第5章 パンドーラの罠(後編)
セラ
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「あわわ、どうなってるんだ?!」
「タイミングを見計らって、ジャンプで踏み切りなさい」
『下手したら落ちちゃうって寸法ね』
ぐるぐると円を描いている通路を見受けた。一筋縄では行かないトラップ。私とピット君はパルテナ様の助言通り、ジャンプで踏み切り通路を進む。何時落ちてしまうか…ピット君が気掛かりで仕方ない。私は仮に落ちてしまっても飛行出来るから問題ないのだ。けれどピット君が万が一此処から落下してしまったら、全力で私が助けなければいけない。彼が落ちない事を只、祈る。
「どう?楽しンでる?」
「パンドーラって、こんなのが好きなのかしら……」
「ちょっとォ、聞こえてるわよォ。人ン家をどんな風に飾ったって勝手じゃないよォ」
『正直この趣味、理解出来ません』
自分の家を罠だらけにするってどうなの?!なんて思うもそれを言葉にはしなかった。言葉にした所で私が理解出来る範囲ではないと判断したから。多分私は一生彼女を理解出来ないだろう。
「あの先の黄色い床、文字になっているみたいですね」
『えーっと…?』
「P・A・N・D・O・R・A……。こんな所で自己紹介ですか?」
「恥ずかしいなー」
「ふン。真似出来ないでしょォ?このテイスト」
「はい。無理ですね、色んな意味で」
『(パルテナ様!言い切ったわ!)』
動く通路でちゃっかり自己紹介してしまう災厄の邪神。パルテナ様にばっさり切られているのに、全く持って動じていない。神経が図太いのか、そうではないのか、知る由もないけれど少しパンドーラに同情してしまった。
「こ…これは!出口が遠退く!!」
「永遠に辿り着けないかもしれないねェ」
『あぁ!もう!ピット君、捕まって!私の手を離さないで!』
「えっ?えええぇ?!セラちゃん?!それ良いの?!」
「ちょっとォ。飛んで出口に着くって反則じゃないのかい」
『別に。飛んだ訳じゃなくて少し走るスピードを速めただけよ。飛ばずに走ってたもの、反則じゃないわよね?』
「……まぁ、それなら良いけどォ」
なかなか出口に辿り着けない道。走っても走っても前に進めた様には見えなくて、パンドーラが存在する間に行きたい者としては、この罠も最早妨害している様にしか思えない。何も真面目にトラップを潜り抜ける必要はない。その思考が浮かんだ直後、ピット君の手を引いて羽根を広げていた。広げていたとしても飛ぶスピードを利用して駆け抜けただけ。反則行為じゃない、私の主張にパンドーラは納得したと言わんばかりの言葉を呟いていた。
「さすがです。セラ」
「セラちゃん…何か、怖い…」
…ピット君の呟きは聞かなかった事にする。
「次はジャンプ台の間か!」
「トランポリンとかちょっと良いなァって思ってねェ」
「でも貴女は、ジャンプ台なんて使えそうにないですよね?」
「ま、暇な時は侵入者でも飛ばせば良いしねェ。最も、此処迄入り込んだのはピット、セラあんたらが初めてだよォ」
『ふぅん、そうなんだ』
「新記録樹立と共にパンドーラ、お前を討つ!」
「あーねェ。精々心待ちにしてるよォ」
冥府の魔物がジャンプしているのが見えた。次の扉を潜るにはジャンプしながら進まなければならない様だ。溜め息を吐きながらジャンプ台の上に乗る。ジャンプしながら敵を討たなければならないのは中々骨が折れる。けれど、ジャンプしながら扉へ向かうのは悪くないかもしれないと不覚にも思ってしまう。…楽しいかも…。
「此処はビートルのサーキット場ですかね?せっかくだから練習しときましょうか」
パルテナ様の言葉に頷き、私達はまたしても二台存在するビートルにそれぞれ乗り込んだ。さっきビートルに乗った際、ばっちりコツを掴んだのか、すいすいサーキット場を走行する。こちらに突っ込んで来る魔物を浄化しながら時計回りにビートルを運転させると突然先に進める坂が静かに出現する。何が起こったのか…目を見張る私。
「スタート地点に坂が出現した様です。昇れば先に進めますよ」
「親切だなぁ。こういう事しなければ無事で居られるのに」
『同感ね』
「野暮な事言ってんじゃないよォ!ボスとしての嗜みぐらい守るわよォ」
「言わない約束って事ですね」
出現した坂をビートルで走行して昇り切る。ビートルから降りて向かうは次の扉。感覚だけど分かる…パンドーラが居る場所へもう直ぐそこ迄来ている。次の間へ足を踏み入れると、異様な光景が目の前に広がった。暗闇で全く見えない奈落の底。道という道が存在していない。
「あれ?行き止まり?」
「そうそう。引き返しなよォ」
「いえいえ。これも騙しですよ。見えない床があります」
『見えない、床…?』
「ちっ、教えるなよなァ」
「下の方を撃って行きなさい。着弾したら、そこに床があります」
「なるほど!分かりました!」
引き返そうとした刹那、パルテナ様がこれも騙しだと助言をくれた。試しに助言通りに床に向けて射撃してみると、見えなかった筈の床が一瞬姿を現した。着弾すれば床が姿を現してくれるが、またしても落下する可能性がある。慎重に行かなければならないらしい。ピット君が射撃を繰り返し、進むべき道を誘導。私は向かって来る冥府軍を立ち所に浄化、私達の連携プレーはなかなかのものだと主張したい程。そのお陰でスムーズに道を進めている、あっという間に次の間へと進む扉の前に立ち尽くした。
「パンドーラはこの先です」
パルテナ様の声に私とピット君は目と目を合わせ、首を縦に頷いた。意を決して扉の中に入る。此処からが本番だと…私の神経が小さく囁いた。
「タイミングを見計らって、ジャンプで踏み切りなさい」
『下手したら落ちちゃうって寸法ね』
ぐるぐると円を描いている通路を見受けた。一筋縄では行かないトラップ。私とピット君はパルテナ様の助言通り、ジャンプで踏み切り通路を進む。何時落ちてしまうか…ピット君が気掛かりで仕方ない。私は仮に落ちてしまっても飛行出来るから問題ないのだ。けれどピット君が万が一此処から落下してしまったら、全力で私が助けなければいけない。彼が落ちない事を只、祈る。
「どう?楽しンでる?」
「パンドーラって、こんなのが好きなのかしら……」
「ちょっとォ、聞こえてるわよォ。人ン家をどんな風に飾ったって勝手じゃないよォ」
『正直この趣味、理解出来ません』
自分の家を罠だらけにするってどうなの?!なんて思うもそれを言葉にはしなかった。言葉にした所で私が理解出来る範囲ではないと判断したから。多分私は一生彼女を理解出来ないだろう。
「あの先の黄色い床、文字になっているみたいですね」
『えーっと…?』
「P・A・N・D・O・R・A……。こんな所で自己紹介ですか?」
「恥ずかしいなー」
「ふン。真似出来ないでしょォ?このテイスト」
「はい。無理ですね、色んな意味で」
『(パルテナ様!言い切ったわ!)』
動く通路でちゃっかり自己紹介してしまう災厄の邪神。パルテナ様にばっさり切られているのに、全く持って動じていない。神経が図太いのか、そうではないのか、知る由もないけれど少しパンドーラに同情してしまった。
「こ…これは!出口が遠退く!!」
「永遠に辿り着けないかもしれないねェ」
『あぁ!もう!ピット君、捕まって!私の手を離さないで!』
「えっ?えええぇ?!セラちゃん?!それ良いの?!」
「ちょっとォ。飛んで出口に着くって反則じゃないのかい」
『別に。飛んだ訳じゃなくて少し走るスピードを速めただけよ。飛ばずに走ってたもの、反則じゃないわよね?』
「……まぁ、それなら良いけどォ」
なかなか出口に辿り着けない道。走っても走っても前に進めた様には見えなくて、パンドーラが存在する間に行きたい者としては、この罠も最早妨害している様にしか思えない。何も真面目にトラップを潜り抜ける必要はない。その思考が浮かんだ直後、ピット君の手を引いて羽根を広げていた。広げていたとしても飛ぶスピードを利用して駆け抜けただけ。反則行為じゃない、私の主張にパンドーラは納得したと言わんばかりの言葉を呟いていた。
「さすがです。セラ」
「セラちゃん…何か、怖い…」
…ピット君の呟きは聞かなかった事にする。
「次はジャンプ台の間か!」
「トランポリンとかちょっと良いなァって思ってねェ」
「でも貴女は、ジャンプ台なんて使えそうにないですよね?」
「ま、暇な時は侵入者でも飛ばせば良いしねェ。最も、此処迄入り込んだのはピット、セラあんたらが初めてだよォ」
『ふぅん、そうなんだ』
「新記録樹立と共にパンドーラ、お前を討つ!」
「あーねェ。精々心待ちにしてるよォ」
冥府の魔物がジャンプしているのが見えた。次の扉を潜るにはジャンプしながら進まなければならない様だ。溜め息を吐きながらジャンプ台の上に乗る。ジャンプしながら敵を討たなければならないのは中々骨が折れる。けれど、ジャンプしながら扉へ向かうのは悪くないかもしれないと不覚にも思ってしまう。…楽しいかも…。
「此処はビートルのサーキット場ですかね?せっかくだから練習しときましょうか」
パルテナ様の言葉に頷き、私達はまたしても二台存在するビートルにそれぞれ乗り込んだ。さっきビートルに乗った際、ばっちりコツを掴んだのか、すいすいサーキット場を走行する。こちらに突っ込んで来る魔物を浄化しながら時計回りにビートルを運転させると突然先に進める坂が静かに出現する。何が起こったのか…目を見張る私。
「スタート地点に坂が出現した様です。昇れば先に進めますよ」
「親切だなぁ。こういう事しなければ無事で居られるのに」
『同感ね』
「野暮な事言ってんじゃないよォ!ボスとしての嗜みぐらい守るわよォ」
「言わない約束って事ですね」
出現した坂をビートルで走行して昇り切る。ビートルから降りて向かうは次の扉。感覚だけど分かる…パンドーラが居る場所へもう直ぐそこ迄来ている。次の間へ足を踏み入れると、異様な光景が目の前に広がった。暗闇で全く見えない奈落の底。道という道が存在していない。
「あれ?行き止まり?」
「そうそう。引き返しなよォ」
「いえいえ。これも騙しですよ。見えない床があります」
『見えない、床…?』
「ちっ、教えるなよなァ」
「下の方を撃って行きなさい。着弾したら、そこに床があります」
「なるほど!分かりました!」
引き返そうとした刹那、パルテナ様がこれも騙しだと助言をくれた。試しに助言通りに床に向けて射撃してみると、見えなかった筈の床が一瞬姿を現した。着弾すれば床が姿を現してくれるが、またしても落下する可能性がある。慎重に行かなければならないらしい。ピット君が射撃を繰り返し、進むべき道を誘導。私は向かって来る冥府軍を立ち所に浄化、私達の連携プレーはなかなかのものだと主張したい程。そのお陰でスムーズに道を進めている、あっという間に次の間へと進む扉の前に立ち尽くした。
「パンドーラはこの先です」
パルテナ様の声に私とピット君は目と目を合わせ、首を縦に頷いた。意を決して扉の中に入る。此処からが本番だと…私の神経が小さく囁いた。