#5 束の間の休息
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
楽器を置くと、どうもノリが昔に戻る。大人になったんだか、なってないんだか。音楽やってバカやって…気が付けば10年もコイツらと一緒にいる。
「秋羅、何笑ってんだよ?」
「いや、別に。今年も終わりだなぁと思っただけ。ほら、行くぞ。」
「んだよ、意味わかんねー。」
軽くストレッチすると、俺たちはサウナに戻った。
10分経っても夏輝が出ない。
「夏輝、無理すんなよ?さっきの冗談だし。」
「分かってるよ。けど、なんか悔しいだろ?」
ポタポタと髪からも汗を滴らせ、夏輝が笑う。
座ったまま俯き、ボクサーのように身じろぎもしない春。
踏ん反り返って座り、たまに首をグルグルと回す冬馬。
結局、俺たちの意地の張り合いは引き分け。
「おじさーん!ありがとうございましたー!」
夏輝が奥に声を掛けると、オヤジさんが出てくる。
「おう、疲れは取れたかぃ?」
「もうすっかり。本当に助かります。」
「そりゃ良かった。またいつでも来な。」
「お言葉に甘えて、またお邪魔させてもらいます。」
「そうそう、ここがないと俺らもう死んじゃうからね。」
「お世話になりっぱなしで…すいません。」
オヤジさんに見送られ、俺たちは車に乗り込んだ。
「ん~、復活っ!」
「あぁ、身体が軽くなったわ。」
「今日はゆっくり寝て、後はラストまで頼むぜ?酒飲むなよ?」
「「おうよ。」」
「って春は?」
夏輝は助手席をチラッと見ると微笑んだ。
「…寝てる。よっぽど疲れてたんだろ。」
そして迎えた大晦日。
ライブは22時30分スタート。
俺たちはステージ袖で向かい合う。
唸るように聞こえる歓声とJADEコール。
「今年最後、そして新年一発目のライブだ。気合い入れろよ?」
「分かってるってリーダー。最高のパフォーマンスを。」
「全力で。だろ?」
「完全燃焼するぞ。」
俺たちは拳を突き合わす。
その瞬間、スイッチが入ったように全員の目付きが変わる。
そこにいるのは、音に飢えた4匹の野獣。
「行くぞ!」
幕の降りた暗闇のステージに静かに進む。
待ってな。もうすぐ会えるからーー。
fin.
2015.12.31
4/4ページ