#20 大切な場所
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「行くぞ?せーの!」
パッと秋羅が手を離すと同時に俺たちも自分が持ったタバコを引く。そして全員の目が、それぞれ持ったタバコの先を見回した。
「なっちゃん大当たりーーっ!!」
「リーダーおめでとう。」
「…良かったな。」
それはもう拍手喝采。
「良くないわっ!」
俺はいそいそと春と秋羅に缶コーヒーを配り、夏輝には汁粉ドリンクを渡す。
「はい、寒い時にはこれがイチバン♡」
「他人事だと思って…」
渋々受け取りつつも、寒さに勝てずそれを頬に当てる夏輝…お前は女か!
タバコに火を点け、深くひと吸い。
勝利の余韻。これ、秋羅のやつだ…
いつもと違うタバコの味。
コーヒーを飲むと、ジワッと胸を熱さが通り抜けた。
「どうだー、春。久々のタバコは。」
「…染み渡るな。」
「久々過ぎてクラッと来てんじゃねぇの?」
笑ってる俺たちの横で、夏輝はシャカシャカと缶を振る。
「なっちゃん早く飲めよー。冷めるぞ?」
「分かってるよ!」
「お前、甘いもん嫌いじゃないだろうが。」
「個体と液体は違うんだよ!それにこれ超濃厚砂糖汁じゃん!」
夏輝は諦めたように缶を開けると、チビチビ飲み始めた。そうだ、コイツは寒がりの上に猫舌だった…。ヒト科ネコ属?
そうこうしている間に太陽が顔を出し始めた。
4人並んでその様子を見届ける。
「また始まるね。どんな年になるのかなぁ。」
「なっちゃんは汁粉ドリンク当たったんだし、間違いなくいい事が起こるんじゃねーの?」
「リーダーにいい事があるなら、バンドもいい方向に向かうだろ。」
「…今年は思い切り歌いたい。」
春の呟きに、みんなが顔を見合わせる。
「くれぐれも無理だけはしないでくれよ?」
「隠し事もな。何かあれば素直に白状しろ。」
「春サマあっての俺らだからなー。」
「…すまなかった。今後は気をつける。」
なんせ今年は久し振りに海外ツアーも予定してるから。
「まぁ、何にでも意味のない事なんてないからね。これもいい勉強だと思えば。」
「そろそろ体調も考慮しろって話だな。」
「ってな訳で、今年も頑張りますかー!」
グッと伸びをして大きく息を吸い込んだ。
気持ちをリセットし、また一から始める。
すっかり顔を出した太陽に背を向け
俺たちは歩き出したーー。
太陽だって、昇れば必ず沈む
この世の中、全てが順調に
進み続けるなんて事はあり得ない。
それでも俺たちは前に進む事をやめない。
その一歩が大きかろうが小さかろうが
そんな事は関係ないんだ。
ずっと抱いてきた夢を叶えることも大事。
でもそれ以上に、お前らとこうして
音楽をやり続ける事が
俺には何より楽しいんだ。
見つけちまった最高の『遊び』は
死ぬまでやめられそうにない。
いつまでも、大好きな景色を見ていたいから。
「なぁ、なっちゃん。温泉どこ行く?」
「だから、なんでせっかくの正月休みにお前と温泉行かなきゃなんないんだよ!」
「行きたいっつったの、なっちゃんだろー。」
「お前を指名してない!」
「え?じゃあ、逆指名で。」
「イヤだ!疲れる!!」
「春と秋羅も行くってさ。もう今年の新年会、温泉宴会でいいじゃん。」
「「俺たちまで巻き込むな。」」
「………!」
「……!!」
「……」
「…」
俺のメンバー愛は、いつか報われる時が
来るのだろうか…ギモン。
fin.
2018.1.3
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