#10 そもそも。
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「実は…」
2人の目線がテーブルへ行く。
そこにあるのは真っ茶色に変色した紙の束…。
「ごめんなさい!テーブルの上にあった譜面にコーヒーを思い切りこぼしてしまったんです。しかも、慌てて拭こうとしたら破ってしまって…。あげく全部くっ付いて剥がれなくて…。」
「「「「はぁ??」」」」
「いや、俺が悪いんです!朝一に来てた俺が、片付けるの後回しにしたから…。人の気配がしたんで、不審者かと思って大声で誰だ!って叫んだら、美織ちゃんがビックリしてコーヒーをひっくり返してしまって…。」
「「本当にすいません!!」」
そう言って2人が頭を下げる。
「「「「………。」」」」
あれ??なんか展開が違う??
「ククククッ…アハハハッ!なんだよ?そんな事かよ!?」
夏輝が笑い出した。
可笑しいと言うより、嬉しいんだろう。
「誰だ?譜面置いて帰ったの。春か?」
秋羅もニヤッと笑いながら溜め息をついた。
「悪い…。でもそれ、要らないやつだから。」
「「えぇ!?」」
春の言葉に、カズヤと美織ちゃんの顔が引きつる。
「なんだぁ…よかった…。」
よっぽど気に病んでいたんだろう。
美織ちゃんはヘナヘナと、その場にへたり込んでしまった。
「美織、それにカズヤも、悪かったな…。余計な心配をさせてしまった。」
春は美織ちゃんのそばにしゃがむと、優しく頭を撫でる。
「冬馬……。」
滅多に聞く事のない、地を這うような低い声。夏輝が指の関節をボキボキッと鳴らした。
ヤベッ!完全に怒ってる!!
「ナツキ、ボンバイエ。」
「コラッ秋羅!余計な声掛けんな!!」
夏輝に闘魂注入すんじゃねーよ!!
「待て、なっちゃん!話せば分かる!!」
「何のワザがいい?」
冷たい微笑みを浮かべる夏輝…。
「ちょっと待てよ!だってあんな話聞いたら、誰だってそう思うだろ?」
「あんな話?」
カズヤが眉を寄せた。
「そもそも、あんなにややこしい言い方をしたカズヤが悪い!」
「なんの事ですか?話が全然見えないんスけど…。」
「要はな?冬馬がお前と美織ちゃんがデキてるって勘違いしたんだよ。」
秋羅はソファに座ると、面白そうに言う。
コイツ、もうこの展開を楽しんでやがる!
「ええぇ!?なんでまたそんな…」
カズヤと美織ちゃんは顔を見合わせた。
「だって!もう取り返しがつかないって、俺がちゃんとしなかったからって、責任取るって、そんなキーワード並んだら、てっきりお前らがデキてて、子供まで…ってイッテー!!」
「美織ちゃんの前だ。言葉を選べ。」
夏輝にスパンッと頭を叩かれる。
春に後ろから耳を塞がれ、キョトンとする美織ちゃん。
「そんな事、ある訳ないじゃないですか!美織ちゃんですよ?
カズヤは顔を真っ赤にして言う。
「そもそも、お前の勝手な思い込みだろうが。俺らまで巻き込みやがって。」
秋羅は呆れたように俺を一瞥した。
「そもそも、春がそんな所に譜面を置いて帰らなきゃ、こんな事にならなかったんだよ!」
「それは…でもそんなのしょっ中だろう。」
「ちょ、皆さんモメないで下さいよ!そもそも、片付けなかった俺が悪いんですから!」
「いえ!そもそも、譜面がある所に飲み物を置いた私が悪かったんです!」
美織ちゃんも参戦。
「もう、分かった!誰のせいでもないから!」
夏輝が仲裁に入った。
よしよし、流石はリーダー。
俺はホッと胸を撫で下ろす。
「でもな?冬馬。そもそもの原因は全部お前にあるんだよ。お前が来るはずのない時間に来て、少ない情報からスケベ心満開の勘違いをしなきゃ、俺たちは一瞬混乱しないで済んだんだ。お前が責任取れ。」
「やっぱ俺なのかよ!?」
「「「当たり前だろ。」」」
うわ…冷たい視線…。
「で、なに掛けて欲しい?」
「なるべく痛くないやつお願いします…。」
「それは無理だな。」
でた!夏輝の心のこもってない乾いた笑顔…。
「春、秋羅!助けてくれ!」
「そう言えば新しい技覚えたって言ってたな。俺、それ見てぇんだけど。」
「夏輝、構わない。やれ。」
夏輝は2人の声にニコッと笑うと、素早く俺の後ろに回り込んだ。
「うわっ!!」
あっという間に倒されたと思ったら…
「イデデデデデデデッ!ギブッ!なっちゃん、ごめんって!!骨折れるーーっ!!!」
俺の叫び声は、スタジオの外まで聞こえたとか聞こえなかったとか…
俺は決めた。
もうどんなに早く起きたとしても
ギリギリにしかスタジオには行かねーぞ。
fin.
2016.9.23
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