#18 林くんの憂鬱
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そして今ーー。
「あち~…あちーよ~、死ぬ~、ジン~、どうにかしろよー。」
「どうにもできませんよ、夏なんだから。」
「フェスも毎年苛酷になってるよね…。」
「誰だよ、真夏の炎天下にこんな事始めたヤツは。」
「…ライブの前に力尽きる…。」
夏フェスの控え室。
簡易のプレハブハウスのため、あまりエアコンが効かないのだ。
「あ~、イライラしてきた。」
「一番イライラすんのはお前のロン毛だろ。」
「お前のヒゲもウザいんだよ。今すぐ剃れ。」
「どっちもだよ!余計イライラさせんな!」
「お前の金髪も照明に反射して眩しいんだよ。いっその事ハゲろ。」
「眩しいほど反射する訳ないだろ、バカか!」
「…うるさい。言い合いするなら外に行け。」
「お前の赤い髪も大概暑苦しいんだよな。夏は青にしちまえば?」
「…なんだと?」
「ぁあ?やんのか?コラ。」
「やってやろうじゃん。」
「覚悟できてんだろうな?」
ガタッ、ガタガタ!
険悪ムードを漂わせ、メンバーがイスから立ち上がる。
えぇ!?こんな所でケンカなんて!!
僕1人で止められないって!!
「ちょっ!皆さん落ち着いてくだ…」
慌てて割って入ろうとしたその瞬間、
「いっせーのー4!」
「いっせーのー6!」
デカい男たちが両手の拳を突き合わせ、親指を上げ下げし出す。
…って、指スマかよ!
「…ジン、どうした?」
「殴り合いが始まるとでも思ったか?」
「いえ、あの…。」
「まさか、こんな歳になってそれはないよ。」
「そうそう。暇を持て余した俺らの遊び~。」
「紛らわしい事しないで下さいよ!焦ったじゃないですか!!」
くそ~、また遊ばれた…。
「いっせーのー0!ッシャー!春の負け!」
「……仕方ない。」
溜め息混じりに言うと、ドアへと向かう。
「春サマ、通算50回目のお使い~!なんて。」
「…そんなに行ってないぞ。」
「いやいや、結構負けてるよね。」
「春をパシらせんのは気分がいいな。」
「…言ってろ。」
フイッと出て行く神堂さん。
「神堂さん、どこ行くんですか!?何か買いに行くなら僕が…」
思わず追い掛けると、思いの外、優しい笑顔が僕を見た。
「…男の勝負だから。」
そう言うと、スタスタ行ってしまう。
パシる姿もカッコいいってどういう事だ…。
そして戻って来た神堂さんは…
なぜかクーラーボックスを提げていた。
「お疲れちゃ~ん!えらい遅かったな。」
「お前、どこまで行ってんだよ。」
「ってか、そのクーラーボックスなに?」
「…戦利品。」
神堂さんは少し笑うとボックスを開ける。
そこにはキンキンに冷えた缶ビールが…。
「…ジュンヤが腕相撲に勝ったらやるって言うから、倒して来た。」
「キャーッ!春サマ、ステキ~♡って、アイツら酒持ち込んでんのかよ?不良だなー。」
「って言うより、明らかにさっき負けた鬱憤を晴らして来たんだろ。」
「ジュンちゃんも学習能力ないよね…。」
JADEとはデビュー前から仲が良い(悪い?)というreminderは、事ある毎に絡んでくるので、僕もすっかり顔馴染みになってしまった。
メンバーはそれぞれ缶を手に取り、今にも開けそうな勢いだ。
「皆さん、ライブ前ですよ!」
「いーの、いーの。1本や2本なんて飲んだ内に入んねーから。」
「こんなの水と一緒だろ。堅いこと言うな。」
「夏だしね。それにフェスはお祭りじゃん。」
すると神堂さんが僕に向かってポーンとビールの缶を放った。
「わゎっ!」
落としそうになり、慌てて受け止める。
「…こんな時くらい構わない。そしてお前も…共犯者だ。」
「えぇ!!」
「ほら、来いよ。乾杯しようぜ。」
「これもライブ前の気合いだよ。」
「イライラ気分もこれでスッキリ!」
「…CMでも狙ってるのか?」
本当に…この人たちときたら。
結局僕は、今も振り回されている。
でも、最近はそれが楽しくもあるんだ。
「1本だけですからね?残りは終わってからですよ?」
僕も輪に加わると、みんなで缶を顔の高さまで上げた。
「それじゃ…俺たちと、頼れるマネージャーの夏に。カンパーイ!」
この先も、走り続ける日々が
ずっと続くんだろう。
彼女を作るヒマなんて
きっとないんだろうな。
それでも…この人たちを支えられるなら
一緒に夢を追いかけられるなら
そんな幸せな事はない
最高にカッコいいアニキたちに
どこまでもついて行こうと決めたから。
JADEの敏腕マネージャーと
呼ばれる日を目指してーー。
「ジン~、つまみねーの?」
「ありませんよ!」
「んじゃ、なんか買ってきてー。」
「俺、タコ焼き。」
「俺、なんか辛いもん。」
「…ポテト系。」
「ガチ飲みじゃないですかっ!!」
「夏だし。」
「フェスだし。」
「出番までまだまだ時間あるし。」
「…ヒマだし。」
「…………。」
今日も自由な人たちです…。
ま、いっか。
fin.
2017.7.28
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