“セラよ…貴様の力は我が冥府軍が頂く。”


“貴方の力が冥府軍に渡ってしまったら…きっと世界は…終わってしまう…”


25年前、私は冥府界の女神メデューサの手によって暗くて狭い場所に幽閉されていた。冥府界の女王の力は強大で、当時の私の力は非力すぎてとても敵う相手ではなかった。


…何故25年前、メデューサが私を幽閉したのか…分からず仕舞いではあったが、パルテナ様が幽閉され、私に真実（ほんとう）の事を話された時は驚愕の声を上げてしまったのを今でも覚えている。


メデューサが私を幽閉した理由は、私の中に潜在している世界を破滅へと導く力を利用する為…最初は確かに冗談だと思ったが真剣な表情をしながら話すパルテナ様に…“あぁ、これは事実なんだ”と思う他なくて。



「貴方は私が守ります。正確に言えば、私の部下が……なんですけどね？」

『部下…？』

「そう…ピットという少年で、飛べないんですけど結構強いんですよ？きっとメデューサも討伐してくれるでしょう。」

『ピット…君…』



あの時の私はまだ幼くて、事の重大さに気付いていなかったが、25年経過した今なら分かる気がする…世界が滅亡するとはどういう事なのか…。


冥府軍がエンジェランドを侵攻し、真っ暗な闇だけが覆われた。パルテナ様も幽閉され、冥府軍が優勢に見えたがパルテナ様が言った通り一人の天使がメデューサを討伐してくれた…たった一人の天使が…冥府界の女王を倒してくれたのだ。幽閉されていたパルテナ様も私も助けられ、エンジェランドには再び平和が戻った。


「セラちゃん！セラちゃーん！！」

『！あっ！ピット君！』

「もー探したよー！パルテナ様が呼んでたよ！何度呼んでも返事がないから、僕が言伝頼まれちゃった。」

『ごめーん！必死で特訓してたから…パルテナ様の声聞こえなくなっちゃって…』

「全く…」


溜め息混じりに呆れた表情を向けたピット君に対し、笑みを零してしまったのは私。
嬉しくないと言えば嘘になる、パルテナ様の命だとしてもここまで歩いて来てくれた彼の優しさがうんと伝わって来たからだ。
彼は絶対そんな事言ったりしないけれど、彼らしいと言えば彼らしい。