#13 新たな始まり
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「行くぞーっ!!3、2、1、…」
「「「「Happy new year !!」」」」
ステージ脇に設置されたキャノン砲から金銀のテープと紙吹雪が一気に舞い上がる。
毎年恒例のカウントダウンライブ。
歓声と拍手が押し寄せて、盛り上がりは最高潮になる。
「みんなーっ、今年もよろしくーっ!!」
夏輝が手を振り応えると、観客は即座に反応し、さらにうねるような歓声が返って来る。
普段からライブは全て大切にしているが、このカウントダウンは仕事納めであり仕事初めでもある。やはり気持ち的にはいつもと少し違う。
さぁ…今から仕事初めだ。
ステージが暗転し、ダンサンブルなSEが流れ始める。鼓動を乱すように胸に打ち付けるリズム。そして、色とりどりのレーザーと照明が明滅する。
音に合わせて起こり始める手拍子。
例年なら年明け以降はファン投票による選曲になるんだが、9月後半までツアーで人気の高い曲を演奏していた為、今年はちょっと趣向を変えてみた。
ステージ後方、ドラムセットの横にスポットが当たると、ワッと一際歓声が大きくなる。
設置されたDJブースに悠然と立つ冬馬。
マイクを持つとこれでもかとファンを
「Clap your hands !!」
リズムに乗りながら片耳にヘッドフォンを当て、SEから俺たちの曲にMIXさせるとスクラッチを開始する。一気に盛り上がる会場。
俺はマイクを握り、ファンへ呼びかけた。
「Club JADEへようこそ…。」
ステージで前方で爆音と共に火花が噴射し、地響きのような歓声が湧き上がった。
そう。
今日はこのホールを巨大クラブに変える。
「みんな踊れーーーっ!!」
「無事に帰れると思うなよ?」
夏輝と秋羅の声にまた会場が湧く。
これからの時間はバラードはお預け。
最後までアップテンポで押し通す。
モニターに足を乗せ客席を見渡すと、挑発するように叫んだ。
「クタクタになるまで…お前たちの踊る姿を見せてくれ!」
それに呼応するように、夏輝のギターが唸りを上げたーー。
冬馬はDJ用にリミックスした1曲目を終えるとドラムに戻り、更にライブは加速して行く。
会場を揺るがすファンの熱気が伝わって来る。
俺たちの音にこんなにも多くの人が歌い、叫び、踊る。何よりも魂を揺さぶられる
自分はこのために生まれて来たんだと…思わずにはいられない。
俺が俺として…全てから解放される瞬間…
そして客席のキミを見る。
今年は恒例の歌合戦の出場がなく大晦日がオフになったというキミを、俺は迷わず招待した。
例えステージと客席で離れていても、同じ時間を過ごしたかったから。
彼女にもっと、音楽の素晴らしさとパワーを感じてもらいたかったから。
目を輝かせステージを見つめるキミ…
願わくは、その綺麗な瞳に映るのは
俺だけであってほしいーー。
「だーっ!今年も燃え尽きたーーっ!!」
ライブを終え楽屋に戻ると、冬馬が倒れ込む。
全員、湯気が出るほど汗だくだ。
全力で挑んでいるからこそ、疲れも心地いい。
「今年は始まったばっかりだけどね。」
「始まって早々、燃え尽きんなよ。」
「あー!ややこしいな、カウントダウンは!」
軽口をたたきながらも、誰の顔も満足気だ。
「春は?大丈夫?後半にあれだけアップテンポが続いたら、流石にキツイんじゃない?」
「いや…楽しかった。」
自然と笑みが漏れる。
「出たな、鉄人神堂春。」
「お前、どんなノドしてんだよ。」
「やっぱり春は最強だね。」
そう言って3人は笑った。
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