#17 星に願いを
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工作の時間を終え、次は歌の練習。
「それじゃあ男の子は彦星さま、女の子は織姫さまね。仲良し2人組作ってー。」
普段の子供たちの様子を見ていれば、誰が誰を好きなのかよく分かる。初めはモジモジとしていたものの、女の子たちが動き出した。
う~ん、羨ましいくらい積極的…
次々にカップルが成立していく。
あの4人組は大丈夫かな…
「なつきくん、いっしょにうたお?」
「うん、いいよ!はい。」
結衣ちゃんの顔がパァッと明るくなった。
夏輝くんは結衣ちゃんの手を握りニコニコ。
優しいなぁ。さすが女の子たちに『王子さま』と言われるだけの事はある。
繋いだ手をユラユラと揺らしながら、何か内緒話をしては微笑み合う2人が可愛くて、癒されてしまう。これが正しい幼稚園児の姿と言うか…
すると、私の前を秋羅くんがスタスタ横切っていった。ん?どうしたの?
秋羅くんはまさみちゃんの前で立ち止まる。
「まさみ、おまえオレがすきなんだろ?こいよ。」
そう言うと、まさみちゃんの肩を引き寄せた。
ええぇーーーっ!?な、なんて男前な事を!!
って言うか、どこで覚えてくるの、それ!?
仲良く手を繋ぐ夏輝くんたちの横に、肩を組んだ秋羅くんたち…
「あのね、秋羅くん…。肩組むんじゃなくて、手を繋いでくれるかな?」
「そんなのガキっぽい。」
…ガキでしょ。と思わず言いそうになる。
「ダメ。それじゃ歌いにくいでしょ?」
そう言うと、渋々手を繋ぐ。
まさみちゃんは私の顔を見ると、恥ずかしそうに笑った。ふふっ、良かったね。
「オレ、ゆうちゃんがいいー!!」
この声は!ハッとして振り返る。
ニカッと笑い、ゆうちゃんに後ろからガバーッと抱きつく冬馬くん。
「コラッ!抱きつかないの!」
ベリッと引き剥がすと、もう悪戯っ子満開の顔で私を見た。
「美織ちゃん、ヤキモチやくなよー。」
「やいてません!それに『ちゃん』じゃなくて『先生』でしょ!はい、手を繋いで。」
2人の手を繋がせると、冬馬くんはゆうちゃんをジーッと見る。
「ゆうちゃんはきょうからオレのカノジョ!」
「だってとうまくん、すきなコいっぱいいるんでしょ?」
「いまはゆうちゃんだけ♡」
はぁ…、この子の将来が本気で怖い。
溜め息をつくと、私の服をちょんちょんと遠慮がちに引っ張る小さな手。
「ん?あやちゃん、どうしたの?」
「あや…はるくんといっしょにうたいたいんだけど…。」
その視線の先には、窓から空を見上げる春くんの姿。春くん、あの3人以外とほとんど遊ばないからなぁ。1人でいる方が好きらしく、自由時間は大抵、絵本を読んでいた。
あやちゃんの手を引き、春くんのそばに行く。
「春くん、どうしたの?」
「…きょう、あまのがわ…みえるかな。」
「そうだね、先生もまだ見た事ないんだ。このまま夜も晴れるといいね。」
そう言うと、ちょっと笑ってくれた。
「あのね、春くん。あやちゃんが春くんと一緒に歌いたいんだって。」
「…いいよ。」
春くんは少し恥ずかしそうに手を差し出す。
手を繋いでみんなの所に戻る2人を見ていると、ほっこり。やれやれ、これで全員かな。
ピアノの前に座り「七夕さま」「きらきら星」を弾くと、元気な歌声が響いたーー。
午後、園の七夕祭りが始まる前にみんなに短冊を配る。
「これにお願いごとを書いてねー!」
みんなワイワイ言いながらペンを走らせる。
と、いち早く書き終えた夏輝くんが私を見た。
「美織せんせいはかかないの?」
一斉にみんなが見る。
「なっちゃん、美織ちゃんのおねがいなんて、アレしかないよ。」
『なになにー??』
うわ、みんなが食い付いてきた!
「『カレシがほしい』に決まってんじゃん!」
「ちょ、冬馬くん!!」
「えー!せんせいすきなヒトいるのー?」
「どんなヒト~?」
「ウェーブのショウくんよりカッコいい?」
女の子たちの目がランランと輝く…
「いや、あの、えっと…」
もう~!何を言ってくれるのよ~!
そりゃ好きな人はいるけど…
子供たちをなだめながら、ふと考えた。
あれ?私の好きな人って…誰だっけーー。
『せんせい、サヨナラー!』
何とか無事に七夕祭りも終わり、帰る子供たちに手を振る。
はぁ、今日もしっかり振り回された…。
結局子供たちの前で『ステキな彼氏ができますように』と短冊に書かされてしまった。
まだまだだなぁ、私。
反省しつつ教室の前に飾られた笹を見上げた。
空に向かって高く伸びる笹に風がそよぎ、飾りや短冊が揺れる。
キレイだなぁ…
すると、パタパタと走ってくる足音。
1人の男の子が駆けてくる。
「あれ?どうしたの?」
「わすれもの。」
教室に入るとキョロキョロ、そして棚の上に手を伸ばした。あぁ、水筒を忘れてたのか。
靴を履く彼の前にしゃがむと頭を撫でた。
「また明日ね。」
黙って頷くと、子供にしては真剣な眼差しで私を見た。どうしたんだろ…
「美織せんせい、おおきくなったらせんせいのことむかえにいくから、それまでまってて。」
そう言うと、チュッと頬に…えっ!?
唖然とする私にニコッと笑い、そのまま走って行ってしまった。
…なに?今の…。
もしかして告白されたの?私ーー。