ったあの時、あの瞬間、メデューサの手で次々と皆が石に変えられていく無惨な光景…草花や木々は枯れ果てていく悲しい現状。スローモーションの様に流れていたあの時間、片時も忘れた事等なかったのに私は何かを忘れている。どうしてパルテナ軍に所属していない私が、メデューサの目に留まったのだろう?私の力の存在を知ったのは分かるけれど、メデューサに直接襲撃された記憶は存在しないし、何者かが私に接近した記憶しかない。以前、ヒュードラー戦に置いて記憶の断片を思い出せたけれど変な口調をしている人物が私を攫っていった。それが…タナトス…?先程思い出せた新たな記憶も変な口調が特徴的だ。
『(…私は何を思い出せないの…?)』
「…ちゃん!……セラ…ちゃん!…セラちゃん……!セラちゃん!!」
『!えっ!何?』
「何?じゃないよ。どうしたの?難しい顔をして」
『私、難しい顔してた?』
「うん。思い切り」
『何でもないの!ちょっと考え事してただけ!』
隣で魔物達を浄化していたピット君が、私の顔を覗き込みつつ私の名を呼びながら心配そうな表情を浮かべていた。彼が言うには、私は難しい顔をしていたらしい…全く持って気が付かなかった。焦りながらも、彼に心配を掛けたくはないから適当に誤魔化してみる。私が何も話してくれないと分かったのか、不服そうな顔をしながら前に向き直した。安堵の溜め息を吐く私、ピット君に話せる訳がない。彼に話してしまえば、きっと私の身を案じて私の分の負担さえ背負おうとしてしまうだろう。それだけは何としてでも避けたかった。それに、まだ私は記憶の一欠片と思われる部分を思い出しただけ。確証も存在していない。そんな中で好い加減な発言は出来なかった。
『(確かめてみよう。タナトスに会って…25年前、私の身に何があったのか聞き出さなくちゃ!!)』