〈序章 壱〉プロローグ~平安~
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芦屋 道満の封印の一件から、数日後……。
ー内裏・紫宸殿にてー
「雪菜よ、急ぎ此方に呼び出して済まなかったな。」
『いえ。帝からの御呼び出しと有らば、馳せ参じぬ訳には参りません。 して、此度の御呼び出しとは如何なる御用向きでしょうか?』
「うむ。 御主を此処へ呼び出したは、訳が有っての事なのだ。」
『訳……ですか? 私としては、帝直々の呼び出しを承る様な心当たりは、あまり在りませぬが……その訳とは、一体……?』
「その”訳„を話すのは、もう暫し待って貰いたい。 時に、雪菜。 近々、鬼狩りの組織に本格的に関わる事に成るそうだが……事実だろうか?」
『え? ええ、事実に御座います。 安倍晴明より帝へ御報告が成された為、詳細については御存じかと思いますので、省かせて頂きますが……此度の一件では、宮廷の陰陽寮に属す陰陽師の者では御座いませんでしたが、陰陽師の中から”鬼„と云う存在を出してしまった件でも御座います。 故に、晴明殿には引き続き道長様を含む藤原一門の御抱え陰陽師として活動して頂き、私の方で産屋敷家を含む鬼狩りの組織にて御抱え陰陽師兼相談役及び鬼狩りとして活動する予定に御座います。 私と晴明殿、其々の立場…立ち位置から道長様並びに藤原一門、産屋敷家並びに鬼狩りの組織双方の守護・加護に勤める所存に御座います。 ですが、万が一の折は帝並びに天皇家…この国が最優先と成る事を御忘れ無き様、御承知下さいませ。』
「そうか……。 御主にも晴明にも大変な役目を担って貰って居る故、呉々も無理の無き様にと晴明へもそう言伝てよ。」
『御意』
「して、雪菜よ。」
『はい、何で御座いましょう?』
「此れ以降我は、水蓮として御主に接する事とする。 先程云った御主を呼び出した訳も”其れ„が理由だ。」
『承知致しました。 其れで、呼び出しの理由と云うのは……?』
「うむ、御主に〝あるモノ〟を渡したくてな……。」
『〝あるモノ〟……ですか?』
「そうだ、此れからある人物を此処へ呼ぶ。 御主同様、呼び出して別の場所にて、待機して居て貰ったのだ。」
『ある人物……。(誰……なのだろう? その、人物と云うのは。 紫宸殿に呼ばれると云う事は、公家以上の殿上人に違い無いだろうけど……。)』
……等と、殿上人の知り合いを頭の中で幾つか思い浮かべてみる雪菜だったが、何れも此の場に呼ばれる様な心当たりが無い者達ばかりだった。
パンパン!
「主上 、何で御座いましょう?」
「待機して居る者を此れへ。」
「承知致しました、直ぐに。」
「うむ。」
ー帝の側近が、席を離れて四半刻後……ー
「主上、御連れ致しました。」
「帝に置かれましても、息災の様で安心致しました。 この様に拝顔する事が出来ました事、心より御喜び申し上げます。」
「そちも息災の様で何よりだ、 頼光よ。」
「はっ! 勿体無き御言葉、衆悦至極に御座います。」
『?!(頼光……頼光って、あの源 頼光殿っ?!)』
「して、私を此処へ呼んだのは、如何なる御用向きでしょうか?」
「うむ、此処に居る水蓮へそちに持参して貰った〝モノ〟を渡したくてな。」
『この様な場にて顔を逢わせるのは、久方振りに御座いますね? 頼光殿。』
「水蓮様? 何故、貴女様が此方に……?」
『私も貴殿と同様の理由です。』(苦笑)
「何と、左様で御座いましたか……。 私は帝より、”鬼„と云う存在と其れに抗う組織について聞き及びました。 其れの他に〝宮廷陰陽師と鬼狩り……と云う二足の草鞋の立場で在り、鬼の始祖との因縁が水蓮自身にも有る故、天皇家並びに国の行く末の為にも鬼の始祖足る鬼舞辻無惨の討伐を達成せんとする水蓮の助けに成れば……〟との帝直々の打診にて、”此れ„を持参して参りました。」
そう云いつつ、自分の右側へ置いて居た長方形の袋……所謂、刀袋を帝や雪菜に見せるべく、頼光は自身の膝元へと置き直すのだった。
『”此れ„は?』
「”此れ„は以前、私と部下の四天王とでとある〝鬼〟の討伐に向かい、討ち取った際に使用して居た”刀„に御座います。 帝より、私から水蓮様へ渡して欲しいと……。」
『あの〝鬼〟の討伐の一件は、私自身も陰陽尞にて、聞き及んで居りましたが……酒呑童子の討伐、心より御祝い申し上げます。』(ペコリ)
「有り難う御座います、水蓮様。 次は、貴女様がこの”刀„で鬼の始祖の討伐達成を叶えて下りませ。」
『ならば、帝や貴殿の御期待に応えぬ訳には、参りませんね? では、頼光殿。 この刀は、有り難く受け取らせて頂きます。』
「この”刀„と共に、私と部下で有る四天王共々の御心は貴女様と共に在る事をどうか、御忘れ無き様……御願い申します。」
『承知致しました。』
「此れにて、御主達を此処へ呼んだ用も済んだ。 後は、其々で解散とする。」
『「この様な機会を頂き、有り難う御座いました。 では、此れにて失礼致します。」』
「うむ。」
ー講して、源 頼光より”刀„を受け取った雪菜。 この刀が後に、本当に無惨討伐の一助に成るとは、この時は誰も知る良しも無いー
* * * *
その後、紫宸殿を辞した雪菜は、頼光と帝の想いに思いを馳せつつ、安倍邸への帰路に着くのだった。
ー安倍邸ー
「御帰りなさいませ、雪菜様。 帝からの御呼び出しの件……如何だったのですか?」
『只今、戻りました。 晴明殿、帝の件は部屋に戻り次第、御伝えしますね。』
「承知致しました。 あぁ、其れと雪菜様。」
『ん? 何か有りましたか?』
「昌浩の奴が、まだかまだかと首を長くして部屋で待って居りますよ?」
『え? 昌浩が……ですか?』
「えぇ。 儂の事は後でも構いませんので、昌浩の所へ顔を出してやって下さい。」
『ふふっ、判りました。 晴明殿がそう仰るならば、そうさせて頂きます。 では後程、部屋へ伺わせて頂きますね。』
「そうして下さいませ。 彼奴にも、困ったもんです。」(フゥ…溜め息)
『晴明殿にとっては、孫で有ると同時に〝大事な〟唯一の後継者ですからね。』
「えぇ、全くです。 ……にも関わらず、昌浩は無茶ばかりで心配事が尽きませぬよ。」
『其れでも、昌浩の事を私も晴明殿も見守ってらっしゃるのですから、御互い様なのでは?』
「確かに、雪菜様の仰る通りですね。」(苦笑)
そんな会話の後、雪菜は昌浩の部屋を訪れるのだった。
ー昌浩の部屋ー
「姉上っ! 主上から呼び出されたって、聞きましたけど……本当何ですかっ?!」
「雪菜、帝は何の用でお前を呼び出したんだ?」
『まぁまぁ、二人共少し落ち着いて? 其れについては、呼び出されたのは本当。 後で、晴明殿にも話す事だから話すけど……本来なら、家族等の身内で在っても他言無用の事柄故、追い其れと誰かに話す事は憚れる事だからね?』(苦笑)
「あっ、そうでした……。」(シュン…)
「まぁ、次から気を付ければ良いって事だ! そう落ち込むな、晴明の孫」
「孫、云うな! もっくん!!」
「やんのか、晴明の孫。」
「何をぉーー!」
云い合いをしつつも、確かな信頼関係を築いて居る二人の様子に、ほっこりとする雪菜だった……のだが。
『あらまぁ、ふふっ。
喧嘩中の御二人さん? 帝からの呼び出しの件、二人に話そうと思ったんだけど……このまま、喧嘩するなら(話すの)止めとく?』
喧嘩ばかりな為、見兼ねた雪菜は二人に対し……『ごめんね?』と心の中で謝りつつ、少々脅した。
其れを聞いた二人はと云うと──?
「「(姉上/雪菜)の話を聞(きたいです/かせろ)っ!!」」
直ぐ様、喧嘩を中止した。
『なら、ちゃんと話を聞く体勢に成らないと話せないけど?』
「「判(りました/った)!」」
ババッ……!
そんな二人の様子に、少しばかり呆れつつも『昌浩ともっくんって、似た者同士なのかもなぁ。』と、心の中で思った雪菜だった。
ー昌浩の部屋へ来て、数刻後……。ー
『さてと、そろそろ晴明殿の部屋へも伺わないと……。』
「えっ?! もうそんなに時間が経ってたんですか?!」
「もうそんな時間なのか……。 楽しい時間ってのは、やっぱり時間の経過が早いな。」
「うんうん。 確かに、時間が早く成った様に感じるよね。」
『じゃあ、昌浩にもっくん。 あまり明日に響かない程度に、身体を休めなさいね?』
「「判(りました/った)、おやすみ(なさい)。」」
『えぇ、おやすみ。』
ー所変わって、晴明の部屋ー
「昌浩達は、休みましたか?」
『えぇ。 二人には、明日に備えて休む様……云って来ましたので、今頃は寝て居ると思いますよ?』
「左様ですか。 では、帝の呼び出しの件ですが……。」
『えぇ。 その話をすべく、昌浩達には休んで貰った様なものですから。
早速ですが、帝の呼び出しの件は……──。』
その後、雪菜の口から語られた話は、晴明に全て伝えられた。 昌浩達に話した内容は、ほんの極一部に過ぎないのだった。
『───との事ですが、晴明殿の御意見は?』
「ふむ……。 儂としては、雪菜様が帝へ進言した通りの方法の方が、今後の対策等の事を考えるならば、その方が双方にとっては最善かと思います。」
『では、晴明殿も今回の件については、異論無し……と云う事で宜しいのですね?』
「はい。 後の事に尽きましては、雪菜様の方から手紙ないし、今回の様な報告ないしで御伝え頂ければ、儂としては其れだけで十分です。」
『判りました。 ではその都度、手紙や口頭での報告で晴明殿へ御伝えしますね。』
「えぇ、御願い致します。其れと、産屋敷家や鬼狩りの事……全て、雪菜様に頼り切りに成って仕舞う事は、儂としては心苦しいのですが……“何かしら相談には乗れるかと存じますので何時でも御相談下さって構いません〟と、その旨を産屋敷家へ雪菜様の方から御伝え下さいませ。」
『晴明殿からの提案……必ず、産屋敷家へ御伝えします。』
「宜しく御願い申します。」
晴明との話し合いは二~三刻程に上り、産屋敷家での鬼狩り達を交えた話し合いに備えて、話を詰めるのだった。
講して、雪菜の長い夜は吹けて行くのだった──。
* * * *
ー内裏・紫宸殿にてー
「雪菜よ、急ぎ此方に呼び出して済まなかったな。」
『いえ。帝からの御呼び出しと有らば、馳せ参じぬ訳には参りません。 して、此度の御呼び出しとは如何なる御用向きでしょうか?』
「うむ。 御主を此処へ呼び出したは、訳が有っての事なのだ。」
『訳……ですか? 私としては、帝直々の呼び出しを承る様な心当たりは、あまり在りませぬが……その訳とは、一体……?』
「その”訳„を話すのは、もう暫し待って貰いたい。 時に、雪菜。 近々、鬼狩りの組織に本格的に関わる事に成るそうだが……事実だろうか?」
『え? ええ、事実に御座います。 安倍晴明より帝へ御報告が成された為、詳細については御存じかと思いますので、省かせて頂きますが……此度の一件では、宮廷の陰陽寮に属す陰陽師の者では御座いませんでしたが、陰陽師の中から”鬼„と云う存在を出してしまった件でも御座います。 故に、晴明殿には引き続き道長様を含む藤原一門の御抱え陰陽師として活動して頂き、私の方で産屋敷家を含む鬼狩りの組織にて御抱え陰陽師兼相談役及び鬼狩りとして活動する予定に御座います。 私と晴明殿、其々の立場…立ち位置から道長様並びに藤原一門、産屋敷家並びに鬼狩りの組織双方の守護・加護に勤める所存に御座います。 ですが、万が一の折は帝並びに天皇家…この国が最優先と成る事を御忘れ無き様、御承知下さいませ。』
「そうか……。 御主にも晴明にも大変な役目を担って貰って居る故、呉々も無理の無き様にと晴明へもそう言伝てよ。」
『御意』
「して、雪菜よ。」
『はい、何で御座いましょう?』
「此れ以降我は、水蓮として御主に接する事とする。 先程云った御主を呼び出した訳も”其れ„が理由だ。」
『承知致しました。 其れで、呼び出しの理由と云うのは……?』
「うむ、御主に〝あるモノ〟を渡したくてな……。」
『〝あるモノ〟……ですか?』
「そうだ、此れからある人物を此処へ呼ぶ。 御主同様、呼び出して別の場所にて、待機して居て貰ったのだ。」
『ある人物……。(誰……なのだろう? その、人物と云うのは。 紫宸殿に呼ばれると云う事は、公家以上の殿上人に違い無いだろうけど……。)』
……等と、殿上人の知り合いを頭の中で幾つか思い浮かべてみる雪菜だったが、何れも此の場に呼ばれる様な心当たりが無い者達ばかりだった。
パンパン!
「
「待機して居る者を此れへ。」
「承知致しました、直ぐに。」
「うむ。」
ー帝の側近が、席を離れて四半刻後……ー
「主上、御連れ致しました。」
「帝に置かれましても、息災の様で安心致しました。 この様に拝顔する事が出来ました事、心より御喜び申し上げます。」
「そちも息災の様で何よりだ、 頼光よ。」
「はっ! 勿体無き御言葉、衆悦至極に御座います。」
『?!(頼光……頼光って、あの源 頼光殿っ?!)』
「して、私を此処へ呼んだのは、如何なる御用向きでしょうか?」
「うむ、此処に居る水蓮へそちに持参して貰った〝モノ〟を渡したくてな。」
『この様な場にて顔を逢わせるのは、久方振りに御座いますね? 頼光殿。』
「水蓮様? 何故、貴女様が此方に……?」
『私も貴殿と同様の理由です。』(苦笑)
「何と、左様で御座いましたか……。 私は帝より、”鬼„と云う存在と其れに抗う組織について聞き及びました。 其れの他に〝宮廷陰陽師と鬼狩り……と云う二足の草鞋の立場で在り、鬼の始祖との因縁が水蓮自身にも有る故、天皇家並びに国の行く末の為にも鬼の始祖足る鬼舞辻無惨の討伐を達成せんとする水蓮の助けに成れば……〟との帝直々の打診にて、”此れ„を持参して参りました。」
そう云いつつ、自分の右側へ置いて居た長方形の袋……所謂、刀袋を帝や雪菜に見せるべく、頼光は自身の膝元へと置き直すのだった。
『”此れ„は?』
「”此れ„は以前、私と部下の四天王とでとある〝鬼〟の討伐に向かい、討ち取った際に使用して居た”刀„に御座います。 帝より、私から水蓮様へ渡して欲しいと……。」
『あの〝鬼〟の討伐の一件は、私自身も陰陽尞にて、聞き及んで居りましたが……酒呑童子の討伐、心より御祝い申し上げます。』(ペコリ)
「有り難う御座います、水蓮様。 次は、貴女様がこの”刀„で鬼の始祖の討伐達成を叶えて下りませ。」
『ならば、帝や貴殿の御期待に応えぬ訳には、参りませんね? では、頼光殿。 この刀は、有り難く受け取らせて頂きます。』
「この”刀„と共に、私と部下で有る四天王共々の御心は貴女様と共に在る事をどうか、御忘れ無き様……御願い申します。」
『承知致しました。』
「此れにて、御主達を此処へ呼んだ用も済んだ。 後は、其々で解散とする。」
『「この様な機会を頂き、有り難う御座いました。 では、此れにて失礼致します。」』
「うむ。」
ー講して、源 頼光より”刀„を受け取った雪菜。 この刀が後に、本当に無惨討伐の一助に成るとは、この時は誰も知る良しも無いー
* * * *
その後、紫宸殿を辞した雪菜は、頼光と帝の想いに思いを馳せつつ、安倍邸への帰路に着くのだった。
ー安倍邸ー
「御帰りなさいませ、雪菜様。 帝からの御呼び出しの件……如何だったのですか?」
『只今、戻りました。 晴明殿、帝の件は部屋に戻り次第、御伝えしますね。』
「承知致しました。 あぁ、其れと雪菜様。」
『ん? 何か有りましたか?』
「昌浩の奴が、まだかまだかと首を長くして部屋で待って居りますよ?」
『え? 昌浩が……ですか?』
「えぇ。 儂の事は後でも構いませんので、昌浩の所へ顔を出してやって下さい。」
『ふふっ、判りました。 晴明殿がそう仰るならば、そうさせて頂きます。 では後程、部屋へ伺わせて頂きますね。』
「そうして下さいませ。 彼奴にも、困ったもんです。」(フゥ…溜め息)
『晴明殿にとっては、孫で有ると同時に〝大事な〟唯一の後継者ですからね。』
「えぇ、全くです。 ……にも関わらず、昌浩は無茶ばかりで心配事が尽きませぬよ。」
『其れでも、昌浩の事を私も晴明殿も見守ってらっしゃるのですから、御互い様なのでは?』
「確かに、雪菜様の仰る通りですね。」(苦笑)
そんな会話の後、雪菜は昌浩の部屋を訪れるのだった。
ー昌浩の部屋ー
「姉上っ! 主上から呼び出されたって、聞きましたけど……本当何ですかっ?!」
「雪菜、帝は何の用でお前を呼び出したんだ?」
『まぁまぁ、二人共少し落ち着いて? 其れについては、呼び出されたのは本当。 後で、晴明殿にも話す事だから話すけど……本来なら、家族等の身内で在っても他言無用の事柄故、追い其れと誰かに話す事は憚れる事だからね?』(苦笑)
「あっ、そうでした……。」(シュン…)
「まぁ、次から気を付ければ良いって事だ! そう落ち込むな、晴明の孫」
「孫、云うな! もっくん!!」
「やんのか、晴明の孫。」
「何をぉーー!」
云い合いをしつつも、確かな信頼関係を築いて居る二人の様子に、ほっこりとする雪菜だった……のだが。
『あらまぁ、ふふっ。
喧嘩中の御二人さん? 帝からの呼び出しの件、二人に話そうと思ったんだけど……このまま、喧嘩するなら(話すの)止めとく?』
喧嘩ばかりな為、見兼ねた雪菜は二人に対し……『ごめんね?』と心の中で謝りつつ、少々脅した。
其れを聞いた二人はと云うと──?
「「(姉上/雪菜)の話を聞(きたいです/かせろ)っ!!」」
直ぐ様、喧嘩を中止した。
『なら、ちゃんと話を聞く体勢に成らないと話せないけど?』
「「判(りました/った)!」」
ババッ……!
そんな二人の様子に、少しばかり呆れつつも『昌浩ともっくんって、似た者同士なのかもなぁ。』と、心の中で思った雪菜だった。
ー昌浩の部屋へ来て、数刻後……。ー
『さてと、そろそろ晴明殿の部屋へも伺わないと……。』
「えっ?! もうそんなに時間が経ってたんですか?!」
「もうそんな時間なのか……。 楽しい時間ってのは、やっぱり時間の経過が早いな。」
「うんうん。 確かに、時間が早く成った様に感じるよね。」
『じゃあ、昌浩にもっくん。 あまり明日に響かない程度に、身体を休めなさいね?』
「「判(りました/った)、おやすみ(なさい)。」」
『えぇ、おやすみ。』
ー所変わって、晴明の部屋ー
「昌浩達は、休みましたか?」
『えぇ。 二人には、明日に備えて休む様……云って来ましたので、今頃は寝て居ると思いますよ?』
「左様ですか。 では、帝の呼び出しの件ですが……。」
『えぇ。 その話をすべく、昌浩達には休んで貰った様なものですから。
早速ですが、帝の呼び出しの件は……──。』
その後、雪菜の口から語られた話は、晴明に全て伝えられた。 昌浩達に話した内容は、ほんの極一部に過ぎないのだった。
『───との事ですが、晴明殿の御意見は?』
「ふむ……。 儂としては、雪菜様が帝へ進言した通りの方法の方が、今後の対策等の事を考えるならば、その方が双方にとっては最善かと思います。」
『では、晴明殿も今回の件については、異論無し……と云う事で宜しいのですね?』
「はい。 後の事に尽きましては、雪菜様の方から手紙ないし、今回の様な報告ないしで御伝え頂ければ、儂としては其れだけで十分です。」
『判りました。 ではその都度、手紙や口頭での報告で晴明殿へ御伝えしますね。』
「えぇ、御願い致します。其れと、産屋敷家や鬼狩りの事……全て、雪菜様に頼り切りに成って仕舞う事は、儂としては心苦しいのですが……“何かしら相談には乗れるかと存じますので何時でも御相談下さって構いません〟と、その旨を産屋敷家へ雪菜様の方から御伝え下さいませ。」
『晴明殿からの提案……必ず、産屋敷家へ御伝えします。』
「宜しく御願い申します。」
晴明との話し合いは二~三刻程に上り、産屋敷家での鬼狩り達を交えた話し合いに備えて、話を詰めるのだった。
講して、雪菜の長い夜は吹けて行くのだった──。
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