#30 卒業
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「で、卒業証書とアルバムの行方は?」
「ってか、制服とかジャージとか教科書
とか、俺いつ処分したんだろうな?それ
すら記憶ねーわ。教科書なんか教室から
持って出た事ねんだけど。」
「まぁね。教科書はお前に一番必要ない
ものだもんね。」
「…学校側が適当に処分してくれてるん
じゃないのか?」
その時、秋羅が盛大に溜め息をついた。
「お前、ホントに何も覚えてねぇのな。
全部借金のカタに売られたぞ。」
「「…借金のカタ?」」
「そう。コイツ、仲間内からメシ代やら
タバコ代やらジュース代やら、しょっ中
借りまくってたからな。卒業式終わって
から身ぐるみ剥がされてロビーで即売会
だよ。どうせ、女子連中が何かくれって
押し寄せるだろ?だからコイツの持ち物
一式、全部オークションにかけて売った
って訳だ。それが結構な収益になってな、
みんなで分配してた。ブレザーは2万、
ジャージは上下セットで3万とかで売れ
てたんじゃねぇか?多分それで卒業証書
とアルバムも売られたはずだ。」
「こわっ!」
「…どういう学校だ。」
「じゃ、ボクちん裸で帰ったの?」
「帰る途中で捕まるだろ!」
「誰かのジャージ着てたぞ。」
「全く記憶にございません。」
「この酔っ払いめ。」
「秋羅は?女の子にボタンとかあげた?」
「まさか。みんなネクタイとか校章とか
やってたけど俺は全部断ったな。だって
気持ち悪りぃだろ。知らねぇ女が自分の
使ってたもん記念に持ってるとか。」
「な?コイツは昔からこういうヤツだよ。
女心を平気で踏みにじる。逆に俺は愛を
惜しみなく分け与える。この男としての
如何ともし難い差!!」
「…ただのタラシを良いように言うな。」
「春クン、キミには一生分からんよ。」
「…分からなくていい。」
「それもどうせ一時的な感傷だろ。すぐ
失くしたり男できたら捨てたり。」
「ま、確かにね。所詮イベントだから。」
「春となっちゃんこそ、学ランのボタン
全部もぎ取られたんじゃねーの?」
「いや、俺たちも全部断ったよ。制服は
あげる約束してたから。」
「誰に?」
「友達。結構ね、次に弟が入学するから
みたいなヤツいるんだよね。双子の弟が
いるとかさ。背も伸びるし、お下がりで
いいなら寄付しようと思って。」
「…うちの弟たちまでは間が空くしな。」
「なるほど。」
「って、早くそのアルバム見せろよ~。
一番カワイイ子ってどれ?」
「お前はノリが全く成長してねぇな。」
「さぁ…誰だろ。俺もそんなに知らない
んだよね。」
「なっちゃんの初カノどの子?」
「…いないよ。1コ下だもん。」
「へぇ~?そうなんだ~?」
「ムカつくからニヤニヤすんな!!」
「甘酸っぱい想い出が蘇るね~、あの頃
なっちゃんは俺に色々聞いてきたよね~、
キスの仕…モガッ…」
慌てて冬馬の口を塞ぐ。
「黙れ、死にたいか?」
正直、そこには触れられたくない。
初カノと言っても俺はバンド活動の方に
夢中だったし、あんまり構ってあげられ
なくて可哀想な事をしたんだ。
すごくいい子だったのに…
「クククッ…そこはデリケートな部分だ、
そっとしといてやれよ。」
「プハッ!マジで窒息すんだろ!」
「お前が余計な事言うからだ!」
「でもまぁ、俺らんとこより断然マジメ
だよな。カラー写真なのにモノクロ感が
ある。」
「お前らの学校が異常なんだよ。ギャル
とギャル男が8割占めてるとか。」
「うちの秋羅サンは超~硬派だっての。
ギャルに興味ねーし、大学生とか社会人
のキレイなオネエさんとばっか遊んでた
もんな。」
「頭の悪い女は嫌いなんだよ。ギャル語
話した時点で終わり。」
「…お前らはどっちもどっちだろう。」
冬馬はクラス写真を次々めくっていく。
「おっ、このコ結構カワイイじゃん!」
「どれ?…あ~、人気あったと思うよ。
春、2年の時同じクラスだったよね。」
「………。」
「お前、さてはコクられたな?」
「え!!そうなの!?」
「…さぁ、一体何のことやら。」
「クククッ、誤魔化すのヘタだな。」
「え~、全然気づかなかった。春の事が
好きな子って、大概は先に俺に近づいて
来て色々聞いてくるから分かるんだけど。
そっかぁ、この子は自ら行ったのか。」
「お前も損な役回りだな。」
「なっちゃん、かわいそう…」
「いや、女の子たちが逆に気の毒だった
よ。頑張っても春は無理だよって忠告は
したけどコクるかどうかは本人が決める
事だしね。」
「玉砕覚悟か。」
「お前、何人フッた!?」
「…知るか。覚えてない。」
「くぅ~、ムカつく!!」
「バレンタインなんか、2年の時からは
教室の外に春専用の段ボールが設置され
たんだから。1年の時の状況を知ってる
先生が見るに見かねて用意してくれて。」