#12 プロローグ
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
不意に湧き上がった歓声と拍手に我に帰る。
「ホラなっちゃん、行くぞ!」
「はっ?」
「おいおいリーダー、しっかりしろよ。」
「…音楽大賞、獲った。」
「あ、あぁ!」
そうだ、授賞式だった。
ついつい、色々と思い出が蘇って…。
慌てて席を立ち、大きな拍手に包まれながら4人でステージに上がる。
プレゼンターから花束や受賞盾を次々に受け取ると、司会者がにこやかに歩み寄って来た。
「おめでとうございます!リーダーの夏輝さん、ご感想をお願いします。」
俺は一呼吸置いてからマイクを握った。
「このような大きな賞を頂き、大変光栄に思います。高校生の時にこのバンドを結成して以来、家族や友人、先生、関係者の皆さん、そしてファンの皆さんと、本当に多くの方々に支えて頂きました。この賞を頂けたのは皆さんのお陰だと思っています。
そして何より…最高のメンバーに出会えた事、ここまで一緒にやってこれた事に、心から感謝しています。」
そう言って3人に目をやると、珍しく照れ臭そうに笑っていた。でもそれは紛れも無い本心。
お前らとだったから、ここまで来れたんだ…
「ただ僕たちはまだまだ道半ばです。これからももっと多くの人に僕たちの音楽を届けられるよう、頑張って行きたいと思いますので応援、よろしくお願いします。ありがとうございました!」
一礼して司会者にマイクを渡すと、会場に拍手が鳴り響いた。
「相変わらず優等生コメントだなー。」
「夏輝らしくていいんじゃねぇの?」
「…他に言いようがないだろう。」
どこにいたって、授賞式の舞台でさえいつもと変わらないメンバーに、思わず笑いが込み上げる。
「一応晴れの舞台なんだから、ごちゃごちゃ言ってんなよ。ほら、セッティング入るぞ。」
俺たちは特別に用意されたステージに向かうと、それぞれの位置にスタンバイする。
ステージから見える景色。
それはあの時とは比べものにならない。
小さなライブハウスから始まった俺たちは、今『日本音楽大賞』を手にこの大きなステージに立っている。
だけど、これも一つの通過点。
あの時の春の言葉が浮かぶ。
人前で話すのが苦手で、歌う以外、今でもMCや取材なんかを嫌がる春。
そんな春が、初めてのライブの時からハッキリと、必ず口にしていた言葉。
『俺たちJADEっていいます』
自分たちの存在を世間に知らしめるように…。
いつから言わなくなっただろう。
もう日本では、俺たちの事を知らない人なんてほとんどいないから。
でも…世界的に見れば、俺たちなんて全く知られていないに等しい。もっともっと、世界中の人たちに俺たちの音楽を聴いてもらいたい。
果たしてどれだけの人を振り向かす事が出来るのか…?
春がマイクを握る。
そして振り返りながら俺たちを見回すと、フッと笑った。
会場に、低いけどよく通る声が響く。
「俺たちJADEっていいます。
聴いて下さい。『Sky high』ーー」
fin.
2016.12.30
3/3ページ