#23 Dream maker
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「え~、それでは第38回!チームJ、打ち上げア~ンド新年会を始めたいと思います!テメェら!飲む準備はできてんだろーなっ!!」
「何だよ、38回って。」
「38年もやってねぇし。」
「…そもそも38年も生きてないだろう。」
「さすがテキトー男!!」
「俺はついて行くぜ!」
「いいから早く飲ませろ!」
冬馬にヤジが飛びまくる。
「うるせー!んじゃ、みんな1年お疲れ!んで、今年もヨロシク!カンパーイ!!」
『カンパーイッ!!』
総勢40名ほどいるツアーチーム。
恒例のカウントダウンライブが終わり、もう朝になりかけた時間にも関わらず、ローディー、音響、照明、映像効果、衣装、他にも俺たちを支え続けてくれる沢山の仲間たちが、ジョッキやグラスを片手に笑顔で酒を飲み交わす。
全てがうまく噛み合わなければ、ライブの成功なんて有り得ない。全員が一丸となりステージを創り上げるんだ。担当は違えど、みんな仲がいい。
「カァ~ッ!この日に飲む酒が一番うめぇ。」
ヤッさんはジョッキのビールを飲み干す。
「国内に海外に、ツアーお疲れだったな。」
「なぁに、思う存分楽しませてもらったよ。」
うちではもう欠かす事のできない大黒柱。
ローディーだけではなく、チーム全体のボスと言ってもいい存在。
「とか何とか言っちゃって、そろそろ年齢的にキツイんじゃねーのー?いい加減、煩悩捨てて寺に帰ればー?」
「煩悩にまみれてんのはテメェだろ!その辺で座禅でも組んどけ!!」
乾杯の音頭を取ってからあちこちのテーブルを回っていた冬馬が戻ってくる。
「ジンも1年お疲れ。」
夏輝がポンとジンの肩を叩いた。
「とんでもないですよ!僕、海外ツアー連れて行ってもらえなかったですし。」
「何だ?お前、まだ拗ねてんのか?」
ジンは何事も真っ直ぐで一生懸命。よくゆとり世代がどうのなんて言うが、コイツは優しい顔の割に根性がある。どれだけ冬馬に遊ばれ振り回されようがめげない可愛いヤツでもある。
「だって海外の反応も見たいじゃないですか!
次は絶対に行きますから!」
「英会話力はアップしたのかよー?」
「安田さんにできて僕にできない訳がない!」
おいおいジン、もう酔ってんのか?
ヤッさんに絡むとは…。
「バカモノ!俺は家庭崩壊の危機を乗り越えて習得したんだ!ナメんな!」
「あはは、千鶴さんスパルタだったもんね。」
「…鬼が一番弱った時期だったな。」
珍しく春も思い出し笑いをする。
何としても海外ツアーにローディーチーム全員を引っ張り出したい俺らは、それぞれに英会話の習得を強要。ほぼ同年代に近いカズヤたち3人はそれほど問題もなかったが、若干年を食ったヤッさんはかなり大変で、元ツアースタッフで嫁の千鶴さんに、アメリカ留学経験の語学力を生かし教育を依頼。その結果、家だろうが日本語は徹底的に無視されるというスパルタ指導にあい、あのヤッさんがやつれたのだ。
「今となっては愛娘バイリンガル化計画に役立ってんだから、いいじゃん。」
「まぁな。海外の音響エンジニアと話ができるのも刺激になるしな。お前らには感謝してるよ。ジン、お前もとことんコイツらに食いついて行けよ?」
バシィッ!とヤッさんに背中を叩かれ、ジンが思い切り
長年一緒にやっていればそれだけ想い出も増えていく。楽しかった事も苦しかった事も、悔しかった事も…みんなで共有し反省し、また次へと繋げていく。
俺たちはひたすらそれを繰り返す。
よく『飽きないのか?』なんて質問をされるが飽きる訳がない。
何を何度やったって、同じ音、同じステージを再現する事は二度とできないのだから。
「そう言うたら今年の秋冬バトル、秋羅の方が拍手多目やったんちゃう?」
ローディーチームでただ1人の関西人、シンペイが屈託のない笑顔で言い放った。その瞬間、場が凍りつく。
「 わ~、バカ!言うなって!!あれでそこそこ繊細なんだから!」
夏輝のフォロー?及ばず、冬馬はクルッと壁に向かい体育座りをする。
「…いんだよ。どーせドラムなんてどこも一番人気ねんだよ。難しいことしたって、ドカドカ叩いてるだけとかよく分かんねーとしか言われねーしよ。どーせ俺なんか…」
早速いじけてやがる…。
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