「セラ、本当に…強くなりましたね。」

『ふふっありがとうございます。あっ！そうだ！パルテナ様！今日のご飯、麻婆茄子にしませんか？！』

「あらっ！良いですね！いっその事茄子料理にしちゃいましょうか、麻婆茄子に、茄子の天ぷら、茄子カレー」

『腕に頼を掛けて作ります！』

「…あれっ？！また僕忘れられてる？！」

『あっ戻った。』

ナスビ使いを倒したからか、ピット君がナス化から解放された。私とパルテナ様が今日のご飯のメニューについて会話に花を咲かせている頃、何の前触れもなく。…いつものピット君だ。見た所、多大なダメージを受けてはいないみたいだ…ほっと胸を撫で下ろす。私達が一体何の話をしていたのか頻りに問い詰める彼に、今日のご飯のメニューは茄子料理にしようという会話を繰り広げていたと返答を返せば、いつも賛成する彼が珍しく反対意見を述べてきた。理由は彼が茄子を食べられないから…今日初めてその事実を知った私は、大きく目を見開き驚愕の声を上げた。今まで茄子料理を食卓に出した前例が、記憶を脳裏に巡らせればなかったかもしれないけれど未だ彼に関して知らない事があるのかと思うと少々複雑になる。…複雑な感情に駆られている私の横でパルテナ様は静かに

「茄子の御新香もメニューに加えましょう。」

私達に言い放った。

…ナスビ使いを倒し、ピット君もいつもの姿に戻ったので死神が居ると思われる中心部を目指し、先に進む。因みに…今日のご飯メニューはピット君の反対意見に寄り、茄子料理は却下になった。次の扉を開けると、息を呑んでしまう空間が視界に広がった。


「うっ天井の鎌が殺る気満々ですね。」

『あんなのに八つ裂きにされたら一溜まりもないわね。』

「落ちない様に気をつけて。」


天井の鎌がリズム良く左右に動いている。見るからにやばいと自分の神経が囁いた、天井にぶら下がる鎌だけならば直ぐに問題は解決しただろう、パルテナ様が先程言った言動の意味だ。“落ちない様に”？一体何処から落下すると言うのか…顔だけ下を覗いてみる。天井の鎌を命の危険に晒されるトラップだが、落下すると酷い痛みが自身に襲い掛かって来るのは明らかだ。落ちるのも駄目、鎌を避けて道を通るしか手はない。

『でも私、飛べるから対して困らないのよね。』

「セラちゃん！酷い！」

「セラも言うようになりましたか。」

『あれっ？聞こえてた？』


簡単な話“飛べば良いじゃん！”無理に鎌が左右に揺れている道の上を好き好んで通らなくても飛んで行けばダメージは受けない、移動時間も短縮される。言わば一石二鳥、心中で呟いたつもりで居た独り言は思い切り声に出ていたらしい。飛べない天使というコンプレックスを抱えているピット君が項垂れている姿が目に映り、苦笑を浮かべる。項垂れてショックを受けているピット君は放っておいて先に進んでしまおうかな？思わず邪念が生まれた。


「はぁ…はぁ…死ぬかと思った…」

『ピット君、お疲れ様！』

「セラちゃん…（何だかセラちゃんの笑顔を見ていたら、一気に疲れが吹き飛んじゃった。）」

『よしっ！次行くわよ！！』

「早っ？！」


天井の鎌が左右に揺れる難関を何とか潜り抜け、ピット君は息を切らし最深部へと続く扉の前で膝を付いた。鎌に触れればダメージを喰らうのは一目瞭然、その衝撃で落下してしまえば更にダメージを受けてしまう…緊張感が走るのは仕方がない事だと思う。笑顔を浮かべつつ、ピット君に手を差し延べる…安心した表情を見せながら手をぎゅっと握りしめ、立ち上がり、私の顔を見つめる彼…気の性かほんのり頬が赤い様な。自分の勘違いかもしれないから彼の頬が赤い件に関しては一切触れないようにしよう。…邪念が生まれたりしたけれど、私達が別行動させ引き離す作戦に出られる可能性も否定出来ない為、ピット君と共に歩行を進める。さすれば次に進む道標、ジャンプ台がぽつんとど真ん中に存在していた。先に進む為の手段はこのジャンプ台しかない…最初罠かとも思ったけれどそうではないらしい。


「この先、死神が徘徊しています。見つかると子死神を呼ばれます、気をつけて。」

思い切りジャンプ台を踏み付け、辿り着いた先は運悪く死神が見回りしている何かの一室…何の目的で使用されている一室なのか見出だせないが、分かる事はパルテナ様の言った通り見つかるとワイワイ騒がれ、攻撃され、挙げ句、子死神を呼ばれ袋叩きにされてしまう事実。そんな攻撃を喰らったら私達は此の場所を攻略出来ずに終わってしまう…最悪な状況に立たされてしまうのは誰が見ても分かる。