〈序章 壱〉プロローグ~平安~
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ー「自分(道満自身)を永久的に封印し、尚且つ晴明と雪菜……どちらかの手で滅して欲しい」ー
道満からの此の二つの依頼に、雪菜と晴明は……どんな答えを出すのか──?
* * * *
ザッ……。
道満からの依頼に、雪菜は道満の前に両膝を付いた。 そして──。
『……道満殿。 先程も貴方に申し上げた通り、私達は貴方の意思を尊重したいと、思って居ります。』
道満「ならば……」
ザッ……。
晴明も雪菜同様、道満の前に片膝を付き……。
「あぁ。 道満……御主たっての頼みで有る以上、儂等が封印をしよう。」
道満「そうか……ならば、此れ以上の被害を出す前に……頼む。」(ペコリ)
『「判(った/りました)。」』(コクッ)
『晴明殿。』
「何でしょうか? 雪菜様。」
『晴明殿、道満殿の封印は……貴方が施して下さい。』
「……何故です?」
『晴明殿、貴方御自身の事ですから、貴方が一番判って居る事と思います。ですが、貴方自身の気持ちの踏ん切りの為にも……貴方が道満殿の封印をすべきです。』(真顔)
「フッ………やはり、貴女様には隠し事は出来ませぬな……。」(苦笑)
『ふふっ……貴方を常日頃から見ていれば、自ずと判りますよ。 晴明殿が無理をしている事位……見抜くのは、容易い事ですよ?』(苦笑)
「………では、儂が道満を封印する事に、雪菜様は異論は無いのですね?」
『えぇ、道満殿の為にも晴明殿が封印をするのが、最善でしょうから。』
「承知致しました。 道満も其れで良いか?」
道満「あぁ、其れで構わぬ。」
「判った、雪菜様。」
『ん?』
「済みませぬが、掌に乗る大きさ程の水晶玉を御持ちで有れば、御借りしても宜しいでしょうか?」
此の様な事を晴明から聞かれた雪菜だったが……。
『水晶玉なら、此処に幾つか所持してますから……其れで良ければ。』
ゴソゴソ……、スッ。
『どうぞ。』
そう云いつつ、狩衣の懐へと片手を入れ、晴明が所望する水晶玉を取り出しながら、晴明へ譲り渡すのだった。
「有り難う御座います、雪菜様。」
晴明は、雪菜から譲り渡された水晶玉を受け取りつつ、御礼を云うのだった。
そして、道満を封印する為の準備を黙々と進め、いよいよ道満を封印する刻限と成った。
封印の術式に臨む晴明は、左手に雪菜から譲り受けた水晶玉を持ち、右手で作った刀印の形を取った手を、下唇へと右手の人差し指を添えながら、呪を唱えて行き……道満を封印する為の術式を施して行くのだった──。
「“勤請し願い奉る 高天原に坐わす 別つ神天つ神 東方降三世 夜叉明王 西方大威徳 夜叉明王 南方軍多利 夜叉明王 北方金剛 夜叉明王 古より日ノ本の国 を守護せし 八百万の神々…我が願い聞き届け給え”。
“我が前に坐す者、名を〝芦屋 道満〟鬼と成りし者為り。 彼の者、封印及び浄化を願い…我、此れを聞き届けたり。水晶玉 に彼の者、封印せん”っ!」
晴明が道満の封印をする為の過程を晴明の背中越しに、数歩後ろから眺めて居た雪菜は徐に、右手で刀印を作り……晴明と同様、下唇に人差し指を添えた。 そして、“呪”を唱え始めるのだった。
『“高天原に坐わす 別つ神天つ神 日ノ本の国を支えし神々 高御産巣日神 神産巣日神 宇摩志阿斯訶備比古遅神 天之常立神よ 我が神名〝天御中主之神〟の名に於いて命ず 我が声に応え、聞き届け給え”。』
《──ッ?! 其の御声は……〝天帝様〟っ?!》
『《急な”呪“に寄る連絡で済まない。 少々、厄介事が現し世で今現在…発生して居る直中なのでな。 其の厄介事についてだが、現し世にて「鬼擬き」が人を襲い喰らう上、暴れて居る為だ…。 あぁ…「鬼擬き」と云うのは、我等神々の視点での呼び名に成るが、人からの呼び名は「鬼」だ。 其の様な経緯により…“別つ神・五柱の一柱”として、此の件をそなた等へと連絡した次第だ。》』
《左様でしたか……。 委細、了解致しました。 では……我等残り、四柱は安倍 晴明の願いを聞き届ければ、宜しいのですか?》
『《えぇ、力添えは我自らが行う故……願いの方を頼めるだろうか?》』
《”天帝“足る、貴女様よりの願いでも有ります故、安倍 晴明の願い……聞き届ける事と致しましょう。》
『《為れば、頼んだ。》』
《はい、承知致しました。》
『(フゥ……。 此れで、道満殿を封印する為の術式を確実に発動させる事が可能とする事が出来た……。 後は、晴明殿次第……。)』
雪菜は心の中でそう呟き、道満を封印する様子を見詰めるのだった。
* * * *
封印の術式もいよいよ大詰めを迎えた。
パァァァ―――ッ!!
眩い光が落ち着いた頃……晴明は溜め息を吐いた後、雪菜の方を振り返り……──。
「無事、道満の封印を終えました。」
……と、呟いたのだった──。
しかし、晴明の眼にはうっすらと光るモノが……。
其れには見て見ぬ振りをした雪菜は、晴明へ微笑みこう返した……。
『そうですか、無事に封印を終える事が出来ましたか……。 良かった……。』(ホッ…)
「有り難う御座いました、雪菜様。 道満の封印の為とは云え、力添えをして下さったのでしょう?」
『御礼等…良いのですよ、晴明殿…。私は、晴明殿の道満殿に対する想いを優先しただけですから。』
「其れでも、力添えをして下さった事に変わりは在りません。 本当に、有り難う御座いました……雪菜様。」(ペコッ)
『フフッ……晴明殿、貴方の神々に対する姿勢は〝安倍の童子〟と、呼ばれて居た頃から変わりませんね。 貴方の其の優しい御心は、何時も私を和ませてくれてますし、私からの細やかな御礼ですから御気に為さらず、御受け取り下さい。』(苦笑)
「判りました。 雪菜様の御気持ち…有り難く、受け取らせて頂きます。」
『フフッ……さてっ! では、優月の背に乗って都へ戻りましょうか。 耀李様も今回の件について、首を長くして報告を待って居る事でしょうから、早く安心させて差し上げたいですしね。』(ニコッ)
「えぇ、そうですな。」
そんな会話の後、晴明と雪菜は優月の背に乗り……都への帰路に着くのだった──。
* * * *
ー後日、産屋敷邸ー
人払いの済んだ部屋にて、産屋敷家当主と顔を会わせるは、晴明と雪菜のみ。
『耀李様、今度の一件の報告に御伺い致しました。』
「此方まで御足労して頂き、有り難う御座います。 晴明様、雪菜様。」
「では、今回の件についての報告を儂からさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」
「はい、今回の件について……詳しい説明の程、宜しく御願い申します。」(ペコリ)
「承知致しました。 では、今回の件についてですが……。」
* * * *
晴明が、産屋敷家の当主へ今回の件について、説明し始めて……数刻──。
「────と、云う結果に最終的には成って仕舞う事と成りました……。」
「そうですか……、晴明様の御友人の方が鬼に……其れも、鬼の始祖である〝鬼舞辻 無惨〟によってとは……。」
「はい……。 本人と直接対峙した時点で既に、人を喰らって居た様子でしたし、気配自体も普段とは違う鬼の気配でしたが……本人の理性については、目覚めた当初からはっきりして居った様です。 我ながら御恥ずかしい限りですが……本人からの要望により、雪菜様の助力も御借りし、無事に封印する事が出来ました。」
「封印をされたのは、御友人の方の要望で……ですか?」
「はい、本人自身が望み……そうして欲しいとの願いが有った為です。 」
「雪菜様もさぞ、御辛かったのでは……?」
『いえ……。 私は晴明殿程、あまり親しくは在りませんでしたし……彼自身とも、其なりの顔見知りと云う程度の関係でしたので、私個人としては其れ程には……。』(苦笑)
「………そう…なの…ですか…。」
『はい……。 時に、耀李様。』
「はい、何でしょうか……? 雪菜様。」
産屋敷家当主である耀李は、やや怪訝そうに問い掛けて来た雪菜の顔を見た。
『此の際ですから、耀李様に御聞き致しますが……耀李様の御家族や一族の者達、“鬼狩り”の組織に於いて、私の事は何と話をされて居たのですか?』
「雪菜様の事を……ですか?」
『はい、私の事をどう……皆に伝えて居られたのか、少々気に成りまして。』
「皆にどう、伝えて居たか……ですか……?
えーっと……確か、私の家族並びに一族の者達には、雪菜様の事については大内裏の役所の一つ、陰陽寮及び内裏内での”呼び名“である〝水蓮〟の名の方で伝えて居たかと……。其れに、“鬼狩り”の組織では〝水蓮〟と、云う名のみ伝えて有るだけですが……。」
耀李は思い出しつつ、そう…雪菜と晴明へ話した。
『”其れ“ならば、まぁ……良いかと思うのですが……。』
「えっ? 其れは、どう云う”意味“で……ですか……?」
『”意味”と、云うよりかは……”今後に差し支え兼ねない“……としか、今は申し上げられません。』
「其れはつまり、雪菜様の思う懸念……其れが何れ、”今後の未來に差し支える“事が起こり得る……若しくは、“未來に関係する”事に繋がるが故……ですか?」
『………。』
「雪菜様、貴女様が気に為さる事は今の所……無いのでは?」
『確かに、〝今は〟晴明殿の云う通りかも知れません。 ですが……何れ、其の事が懸念される事態に成り兼ねないので在れば……尚更、話は別です。』
「「“今は〟……?」」
雪菜の云う〝今は〟と云う言葉……何れ、晴明も耀李も……先見の明や式占により訳と意味を知る事と成るのだが……其れは、まだ先の話──。
其処で雪菜は話を逸らす為、とある質問を晴明に投げ掛けるのだった。
『晴明殿。一つ御聞きますが、神々や陰陽師で在る私達にとって……”最も大切なモノ“又は、“大切にしなければ成らないモノ”と云えば、何と答えますか?』
「“大切なモノ”……?」
「ふむ。 其れはやはり、〝呪〟……でしょうな。」
『(コクリ)えぇ、晴明殿も御承知の通り……我等、陰陽師や神々にとって〝呪〟と云うのは、とても”大切なモノ“ですから。』
「〝呪〟……ですか?」
「はい。〝呪〟を扱う陰陽師にとっては、敵に〝其れ〟を知られる事自体が死活問題ですからな。」
「えっと……晴明様や雪菜様が云う〝呪〟とは……一体、何の事でしょうか?」
『クスッ、簡単に云うならば……〝呪〟と云うのは、[名]の事ですよ。 ほら、耀李様も私や晴明殿の[名]を呼んでますでしょう?』
「え、えぇ……。其れは、確かに晴明様方の[名]を呼んでは居ますが……。え、本当に……? 本当に、[名]自体が〝呪〟……なのですか? えっと、其れはつまり……?」
「つまり、我々個人が其々に持つ[名]こそが〝呪〟であり、[此の世で一番短い〝呪〟]だと云う事です。」
「ええっ!!? ∑(°Д°) ……だ、だとすれば、雪菜様の[名]はやはり……?」
『クスッ。 えぇ、耀李様の御想像通り……我が[名]である〝雪菜〟は、大内裏や内裏内での呼び名である“水蓮”の[名]とは違い、正真正銘……私自身の我が[真名]ですよ。』(苦笑)
「………っ?!(驚) Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) 」
『「………。」』
雪菜から、この様な話を聞かされた耀李は驚くと同時に「違って居て欲しい…」と、云う淡い期待を持ちつつ、晴明と雪菜の顔を交互に……見比べて見る耀李だったが……──? しかし、晴明と雪菜……二人の表情は真剣なままだった……。
「……。( ゚д゚ιι|||)
……そ、其れならば尚更、上流階級の錚々たる貴族の家柄の一つとは云え、単なる一貴族の身分に過ぎない私ごときが……本当に、貴女様の[名]を呼んで然るべき者なのでしょうか……? ……御恥ずかしい話ですが、私は無惨との邂逅の折に、危うく「雪菜」の名を呼び掛けました。寸前で呼ぶ事は有りませんでしたが……。 私には、どう判断すべきなのか……判断し兼ねて居ります……。」
「耀李様……。」
そう云い、俯く耀李の姿に……晴明は、どう声を掛けるべきか悩んだ。一方、雪菜はと云うと……?
『フッ…。 耀李様の云う不安は、悩みと云って仕舞えば其れ迄ですが……其れこそ、杞憂ですよ?』(苦笑)
「えっ、真実の事ですか……? 真実に、杞憂に過ぎませぬか? 」
『えぇ、真実です。 耀李様自身の口より、他者へ私本来の[名]が、伝わって居ないので在れば、杞憂に過ぎません。 其れに……無惨との邂逅でも、私の名を雪菜では無く……水蓮と、呼び直して居たでは有りませんか。だからこそ、無惨が知った名も「雪菜」では無く「水蓮」の名で有る事を。
そして……耀李様、御忘れでは御座いませんか? 貴方様へは、私が自分自身で「雪菜」の名を自ら貴方様に名乗って居た事を。』(ニコッ)
「あっ……!」
雪菜にそう指摘され、思い出されるのは帝の紹介により、晴明や雪菜と初めて顔を合わせた時の事──。
~回想~
『初めまして、安倍雪菜と申します。 以後、お見知り置きを。
此方に居ります……安倍晴明の右腕で有り、陰陽寮にて陰陽頭の補佐をして居ります。』
~回想・終~
「翌々思い出せば確かに、雪菜様御自身で[名]を仰って居られましたね……。」(苦笑)
『故に、耀李様に関しては杞憂だと、申し上げたのですよ。』
「其れならば、納得致しました。」
『ふふっ、耀李様の不安が消えたので在れば、良かったです。
さて、耀李様の不安要素も片付いた事ですし、今後の事を話し合いましょうか?』
「「はい」」
雪菜からの切り出しにより、今後についての話し合いが行なわれたのだった。
話し合いで議題として挙がった事、其れは──。
【鬼殺隊全体の実力】【柱に昇格する為の条件】【最終選別の方法】等についての事柄だった。
この話し合い後、〝柱〟と呼ばれる者達の誕生や育手が担う重要性と役割、最終選別について等が、次々と決定したのだった。
道満からの此の二つの依頼に、雪菜と晴明は……どんな答えを出すのか──?
* * * *
ザッ……。
道満からの依頼に、雪菜は道満の前に両膝を付いた。 そして──。
『……道満殿。 先程も貴方に申し上げた通り、私達は貴方の意思を尊重したいと、思って居ります。』
道満「ならば……」
ザッ……。
晴明も雪菜同様、道満の前に片膝を付き……。
「あぁ。 道満……御主たっての頼みで有る以上、儂等が封印をしよう。」
道満「そうか……ならば、此れ以上の被害を出す前に……頼む。」(ペコリ)
『「判(った/りました)。」』(コクッ)
『晴明殿。』
「何でしょうか? 雪菜様。」
『晴明殿、道満殿の封印は……貴方が施して下さい。』
「……何故です?」
『晴明殿、貴方御自身の事ですから、貴方が一番判って居る事と思います。ですが、貴方自身の気持ちの踏ん切りの為にも……貴方が道満殿の封印をすべきです。』(真顔)
「フッ………やはり、貴女様には隠し事は出来ませぬな……。」(苦笑)
『ふふっ……貴方を常日頃から見ていれば、自ずと判りますよ。 晴明殿が無理をしている事位……見抜くのは、容易い事ですよ?』(苦笑)
「………では、儂が道満を封印する事に、雪菜様は異論は無いのですね?」
『えぇ、道満殿の為にも晴明殿が封印をするのが、最善でしょうから。』
「承知致しました。 道満も其れで良いか?」
道満「あぁ、其れで構わぬ。」
「判った、雪菜様。」
『ん?』
「済みませぬが、掌に乗る大きさ程の水晶玉を御持ちで有れば、御借りしても宜しいでしょうか?」
此の様な事を晴明から聞かれた雪菜だったが……。
『水晶玉なら、此処に幾つか所持してますから……其れで良ければ。』
ゴソゴソ……、スッ。
『どうぞ。』
そう云いつつ、狩衣の懐へと片手を入れ、晴明が所望する水晶玉を取り出しながら、晴明へ譲り渡すのだった。
「有り難う御座います、雪菜様。」
晴明は、雪菜から譲り渡された水晶玉を受け取りつつ、御礼を云うのだった。
そして、道満を封印する為の準備を黙々と進め、いよいよ道満を封印する刻限と成った。
封印の術式に臨む晴明は、左手に雪菜から譲り受けた水晶玉を持ち、右手で作った刀印の形を取った手を、下唇へと右手の人差し指を添えながら、呪を唱えて行き……道満を封印する為の術式を施して行くのだった──。
「“勤請し願い奉る 高天原に坐わす 別つ神天つ神 東方降三世 夜叉明王 西方大威徳 夜叉明王 南方軍多利 夜叉明王 北方金剛 夜叉明王 古より
“我が前に坐す者、名を〝芦屋 道満〟鬼と成りし者為り。 彼の者、封印及び浄化を願い…我、此れを聞き届けたり。
晴明が道満の封印をする為の過程を晴明の背中越しに、数歩後ろから眺めて居た雪菜は徐に、右手で刀印を作り……晴明と同様、下唇に人差し指を添えた。 そして、“呪”を唱え始めるのだった。
『“高天原に坐わす 別つ神天つ神 日ノ本の国を支えし神々 高御産巣日神 神産巣日神 宇摩志阿斯訶備比古遅神 天之常立神よ 我が神名〝天御中主之神〟の名に於いて命ず 我が声に応え、聞き届け給え”。』
《──ッ?! 其の御声は……〝天帝様〟っ?!》
『《急な”呪“に寄る連絡で済まない。 少々、厄介事が現し世で今現在…発生して居る直中なのでな。 其の厄介事についてだが、現し世にて「鬼擬き」が人を襲い喰らう上、暴れて居る為だ…。 あぁ…「鬼擬き」と云うのは、我等神々の視点での呼び名に成るが、人からの呼び名は「鬼」だ。 其の様な経緯により…“別つ神・五柱の一柱”として、此の件をそなた等へと連絡した次第だ。》』
《左様でしたか……。 委細、了解致しました。 では……我等残り、四柱は安倍 晴明の願いを聞き届ければ、宜しいのですか?》
『《えぇ、力添えは我自らが行う故……願いの方を頼めるだろうか?》』
《”天帝“足る、貴女様よりの願いでも有ります故、安倍 晴明の願い……聞き届ける事と致しましょう。》
『《為れば、頼んだ。》』
《はい、承知致しました。》
『(フゥ……。 此れで、道満殿を封印する為の術式を確実に発動させる事が可能とする事が出来た……。 後は、晴明殿次第……。)』
雪菜は心の中でそう呟き、道満を封印する様子を見詰めるのだった。
* * * *
封印の術式もいよいよ大詰めを迎えた。
パァァァ―――ッ!!
眩い光が落ち着いた頃……晴明は溜め息を吐いた後、雪菜の方を振り返り……──。
「無事、道満の封印を終えました。」
……と、呟いたのだった──。
しかし、晴明の眼にはうっすらと光るモノが……。
其れには見て見ぬ振りをした雪菜は、晴明へ微笑みこう返した……。
『そうですか、無事に封印を終える事が出来ましたか……。 良かった……。』(ホッ…)
「有り難う御座いました、雪菜様。 道満の封印の為とは云え、力添えをして下さったのでしょう?」
『御礼等…良いのですよ、晴明殿…。私は、晴明殿の道満殿に対する想いを優先しただけですから。』
「其れでも、力添えをして下さった事に変わりは在りません。 本当に、有り難う御座いました……雪菜様。」(ペコッ)
『フフッ……晴明殿、貴方の神々に対する姿勢は〝安倍の童子〟と、呼ばれて居た頃から変わりませんね。 貴方の其の優しい御心は、何時も私を和ませてくれてますし、私からの細やかな御礼ですから御気に為さらず、御受け取り下さい。』(苦笑)
「判りました。 雪菜様の御気持ち…有り難く、受け取らせて頂きます。」
『フフッ……さてっ! では、優月の背に乗って都へ戻りましょうか。 耀李様も今回の件について、首を長くして報告を待って居る事でしょうから、早く安心させて差し上げたいですしね。』(ニコッ)
「えぇ、そうですな。」
そんな会話の後、晴明と雪菜は優月の背に乗り……都への帰路に着くのだった──。
* * * *
ー後日、産屋敷邸ー
人払いの済んだ部屋にて、産屋敷家当主と顔を会わせるは、晴明と雪菜のみ。
『耀李様、今度の一件の報告に御伺い致しました。』
「此方まで御足労して頂き、有り難う御座います。 晴明様、雪菜様。」
「では、今回の件についての報告を儂からさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」
「はい、今回の件について……詳しい説明の程、宜しく御願い申します。」(ペコリ)
「承知致しました。 では、今回の件についてですが……。」
* * * *
晴明が、産屋敷家の当主へ今回の件について、説明し始めて……数刻──。
「────と、云う結果に最終的には成って仕舞う事と成りました……。」
「そうですか……、晴明様の御友人の方が鬼に……其れも、鬼の始祖である〝鬼舞辻 無惨〟によってとは……。」
「はい……。 本人と直接対峙した時点で既に、人を喰らって居た様子でしたし、気配自体も普段とは違う鬼の気配でしたが……本人の理性については、目覚めた当初からはっきりして居った様です。 我ながら御恥ずかしい限りですが……本人からの要望により、雪菜様の助力も御借りし、無事に封印する事が出来ました。」
「封印をされたのは、御友人の方の要望で……ですか?」
「はい、本人自身が望み……そうして欲しいとの願いが有った為です。 」
「雪菜様もさぞ、御辛かったのでは……?」
『いえ……。 私は晴明殿程、あまり親しくは在りませんでしたし……彼自身とも、其なりの顔見知りと云う程度の関係でしたので、私個人としては其れ程には……。』(苦笑)
「………そう…なの…ですか…。」
『はい……。 時に、耀李様。』
「はい、何でしょうか……? 雪菜様。」
産屋敷家当主である耀李は、やや怪訝そうに問い掛けて来た雪菜の顔を見た。
『此の際ですから、耀李様に御聞き致しますが……耀李様の御家族や一族の者達、“鬼狩り”の組織に於いて、私の事は何と話をされて居たのですか?』
「雪菜様の事を……ですか?」
『はい、私の事をどう……皆に伝えて居られたのか、少々気に成りまして。』
「皆にどう、伝えて居たか……ですか……?
えーっと……確か、私の家族並びに一族の者達には、雪菜様の事については大内裏の役所の一つ、陰陽寮及び内裏内での”呼び名“である〝水蓮〟の名の方で伝えて居たかと……。其れに、“鬼狩り”の組織では〝水蓮〟と、云う名のみ伝えて有るだけですが……。」
耀李は思い出しつつ、そう…雪菜と晴明へ話した。
『”其れ“ならば、まぁ……良いかと思うのですが……。』
「えっ? 其れは、どう云う”意味“で……ですか……?」
『”意味”と、云うよりかは……”今後に差し支え兼ねない“……としか、今は申し上げられません。』
「其れはつまり、雪菜様の思う懸念……其れが何れ、”今後の未來に差し支える“事が起こり得る……若しくは、“未來に関係する”事に繋がるが故……ですか?」
『………。』
「雪菜様、貴女様が気に為さる事は今の所……無いのでは?」
『確かに、〝今は〟晴明殿の云う通りかも知れません。 ですが……何れ、其の事が懸念される事態に成り兼ねないので在れば……尚更、話は別です。』
「「“今は〟……?」」
雪菜の云う〝今は〟と云う言葉……何れ、晴明も耀李も……先見の明や式占により訳と意味を知る事と成るのだが……其れは、まだ先の話──。
其処で雪菜は話を逸らす為、とある質問を晴明に投げ掛けるのだった。
『晴明殿。一つ御聞きますが、神々や陰陽師で在る私達にとって……”最も大切なモノ“又は、“大切にしなければ成らないモノ”と云えば、何と答えますか?』
「“大切なモノ”……?」
「ふむ。 其れはやはり、〝呪〟……でしょうな。」
『(コクリ)えぇ、晴明殿も御承知の通り……我等、陰陽師や神々にとって〝呪〟と云うのは、とても”大切なモノ“ですから。』
「〝呪〟……ですか?」
「はい。〝呪〟を扱う陰陽師にとっては、敵に〝其れ〟を知られる事自体が死活問題ですからな。」
「えっと……晴明様や雪菜様が云う〝呪〟とは……一体、何の事でしょうか?」
『クスッ、簡単に云うならば……〝呪〟と云うのは、[名]の事ですよ。 ほら、耀李様も私や晴明殿の[名]を呼んでますでしょう?』
「え、えぇ……。其れは、確かに晴明様方の[名]を呼んでは居ますが……。え、本当に……? 本当に、[名]自体が〝呪〟……なのですか? えっと、其れはつまり……?」
「つまり、我々個人が其々に持つ[名]こそが〝呪〟であり、[此の世で一番短い〝呪〟]だと云う事です。」
「ええっ!!? ∑(°Д°) ……だ、だとすれば、雪菜様の[名]はやはり……?」
『クスッ。 えぇ、耀李様の御想像通り……我が[名]である〝雪菜〟は、大内裏や内裏内での呼び名である“水蓮”の[名]とは違い、正真正銘……私自身の我が[真名]ですよ。』(苦笑)
「………っ?!(驚) Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) 」
『「………。」』
雪菜から、この様な話を聞かされた耀李は驚くと同時に「違って居て欲しい…」と、云う淡い期待を持ちつつ、晴明と雪菜の顔を交互に……見比べて見る耀李だったが……──? しかし、晴明と雪菜……二人の表情は真剣なままだった……。
「……。( ゚д゚ιι|||)
……そ、其れならば尚更、上流階級の錚々たる貴族の家柄の一つとは云え、単なる一貴族の身分に過ぎない私ごときが……本当に、貴女様の[名]を呼んで然るべき者なのでしょうか……? ……御恥ずかしい話ですが、私は無惨との邂逅の折に、危うく「雪菜」の名を呼び掛けました。寸前で呼ぶ事は有りませんでしたが……。 私には、どう判断すべきなのか……判断し兼ねて居ります……。」
「耀李様……。」
そう云い、俯く耀李の姿に……晴明は、どう声を掛けるべきか悩んだ。一方、雪菜はと云うと……?
『フッ…。 耀李様の云う不安は、悩みと云って仕舞えば其れ迄ですが……其れこそ、杞憂ですよ?』(苦笑)
「えっ、真実の事ですか……? 真実に、杞憂に過ぎませぬか? 」
『えぇ、真実です。 耀李様自身の口より、他者へ私本来の[名]が、伝わって居ないので在れば、杞憂に過ぎません。 其れに……無惨との邂逅でも、私の名を雪菜では無く……水蓮と、呼び直して居たでは有りませんか。だからこそ、無惨が知った名も「雪菜」では無く「水蓮」の名で有る事を。
そして……耀李様、御忘れでは御座いませんか? 貴方様へは、私が自分自身で「雪菜」の名を自ら貴方様に名乗って居た事を。』(ニコッ)
「あっ……!」
雪菜にそう指摘され、思い出されるのは帝の紹介により、晴明や雪菜と初めて顔を合わせた時の事──。
~回想~
『初めまして、安倍雪菜と申します。 以後、お見知り置きを。
此方に居ります……安倍晴明の右腕で有り、陰陽寮にて陰陽頭の補佐をして居ります。』
~回想・終~
「翌々思い出せば確かに、雪菜様御自身で[名]を仰って居られましたね……。」(苦笑)
『故に、耀李様に関しては杞憂だと、申し上げたのですよ。』
「其れならば、納得致しました。」
『ふふっ、耀李様の不安が消えたので在れば、良かったです。
さて、耀李様の不安要素も片付いた事ですし、今後の事を話し合いましょうか?』
「「はい」」
雪菜からの切り出しにより、今後についての話し合いが行なわれたのだった。
話し合いで議題として挙がった事、其れは──。
【鬼殺隊全体の実力】【柱に昇格する為の条件】【最終選別の方法】等についての事柄だった。
この話し合い後、〝柱〟と呼ばれる者達の誕生や育手が担う重要性と役割、最終選別について等が、次々と決定したのだった。