静かに揺れる波の音が囁くように聞こえる。



昼は暖かいと言っても、夜になれば北風が肌に刺さるように寒い。



息を吐くと……まぁ、白くはならない。


そんな気候。






私は運悪く１週間不寝番になってしまった。



久しぶりに賭けで負けてしまったのだ。





あの泥棒猫がイカサマでもしたんじゃないか…なんて考えながら甲板を目指して歩く。




薄ら甲板に1人の人影が見えた。






『…あのクソマリモ……』






月を見ながら酒？いつも昼間寝てる癖に…

こんな寒い日じゃなくても……



風邪ひk……馬鹿は風邪ひかない…か……








『こんな夜に月見酒か？』



「…っ？！」



『笑笑 何驚いてんの…人の気配が分からないようじゃ剣士失格なんじゃないの？？』







いつものように大きい声で怒鳴ってくるだろうと思い背を向けたが、あぁ としか返事が返って来なかった。



少し驚きながら私の不寝番の定位置まで歩く。









「……くいな…」









聞いたことがない女の名前が聞こえ、思わず振り返った。



よく見るとコップははゾロが持っている一つともう一つ。二つあった。



ゾロは俯いて女の名前を呟いていた。








昔に振られた女か？それとも…




この先は考えるのをやめた。




胸が苦しくなってきたからだ。












ゾロはしばらく海を見ていた。



月の光に照らされて顔が見える。







なんでそんな顔してんだよ……





私なら……


なんて……






きっと…くいな って人は綺麗だったんだろうな…



私は彼女になりたいよ…







そんな海の方を見ないで…私を見て…