#12 プロローグ
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俺たちは今、年末の『Japan Music Award 』の授賞式に来ている。
今年はバンド結成10周年の節目の年。何をするにもメンバー全員、いつも以上に力を入れてきた。
努力は決して裏切らない。その甲斐あってか、この音楽賞始まって以来異例の、4部門でのノミネートとなった。
ベストアルバム賞を始め3部門で授賞が決まり、今は最後の『日本音楽大賞』の発表を待っていた。
確かに全てが名誉ある賞だ。
授賞出来ることは、俺たちが認められた証でもあり、もちろん嬉しい。
でも自分たちがやりたい事をやって付いてきた結果だし、目指しているのはまだまだ先にある世界。
その辺はみんな同じ想いを持っているようで、至って平常心。春は腕を組んでただステージを見つめ、秋羅と冬馬は相変わらず、ふざけては笑っている。
いつもと違う事と言えば、全員スーツでビシッと決めているところだけか。
そんな3人を見ながら、俺は何となく思い返していた…。
メジャーデビュー以来、何度となく繰り返し答えてきた質問。JADE結成のきっかけ…。
別にこれと言ってドラマ的なことは特にない。でもそれは、俺たちの歴史の始めの一歩となる大切な思い出。
今でもフッと思うんだ…アイツらと出逢った事は偶然だったのか、それとも必然だったのか?
どちらにしろ、あの時、俺たちは最高の仲間に巡り逢ったんだ…
無口で無愛想だけど、誰をも惹きつける圧倒的な歌声と才能、音楽に対する情熱は誰にも負けないヤツ。
頭が良くていつも冷静沈着。その正確に刻む音で常にバンドの舵を取る。クールに見えて実は熱いヤツ。
チャラくてお調子者。でもその爆発力とリズム感には誰もが一目置く。自然体で音を楽しむ自由なヤツ。
そして…ギターが好きで好きで、バンドに憧れて、ずっと仲間を探し続けていた俺。
俺たちが、その音が、ガッチリ噛み合った瞬間の衝撃と嬉しさは、今でも昨日の事のように覚えてる。
JADE が生まれたその瞬間をーー。
「…って、なっちゃんって!」
「えっ?あ、なに?」
「ボーッとしてどうしたんだよ?」
「緊張してる…とか?」
冬馬と秋羅がニヤニヤ笑う。
「別に緊張なんかしてないよ!ただ昔のことをちょっと思い出してただけで。」
「昔?まぁ、確かに色々あったよな。」
「出会った時のなっちゃんはホント可愛かったもんなー。どこの中坊かと思うくらい。」
「それは言うな!」
「春は変わらないよな。髪の色以外。」
「…そうか?」
「髪と言えば、冬馬がロン毛になるなんてあの頃は思わなかったけどね。」
「お前、ホントしょっ中髪型と色が変わってたもんな。」
「男前は何でも似合うんだよ。」
「でもさ…考えたらすごいよね。幾つもの偶然が重なって、今、こうしてここにいるんだもん。何か一つでも欠けてたら、きっと出会ってもなかっただろうし。」
「そうか?俺、何がどうあっても、お前らに会うように仕組まれてた気がすんだけど。」
「誰に?」
「音楽の神様♡」
「お前、バチ当たりな事しかしてねぇだろ。」
「…神様のイタズラ…か?」
珍しく春が笑った。
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