#6 New Year's Day
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外はまだ暗い。
タクシーを拾い、目的の場所に向かう。途中でコンビニに寄り、冬馬が例の物を買って来た。
目的地に着くと、タクシーの運転手に言う。
「30分程、ここで待っててもらっていいですか?戻ってくるんで。」
そう言って、俺たちは歩き出した。
ここは海に面した錆びれた倉庫街。
いつからか俺たちは、元日の朝、ここに来るようになっていた。他には誰も来ることのない、ひっそりした場所。
曇りでも、雨でも、雪でも…。
日の出が見れないと分かっていても、ここに来る。
日の出が見たいワケじゃない。
ただあの時、ここで誓ったから。
4人で昇りつめよう
どこまでも高く…
俺たちは、その想いを改めて刻み込みに来る。
「さっびぃな。早くコーヒー飲もうぜ。」
「お前、コーヒー飲める気でいんのか?」
「今年は当たらない気がすんだよな。」
「俺、なんか自信無い…。」
秋羅はニヤッと笑うと、
「じゃ、みんなタバコ出せ。」
と言いながら自分のタバコを1本抜き、手を出す。その手の上にそれぞれ1本ずつタバコを置く。1本だけフィルターの部分が茶色いのは春のマルボロ。
ジャンケンで順番を決めると、フィルターを下にして秋羅がタバコを握る。
1本ずつ順番に取りたいタバコの先を持つ。
「持ったな?離すぞ。」
パッと秋羅が手を離す。
「ヨッシャーッ!!」
「助かった~!」
「俺、3連勝だわ。」
口々に喜ぶ俺たちの前で、自分のタバコを引き
「…俺か…。」
「さ、早く飲んであったまろうぜ~!」
冬馬がコンビニ袋からブラックの缶コーヒーを手渡してくる。そして最後に春に手渡されたのは、汁粉ドリンクーー。
これも恒例、新年の運試し。
「お、太陽が見えて来たぞ。」
秋羅の言葉に、みんなが振り返る。
4人並んで太陽を見つめた。
新たな始まり…ここに来ると、身が引き締まる思いがする。
缶コーヒーを開け、自分が引いたタバコに火を点ける。熱いコーヒーが喉を流れて行くのを感じた。
「今年はバンド結成10周年だ。いつも以上に気合い入れて行くぞ。」
「ファンも期待してるだろうしな。」
「大暴れすっかー!!」
「この10年の集大成を見せる。」
決意を胸に、昇りゆく太陽を見守った。
「春、ちゃんと最後の1粒まで飲み干せよ~。」
「分かってる。」
春は上を向き、逆さに缶を振る。
「あー、春がしかめっ面で汁粉ドリンクを飲む写真、ブログにアップしたら凄い事になんだろうな。」
「絶対させない。」
楽しそうに言う冬馬を春が睨む。
「分かってるよ。これは俺たちだけの恒例行事だからね。」
「じゃ、そろそろ帰るか。」
すっかり顔を出した太陽を背に、俺たちは歩き出した。
音楽を生み出し続けることは、たやすい事ではない。スッと降りて来ることもあれば、悩んで苦しんで、ぶつかって…辛い時も沢山ある。
でも、コイツらとなら乗り越えて行ける。
その自信はあった。
まだまだ俺たちの途は半ば。
でも、昇り続けるんだ。
どこまでも高く…
fin.
2016.1.4
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