#13 新たな始まり
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「それじゃ、みんな!本当にお疲れ様でした!そして今年もヨロシク!カンパーイッ!!」
ライブの打ち上げと新年会を兼ねた恒例の飲み会が、夏輝の音頭で始まる。と言っても、もう午前3時過ぎ…。
騒ぐのは好きではないが、ずっと一緒にやって来たスタッフたち。この1年の感謝を想いながら酒を酌み交わす。
普段それほど多く会話はしなくても、1人1人の顔も名前もちゃんと覚えているし、仕事振りも見ている。俺たちを支え続けてくれる、大切な仲間ーー。
そして朝。飲み会を終えスタッフたちと別れると、俺たちはいつもの場所へ…。
なぜか、これをしないと1年が始まらない。
やっている事は子供のように下らないが、いつの間にか儀式のように根付いてしまった。
そして、あの時の誓いを忘れないためにーー。
「早ぇよなー。こないだやったとこじゃん。」
「今年は特に早く感じたな。」
「正に駆け抜けたね。」
「…あっと言う間だった。」
それぞれタバコを1本抜きながら秋羅に渡す。
「いい?最初はグーッ!ジャンケンッ!!」
ジャンケンで順番を決めると、秋羅がフィルターを隠しながら持ったタバコを1本ずつ掴む。
「マジで頼む!俺に来るな!」
「誰だっけ?これ言い出したのって。」
「…冬馬だろう。」
「あれだ、冬馬が自販機でコーヒー押したら、汁粉ドリンクが出て来たんだ。それで押し付け合いになって、それじゃ運試ししようってなったんだ。」
「結局俺たち、お前のとばっちりじゃん。」
「いーだろ!?何だかんだ言って、毎年地味に盛り上がってんだから!!」
確かに…下らないと思いつつも、誰もやめようとは言わない。
「ほら、行くぞ?せーのっ!」
一斉にタバコを引く。
「っしゃーっ!!今年もセーフッ!!」
「あ~、俺も助かった!」
「…2年連続だったらどうしようかと…。」
思わず心の声が出てしまった。俺は去年飲んだだけに、今年は何としても避けたかった。
冬馬は思い切りガッツポーズをし、夏輝もホッとした表情を浮かべる。
そしてみんなの視線は秋羅へ…
「……とうとう、またこの時が来たか…。」
あの何事にも動じない秋羅の何とも言えない顔に、みんな笑いが抑えられない。
運が強いのか、秋羅はまだ1回しか当たった事がなかった。
「ザマーミロッ!」
「ま、たまにはね。飲んでもらわないと。」
「…修行だと思えば…。」
冬馬はニヤニヤと嬉しそうに笑いながら、秋羅に汁粉ドリンクを渡す。
俺たちもコーヒーを受け取ると、自分が引いたタバコに火を点け、空に向かって煙を吐いた。
「なんか…俺たちまだまだ青春してんなー。」
呟く冬馬の向こうで、秋羅が缶を思い切り振ったかと思えば一気に飲み干した。
「あーっ、クソまずい!!誰だよ、こんなもん作ったの。」
秋羅が感情を
そして次第に明るくなる海を見つめた。
「また、始まりだな。」
「今年も突っ走るかーっ!」
「これ飲んだら、もう怖いもんねぇし。」
「今年は…そろそろ準備に入るか。」
兼ねてから念願だった海外進出。
と言っても、そんな簡単に進む話ではない。
別に焦ってはいないが、少しずつ準備を始めて行けたらと思っている。
「そうだね。課題はまだ山積みだけど。」
「ぬるま湯には浸かってらんねぇし。」
「やっぱ、男には挑むもんがねーとな。」
昇りゆく真っ赤な太陽が、並び立つ4人を照らし出したーー。
新たな始まり。
いつまでもここに
どこまでも上を目指して。
あの、空の向こうを目指して…
fin.
2017.1.3
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