#18 林くんの憂鬱
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
林 仁一、26歳。
職業、芸能事務所でマネージャーとして勤務。
担当、JADE。
アシスタントマネージャーとしてJADEに付いて早2年。主に現場付きのマネージャーとして走り回る日々。
今ではすっかり慣れたけど…初めは畏れ多くてロクに話す事さえできなかったんだ。だって…あのJADEなんだから。
男の自分から見てもカッコよくてクール。
どこか近寄り難いオーラを放っていて、初顔合わせの時は並んで座る4人に
ところが…
「あ、俺は夏輝ね。ヨロシク。」
「アホか。言わなくても知ってるわ!」
「お前にだけはアホって言われなくない。」
「はぁ!?なっちゃんのクセにエラそうに!」
「うるさいな!挨拶は人として基本だろ!」
「出たよ、いい子ちゃん~!」
「林…ジンイチって読むのか?これ。」
「あ、いえ!マサカズです!」
「へぇ、そんな読み方もできんのか。」
「…珍しいな。」
「じゃ、面倒だからジンで。」
「…読み方を聞いといて無視か?」
「呼びやすい方がいいだろ?」
なんか…イメージと違う。
あっちはギャーギャー言い合い、こっちは淡々と冷静で。もっと怖い人たちかと思ってたけど案外、普通なんだ…。
それが第一印象。
「ご迷惑をお掛けする事もあると思いますが、精一杯頑張ります!よろしくお願いします!」
「林はマネージャーに付くのはお前らが初めてだ。まぁ、鍛えるつもりでよろしく頼む。」
立石さんの言葉にメンバーはフッと笑った。
『了解。』
その笑いの意味が…この時の僕にはまだ分からなかった。
まさか、地獄の日々が始まるなんて。
ただでさえ分刻みのスケジュール。
なのに、この人たちときたら本当に自由で…
それはある日の朝ーー。
「冬馬さん、一体今どこなんですか!?もう家まで迎えに来てるんですけど!!」
「…んぁ~、どこだここ…?なんか、どっかのホテルにいるみてー。しかも隣に知らない女が寝てんだけど。」
「……(絶句)」
「悪りぃ。テキトーに行くからさ、テキトーに誤魔化しといてー。んじゃ、ヨロシクー。」
「適当ってそんな、冬馬さ…!」
ツー、ツー、ツー……
ウソだろ?なんて人だ。
しかも女グセ悪すぎる。
いつか刺されるに違いない…。
それはある日の昼ーー。
「あの…神堂さん、大丈夫ですか?」
「……。」
移動中の車内で既に寝ている神堂さん。
これから音楽誌の取材と撮影なのに大丈夫なんだろうか。しかも1人なのに。
ここ連日、曲作りで徹夜。と言うか、寝ない上に食べない。フラフラの身体を支え何とか車に乗せたものの…。
コンビニの前で車を停めると、おにぎり、お茶、エナジードリンクを買いに走る。
次々にヒット曲を生み出す神堂さんは、何より音楽優先で自分の事には全くをもって無頓着。
こんな生活を続けて、この人大丈夫なのか?
まさか不死身…いやいや。
それはある日の夜ーー。
「ちょっ、秋羅さん!どこに行くんですか!?まだ打ち合わせ終わっ…」
「その話ならこないだから何回もしてるだろう。俺の意見は変わんねぇよ。これ以上やっても時間の無駄だ。じゃ、俺、女待たせてっから。お先。」
バタン。
なんて勝手な。しかもキザ。
…一度でいいから、あんな台詞言ってみたい。
って、違うだろ!
頭が良く、口調は穏やかでも有無を言わせない迫力を持つ秋羅さん。確かに、いつも言う事は正論で反論の余地がない。
そしてあの何でも見透かしているような目に、品定めされているようで…怖い…。
現場に出たら出たで。
「ジン~、あのスタイリストの子、可愛くね?お前、声かけて来いよ。」
「な、なんで僕が!?」
「お前もナンパぐらいした事あんだろ~?それとも何か?草食系か?それともアッチか?」
「違いますよ!」
「お前が行かないなら俺行っちゃうよ~?」
「わー!これ以上問題起こさないで下さい!」
バシッ!
振り返ると夏輝さんが仁王立ちしていた。
「冬馬!ジンで遊ぶな!」
「イテーな!俺は親睦を深めてんだよ!」
「仕事中だって事を忘れんなよ?」
「イタイッ!なっちゃんギブーッ!」
冬馬さんの腕を締め上げる夏輝さん…。
笑顔が黒いんですけど…。
メンバーをサポートするどころか、完全に振り回され遊ばれる日々…正直ヘコむ。
壁にもたれると、大きな溜め息が出た。
1/3ページ