#30 卒業
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「先生がそんな事するって、1年のバレン
タインに何が起こったんだ?」
「それがさ、朝登校したらすでに下駄箱
にロッカー、机の中とパンパンにチョコ
詰まっててさ。休み時間になれば女子が
押し寄せて教室から出られないし、春が
とうとう嫌気さして昼から帰っちゃった
んだ。」
「クククッ、随分堂々とサボッたな。」
「…それで次の日担任から呼び出されて
怒られたから、俺も言い返した。あんな
状況で落ち着いて勉強できる訳がないっ
てな。俺にすれば迷惑でしかないから。」
「まぁ、異様な光景だったよね。なんか
女子の中で抜け駆け禁止みたいな暗黙の
ルールができてたみたい。それとみんな
で渡せば怖くない的な連帯感と。それも
1年だけじゃないしね。2、3年の先輩も
結構来てたらしくて。確実に校内一の数
もらってた。」
「聞けば聞くほどムカつく話だな。俺の
方がもっとすごかったけど。」
「そこで張り合うな。ってかお前は何日
も前からくれくれ言いまくってただろう
が。」
「義理もいいとこじゃん。」
「うっさい!数が全てだ!!」
「…下らない。」
「あっ、8組に春となっちゃん見っけ!
こうして見るといくら童顔のなっちゃん
でも少し老けたな。」
「老けたって…せめて大人になったって
言ってくれよ。」
「春はあんま変わんねーから、元々が年
の割に老け顔だったって事か。」
「…ほっとけ。」
「そう言えば、3年は同じクラスだって
嬉しそうに言ってたな。」
「うん。だからこの時が一番楽しかった。
進学しないでプロになるっていう目標も
見えて、やるべき事に一心に向かってる
って言うかさ。思えば朝から晩まで春と
いた気がする…」
「やだ、ラブラブ♡」
「…殴られたいか?」
「結構です…」
「しかし春は見事な仏頂面だな。」
「…おかしくもないのにどうやって笑え
というんだ。」
「なっちゃん笑ってんじゃん。他のヤツ
らも。」
「一応、笑ってくれって言われたらね。
カメラマンさんの後ろからみんなが変顔
とかして笑わせてくるんだよ。春は…誰
も通用しなかったって言うか…春のツボ
は難しいからさぁ。」
「元祖笑わない男。」
「それを言うならスライダーズのハリー
さんと蘭丸さんだろ。」
「しかし、春の学校生活だけは想像でき
ねーよな。」
「お前は簡単にできるけどね。でも春は
大人しいだけでごく普通の生徒だったよ。
授業中に当てられたら答えるし、日直も
掃除当番もするし、体育大会も文化祭も
協力するし。」
「…学生の本分は全うしたつもりだ。」
「学生の本分はハメを外す事だろ!」
『お前と一緒にするな。』
「でも懐かしいな…みんなどうしてるん
だろう。あっ、この子!唯一春と普通に
喋ってた女の子!なんで?」
「…一応、幼稚園からずっと一緒だった
から。」
「まぁまぁ可愛いじゃん。」
「幼馴染みか?」
「…ただの顔見知り。」
「14年同じ学校通って顔見知り程度なの
かよ!?」
「…同じクラスになった事は何度かある
が、別に一緒に遊んだりした訳ではない
し友達と言えるほど仲が良かった訳でも
ないから…顔見知りが妥当だと思う。」
「クククッ…春に友達と認めてもらえる
までの道のりはかなり長そうだな。」
「そ?俺ら一瞬だったじゃん。」
「…………。」
「コラコラ春、いつ友達になったっけ?
みたいな顔しない!」
「いや…『友達』と言うよりは『仲間』
じゃないか?友達よりは濃いと思う。」
「春~!ちゃんとその辺は理解できてん
じゃねーか!!お前、歌は上手くても人
付き合いは相当オンチだからな。」
「…どういう意味だ。」
「ま、春はガードがガチガチで、冬馬は
ユルユル。そんなところか?」
「処女とやりマンみたいに言うな!」
「似たようなもんだろ。」
アルバムのページはクラブ活動へ。
『軽音部』に写るのは俺と春と、顧問の
先生の4人だけ。
「本来ならここに俺と秋羅が写ってても
いいはずなのに!」
「活動はしてても、他校生だしね。でも
2人ともうちの学校でも有名人だったし、
せめて斜め上に顔写真を載せてくれても
良かったとは思う。」
「バンドやってんのは知られてたもんな。
こっちの学校からも結構ライブ見に来て
くれてたんだろ?」
「俺たちは学校でチケット売るのは禁止
されてたから、そっちほどじゃないけど
ね。友達とか知ってる子は来てくれたよ。
お前らのファンも結構いたし。」
「で?結局後輩はできたのかー?」
「うん、いたよ。15人くらいいたかな?
しかもそのほとんどが初心者で。お前ら
が来る火曜と金曜以外は教えてあげたり
もしてたよ。」
「よっ!部長!」
「…後輩を見てたら、初めて1曲通して
弾けた時の喜びとか合わせた時の楽しさ
を思い出す事ができた。いい経験だった
と思う。」