#17 星に願いを
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
仕事を終えた後、タクシーでJADEのスタジオへ向かう。今日は神堂さんと次の新曲についてのちょっとした打ち合わせ。
信号待ちでふと外に目を向けた。
近くに幼稚園があるらしく、七夕飾りのついた小さな笹を持った子供たちが、お母さんと一緒に帰っていく。
あ、今日は七夕か…
そう言えば私、幼稚園の先生になろうと思ってたんだっけ。山田さんにスカウトされたのは、志望校をどこにしようか悩んでいた時だった。
芸能界に入らなければ、今頃どうなっていたのかな。私、先生になれたのかな…
何となくぼんやりと考えた。
スタジオの階段を登ると、2階はひっそり。
あれ?誰もいないのかな…
と、Aスタのドアが開いたと思ったらカズヤさんが出てきた。
「あ、美織ちゃん、お疲れ様。」
「お疲れ様です!あの…皆さんは?」
「あ~、今出先から帰って来る途中なんだけど、渋滞にハマってるらしくて。あと1時間くらいかかるかもって言ってたから、ゆっくりしててよ。」
「そうですか…。じゃあ、お言葉に甘えて。」
休憩スペースのソファ。今だけいいよね…
いつもあの人が座る位置に腰を下ろしてみた。
優しい笑顔を思い出して、ちょっとドキドキ…
って、ダメダメ!これじゃ、怪しい女だよ!
邪念を振り払うように、バッグから台本を取り出して読み始める。
でも、次第に重くなる瞼…
最近、忙しくて寝不足ぎみ。今日も朝早かったからなぁ。皆さんが帰って来るまで…
ちょっとだけ…
吸い込まれるように目の前が暗くなったーー。
*******
園の前にスクールバスが停まると、次々に子供たちが降りてくる。
1人1人挨拶を交わしながら、体調が悪そうな子がいないかを確認していく。
「美織せんせい、おはよー!」
ステップから元気よく飛び降り、名前の通りの輝くような笑顔を向けてくれる。
「夏輝くん、おはよう。今日も元気だね。」
「うん!」
その愛らしさと優しい性格から、おままごとをする女の子たちが取り合いをするほど大人気の夏輝くん。
続いて降りて来たのは、幼稚園児にしては大人びた性格、そして賢い…
「美織、おはよ。」
「おはよう…って、秋羅くん?いつも言ってるけど、美織じゃなくて美織
「あー、わすれてた。」
しれっと言うと、スタスタ歩いて行く。
って言うか私、完全にナメられてるよね…。
思わずその後ろ姿を見送ってしまう。
ムギュッ。
お尻に感じる圧と太ももにしがみ付く手。
「美織ちゃんのおしり、やわらかい…」
スリスリされてる感触に、後ろを振り返る。
「コラーッ!もう冬馬くん!離しなさい!!」
「えー、だって美織ちゃんダイスキだもん♡」
もう、この子は…!屈託のない笑顔に怒る気が失せてくる。園で一番の問題児。
「…とうま、せんせいイヤがってる。」
最後に降りてきたのは、春くん。
シャイで大人しいけど、とても心の優しい子。
「春くん、おはよう。」
「…おはよう。」
冬馬くんの腕を掴むと、教室の前で待っている夏輝くんと秋羅くんの所まで連行するように歩いて行く。
「はーるー!イタイーッ!!」
「…うるさい。」
「とうまのスケベー!」
「バッカじゃねぇの?」
当たり前になった朝の光景。
この4人、性格はバラバラなのになぜか仲良しでいつも一緒。
「よし、今日も頑張るか!」
気合を入れ、私も子供たちの後を追いかけた。
「はい、それじゃあ今日はお昼からの七夕祭りに向けて、笹に付ける飾りとお星様のお面を作りまーす。」
『はーい!』
みんな元気よく言うと、それぞれ自分の棚からお道具箱を取ってくる。テーブルごとに画用紙と折り紙を配り、作業を見守った。
和気藹々とみんな楽しそう。
提灯や天の川、色とりどりの飾りが出来上がっていくのを見ていると、ふと聞こえた声。
「なっちゃん、そらにヒトデはいないって。」
「ヒトデじゃないもん!ホシだもん!」
「あしがながすぎるんだよ。」
「…がんばればホシにみえる。」
またあの4人組だ。
冬馬くんと秋羅くんはテーブルに身を乗り出し、春くんは頬杖をついて夏輝くんの絵を見ている。
夏輝くんは工作は得意だけど、絵にちょっと難があるんだよな…
4人のテーブルに行くと、なるほど、夏輝くんの星は5本の足が細く長くてちょっと
「とうまだって、トゲトゲ多いよ!」
「その方がカッコいいだろ!」
本当に個性が出るよねぇ…
冬馬くんはもう爆発させたようなイガイガ星。
秋羅くんは定規を使ってピシッと書き、春くんは自分の納得がいくまで何枚も書き直したようだ。
「はい、そこまで。みんなそれぞれ違うように、お星様だって同じものはないんだよ?だからそれで大丈夫。」
なだめると少し照れ笑いを浮かべて、4人はまた工作に没頭する。お互い出来ない事は手伝ったり、すぐケンカする割りチームワークがいい。男の子っていいなぁ。
微笑ましくて、胸が温かくなった。
1/4ページ