#8 伝説の男
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「でも、なっちゃんと春だってかなりモテてただろー?」
「春は凄かった。入学式直後からクラスの女子が浮き足立ってたもん。他のクラスに超カッコいい子がいるって。初めて春を見た時は、なるほどな~って感じだったよ。俺はむしろ、いじられる方だったけど…。」
「なっちゃんはカワイイからなぁ~。イジリたくなるんだよな。」
「…でも夏輝は、2年くらいからよく女子が群がるようになった。」
「おっ?ようやく背が伸び始めた頃か?」
「うるさいなーっ!どうせチビだったよ!!」
「クククッ、夏輝の必殺微笑み返しは最強だからな。春と違って愛想もいいし。」
「でも俺たちは普通の都立校だし、お前らみたいに乱れてないからな。」
「ハイハイ、どーせ俺らは自由な私立校で、やりたい放題乱れまくってましたよ~。」
「冬馬、乱れまくってたのはお前だけだから。俺を巻き込むな。」
「秋羅~、何を今更いい子ぶってんだ?あんな事やこんな事、色々やった仲だろー?俺とお前は一連托生だぞ?」
「俺は、あんな事やこんな事をやらかしたお前のケツを拭いてやっただけだ。」
「ったく、お前らな~。バンドを解散の危機に追い込むような過去ネタ、出て来ないだろうな?」
「それは大丈夫!」
「法に触れる事はしてない…はず。」
…溜息しか出て来ない。
高1の時にJADEは結成されたが、学校も違うし四六時中一緒に行動していた訳じゃない。
コイツらには他に遊び仲間が大勢いて、何を仕出かしてたのかは知らないし、正直知りたくもない。ロクな事してないのは分かってるから。
「なっちゃんと春には伝説ないのかよ?春なんかめちゃくちゃあんだろー?」
「……あ、思い出した!」
夏輝に、余計な事は言うなよ?っと目で訴えると笑い出した。
「ククククッ。いや、春があんまり無愛想と言うか、無表情なもんだから…。いつの間にか、春の笑顔を見たらその日いい事が起きるとか言われ出して。休み時間になると見物人が出るんだ。それ以来春は、昼休みは部室に逃げるようになったもんな。」
「…あれは本当に迷惑だった。」
「伝説って…それもう都市伝説の域だろ。」
「えー、なっちゃんは~?何か笑えるネタないのかよ。」
「ないよ。俺は至って真面目な生徒だったんだから。」
「……そう言えば、夏輝は修学旅…」
「うわぁぁっ!春っ!それは言うな!!」
いきなり夏輝に口を塞がれる。
「なんだよー。何か面白そうなんだけど?修学旅行がどうしたんだよ、言えよ春!」
「ダメ!絶対ダメ!!」
あまりの夏輝の必死さに笑えてくる。
手をどけて
「…分かった、言わない。」
と言うと、ホッとした表情になる。
「すんげー気になって、俺、今日寝らんねーだろ!」
「いいよ、寝なくて。」
「だーっ、いいから教えろよ!」
「イヤだ!」
夏輝と冬馬がジャレ始める横で、俺は思い出していた。
夏輝が修学旅行で訪れた沖縄で迷子になった事をーー。
正確には、観光中の自由行動で三線を弾くのに夢中になり、集合時間を忘れてバスに置いて行かれた…という事なんだが。
まさかしっかり者の夏輝が乗っていないとは誰も思わず、ホテルに帰って大騒ぎになった。
「…おい、春が笑ってるぞ?」
「くそ~、そんなに笑えるネタなのか!」
「いや、全然笑えないから!」
「でも春の笑った顔を見れたという事は…今日はいい事が起こるんだろ?」
秋羅がフッと笑って俺の顔を見る。
「…さぁ、どうだかな…。」
fin.
2016.03.04
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