#14 Turn back the time
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サビの演奏シーンを抜けると、エンディングに入る。
朝焼けの中、山頂に立つ俺たちはいつものように拳を突き合わす。そしてそれが合図だったかのように、一斉に斜面を滑り始めた。
リピートされるアウトロをバックに、まだ誰にも荒らされていない真っサラな白い斜面を、雪しぶきを上げ4本のラインが延びて行く。
「うわぁ、すごい!」
「いや~、俺らカッコよすぎんじゃねーの?」
「最高の爽快感だったよな。」
「うそ?お前らが絶対コケるの俺だって言うから、すっごい緊張したんだけど。」
「…こんな撮影なら何回でもやるんだがな。」
画面を見つめながら、自然と笑みが溢れる。
これも、俺たちの新たな想い出…
そして曲はフェイドアウトしていき、画面には雪面と青空が半々に映る。
その雪面には、並んだ4人の足跡が続いて行く。
そこに、ヒラヒラと1枚の写真が落ちた。
ズームアップされた瞬間、「わっ!?」と美織ちゃんが身を乗り出す。
ククッ、いい反応だ。
雪の上に落ちた少し色褪せた写真。
写っていたのは…学ランとブレザーを着た4人の高校生。
でもその映像は一瞬にして、昔のブラウン管のテレビが消えるようにプツンッと切れた。
画面は闇に戻る。
「はい、終了~!!」
「え~!今の写真って、皆さんですよね?本物ですよね??」
少し興奮した美織ちゃんに、みんな思わず吹き出す。
「そう、あれ本当に俺たちの高3の時の写真なんだよ。」
「確か、最後の部活の日に音楽室で撮ったんだよなー。」
「一応、記念にってな。ガラにもなくちょっとセンチメンタルになって。」
「…それだけ想い出も多かったから。」
『青春』なんて言葉はクサくて使いたくないが…あの写真はまさにその真っ只中にいた頃の俺たち。
「あ、あの…もう一回…」
美織ちゃんはソワソワしながら遠慮がちにおねだりする。
そりゃ、気になるよなぁ。あんな一瞬だけ見せられたんじゃ。
「あはは、何回でも見てくれていいんだけどさ。あの写真、実は加工がしてあって、どれだけ頑張ってもハッキリ見えないんだよ。」
「一時停止しても、コマ送りしても、スローで再生しても、顔が何となくしか分かんねんだ。俺らってイジワルだろー?」
冬馬がニカッと笑う。
「散々、初公開映像を見せといて最後にこれだもんな。ファン悶絶だろ。」
「そんなぁ…。」
そして目の前には悶絶する美織ちゃん。見本のような期待通りの反応にウケる。
「…俺たちの想い出は、俺たちだけのものだから。悪いな、美織。」
春は慰めるように美織ちゃんの頭を撫でる。
「でも一つだけ、その想い出を見る方法があるにはあるぞ?」
「な、何ですか!?秋羅さん!」
俺の言葉に美織ちゃんが食い付く。
「この4人の中の誰かと付き合えばいいんだよ。そうすればお宝見放題…なんてな?何なら、俺んとこくるか?」
意地悪く笑うと、彼女の顔が見る見る赤く染まった。
「おい秋羅~。美織ちゃんを揶揄うなよ。」
いや、別に揶揄ってるつもりはねぇけど。
「ってかそれ、見られたら困るもんの方が多くねーか?」
「…それはお前だけだろう。」
「そうそう。ハレンチな写真がザックザク。」
「違う!違うぞ美織ちゃん!そんな事ねーから!」
自分で言い出して焦る冬馬にみんなで笑った。
同じ時を過ごした仲間との想い出は
いつだって胸にしまってある。
俺たちは同じ方向に向かって進んだが
例え別々の道を歩んだとしても
降り積もった想い出は
雪と違って消える事はない。
「なんだか…友達に会いたくなっちゃいました。」
そう言って微笑む彼女。
この曲を聴いた誰もが
そう思ってくれればいい
誰の心にも大切な想い出は
きっと、あるはずだから…
fin.
2017.2.10
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