#2 wisdom tooth
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「やれやれ…。手の掛かる奴だ…。」
俺たちは喫煙ルームで一息ついていた。
「それにしても、春にしては寛大な采配だな。美織ちゃん行かして大丈夫なのかよ?」
「そうだよ。あの猛獣の歯を抜くったって、キバじゃなくて奥歯なんだし。」
そう言うと、春はフッと笑う。
「まぁ、今回は特別だ。いつまでもあんな状態でいられたら困るからな。一人で行かせたら逃亡するとも限らないし。美織がいれば、流石に覚悟を決めるだろ。仕事の為だ。仕方ない。」
「なるほどね。美織ちゃんの前では情けない姿晒せねぇわな。」
「でも、後悔すんなよって捨てゼリフ吐いてったけど?」
「初めての歯医者で、いきなり親知らずを抜かれるんだ。それなりに精神的ショックもあるだろう。麻酔もすぐには切れないし、そんな余裕はないと思う。」
「でも春、よく分かるね。」
「そりゃ…、弟たちを見てきたから。」
「結局は、子供と一緒ってことか。」
俺たちは、声を上げて笑った。
一方その頃、冬馬たちは…。
あの冬馬さんが黙りこくって、何度目かのため息をついた。
いつも明るくて、その場の雰囲気を一気に変えてしまう冬馬さん。会う度に私をハグして、メンバーの皆さんに怒らるけど…
いつも一人で活動していて、まだこの業界にも慣れず何かと心細い私は、冬馬さんから元気を貰うことが多かった。
(冬馬さん、不安なんだろうな。私も歯医者さんは苦手だし…。)
心配になって冬馬さんの顔を覗き込む。
「ん?なに?」
「あ、ごめんなさい。だいぶん痛むのかなと思って…。」
「ん、もうね、あっちもこっちもズキズキして訳分かんなくなってきた。美織ちゃんごめんね、折角の半オフをこんな事に付き合わせて。」
「そんなことないです!私でちょっとでもお役に立てるなら嬉しいです。」
「ほんと?じゃあ俺のお願い聞いてくれる?」
「何ですか?」
「着くまで、手、繋いでてほしいんだけどな。安心するから。」
「ふふっ、いいですよ。」
(何だか、冬馬さんカワイイ。)
そっと手を繋ぐ。すると、不意に耳元に顔を寄せて囁かれた。
「あいつらには、絶対ナイショな。それともう一つ。頑張ったご褒美に…」