〈序章 壱〉プロローグ~平安~
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漸く、産屋敷家当主発案の“組織”──〝鬼狩り(後の鬼殺隊)〟が発足し、少ない人数では有るが……組織として活動を始めたのだった。
ー産屋敷邸ー
『耀李様。 組織の発足について、誰かに相談はされたのですか?』
「えぇ、雪菜様。 ある神社の神主の方に相談した所……どうやら、一族の中から〝鬼〟が出て居たらしく……その〝鬼〟を倒す事に心血を注げと、云われまして。 其れで〝鬼狩り〟の創立と発足に繋がったんです。 まぁ……〝鬼狩り〟の名ですと余り、馴染みが有りませんので……“鬼殺隊”と云う、別の名称も作りましたが。
そして……病による短命については、神職の一族から妻を娶る様に……と。 さすれば、少しずつで有っても効果が現れれば、上々だろうから……と。」
『成る程、そうでしたか……。
私共も引き続き、病の原因究明及び治癒に努めます故……何なりと、申し付け下さいね?』
「有り難う御座います、雪菜様。 所で、晴明様はどうされたのですか?」
今回、産屋敷邸に赴いて居たのは、雪菜のみで……晴明の姿が見当たらず、周りをキョロキョロと見渡すも……その姿を見る事は、ついぞ出来無かったのだった。
『あぁ……すみません、耀李様。
晴明殿は今、急用が出来まして……帝の呼び出しで、内裏へ出掛けて居るんです。』
「急用……ですか?」
『えぇ。 急用とは云っても……終わり次第、此方に伺うと仰って居られましたから、その内に来られるかと。 其れ程、心配為さらず共……大丈夫でしょう。』
「そう云う事でしたら、納得致しました。」
『ふふっ、其れなら良かったです。(まぁ……晴明殿に限って、口約束で有ったにしても、約束は約束。 反古には為さら無いでしょうから。 でも、何か有ってはどうしようも無いしな……。 ……水月に様子を見て来て貰った方が、良いかな?)』
『《水月、居る?》』
《はい、此方に。》
『《悪いけど、晴明殿の様子を見て来て欲しい。 頼める……?》』
《承知致しました。》
『《お願いね?》』
《はい。》
『(何事も無ければ、良いけど……。)』
産屋敷家当主との穏やかな会話を続けながら、〝鬼殺隊〟の今後の事等についての話を詰めて行くのだった──。
そして、雪菜は晴明を案じつつも……心の中で一縷の不安を感じたのだった………。
だが、この時感じた“不安”……。
この“不安”は数日後……、的中する事に為る──。
* * * *
そんな或る日……、ある一人の陰陽師が〝鬼の始祖〟である鬼舞辻無惨と接触した……。
???「ふむ、此処が彼の者──〝鬼の始祖〟の住み処か。」
鬼舞辻「何の用だ?」
???「何、貴殿を滅す件で此処へ来たが……貴殿を一目見て、闘って見たくなった。 相手を頼めるかの?」
鬼舞辻「ふん。 老体と云えど、生粋の陰陽師とやらか……。 まぁ、良い。
私の力を思い知るが良い……。」
そうして、始まった闘い……。
暫くして──。
???「ハァ、ハァ……。(此の者の力が、此れ程とはな……。 儂でさえ、赤ん坊如きと云わんばかりの扱いとは……。 此方は、息切れして居るにも関わらず……彼方は、平然として居る。 此の差が〝鬼〟と〝人〟の差なのか……。 下に、恐ろしき哉 。)」
鬼舞辻「どうした? もう、終いか?」
???「貴殿の力は今、闘って十二分に判った……。 其れよりも、儂の気が変わったわ。 貴殿は、儂と手を組む気は無いか?」
鬼舞辻「手を組むだと……?」
???「あぁ、そうじゃ。 どうだ?」
鬼舞辻「(ニヤリ)フッ、貴様の様な老体と、手を組む気は一切無い。
貴様には精々、此れ位がお似合いだろう。」
ザシュッ……!
ドサッ!
ドクンッ………!!!
???「ぐっ……! うぅっ………!!
(なっ、何……? か、身体が熱いだとっ……?!)」
鬼舞辻「もし、生き残れたのなら……又、会う事が有るかも知れんな?」
ザッ!
???「ま、待てっ……!(生き残れたら……とは、どう云う事なのだっ?!)」
ガクッ。
時間が数刻過ぎた頃───、
気絶して居た者が、漸く目覚めた……。
だが──、この男は鬼舞辻無惨により……〝鬼〟と成ってしまったのだった。
本人に自覚は、今の所無いが。
パチッ、ムクリ……。
キョロキョロ。
???「………? 儂は一体、どうなったのだ……?
(いや、其れよりも……喉が乾いたな。 腹も減っとるし……。 此処に居るより、動くか。)」
テクテク……。
暫く歩き……辿り着いたのは、山に囲まれた小さな集落だった──。
村の外れに在る、一軒のあばら家に向かった男は……。
コンコン。
「はい?」
???「もし、悪いのだが……一晩泊めては貰えんか?」
「え、えぇ。 良いですが……御一人なのですか?」
???「あぁ、済まんが良いか?」
「分かりました、どうぞ……。」
???「悪いな。」
「いえ……。(この人の顔色は、どうしたのだろう……? あまり聞かない方が、良いだろうか……。)」
???「………。(この者を見て居ると、何故だか……食べたくなるな。
寝静まった頃、様子を見るか……。)」
「あの、食事はどうしますか……?」
???「いや? 食事は今の所は、要らぬ。」
「分かりました。 では、用意は不要なのですね?」
???「そうじゃな。」
そんな会話の後、暫くして……就寝時間。
「Zzz……。」
???「………。(寝たか……。)
では、頂きますじゃな……。」
ムシャ……グシャ……ピチャ……ゴリッ……。
???「ふぅ……御馳走様。(先程迄、感じて居た飢餓が……消えたな。 ……生身の人間を喰ったからか? 人を喰うのも、悪くは無いな……。彼奴 が云って居た〝生き残れたら……〟とは、この事だったのか……?)」
講して、男は人間を食べると言う……常軌を逸した行為を重ねて行くのだった──。
* * * *
この出来事から、数日後……。
ー京の都・夜ー
安倍邸──。
『晴明殿、此処数日……都近辺の郊外に在る山間部の集落で、人が一晩の内に数人ずつ……消えて居るそうです。』
「山間部の集落で……ですか?」
『えぇ……。 其れも主に、年若い男女だけが消えて居る様で……老人や子供、赤子を持つ夫婦等は皆、無事な方が多かったそうです。 水月に頼んで、近辺の集落の様子を調査して貰ったので……事実かと。』
「うーむ……。 年若い男女のみの被害か……。」
『産屋敷家の方へも、文は出して有りますが……我々で、対処する可能性の方が高いかと。』
「では……我々も準備が整い次第、見廻りを兼ねて向かいますか?」
『えぇ。 その方が確実ですし、村人の人達も安心するかと思いますので……。』
「承知致しました。」
『では、集落への出立は準備も有りますので、明後日に出立しましょうか。』
「えぇ、そうですな。」
『優月、結斗。 居る?』
スッ……。
「「(はい/おう)、此処に居(ます/るぞ)。」」
雪菜の声に応え、姿を現したのは……白猫と黒猫の二匹。 彼等の正体は……歴とした雪菜の式で有り、此の姿とは別に彼等自身の本性の姿を持つ、妖 である。 名を白猫が結斗、黒猫が優月と云う。
主と認めて居るのは、雪菜に対してだが……晴明にも一応、敬意を払っては居る。
『優月と結斗には其々、晴明殿と私に付いて、一緒に行動を共にして欲しい。』
「「判(りました/った)。」」
『何か有れば、結斗と優月のお互いか……若しくは、私か水月に念を送って知らせて。 頼んだよ?』
「「(はい/おう)っ!」」
「二匹共……頼もしい限りですな、雪菜様。」
『ふふっ。 えぇ、本当に……。』
講して……被害の報告が有る、山間部の集落への出立が明後日と、決まったのだった。
しかし、山間部の集落の被害は……今この瞬間も、拡大し続けて居るのだった──。
ー出立、当日ー
『さて、いよいよ出立ですが……。
晴明殿、集落に入ってからはお互いに別行動としましょう。』
「承知致しました。 ですが、連絡はどうします?」
『其れについては、昨日打ち合わせした通り……優月達に頼みましょう。 今回、優月達は私達と共に行動する予定ですし……念を使えば、お互いに連絡し合えますから。』
「成る程、その為のこの子達ですか。」
『えぇ。 優月達も宜しく頼んだよ?』
「「(はい/おう)!」」
雪菜にそう……頼み込まれた二匹は、晴明と雪菜……其々の肩の上で返事をするのだった。
『では、山間部の集落迄は……優月か結斗に乗って移動しましょう。 お願いね?』
「判りました、主。」
その返答の後、雪菜の肩から降り……。
ブワッ……!
優月の身体が大きく成り、たちまち2m程の体長に変化した。
『晴明殿、先に優月の背に乗って下さい。 私と結斗も後から乗りますので。』
「判りました、よっ……っと!」
ストンッ!
『乗れましたね? じゃ、結斗おいで。』
「おう。」
主で有る雪菜に応え、(予め、晴明の肩から地面に降りて居た)結斗は雪菜の肩に乗った。
『うん。 よっ…!』
スタッ……!
結斗が肩に乗ったのを確認し、雪菜は優月の背……晴明が座って居る位置の前方に軽々と着地し、座ったのだった。
『良し! 晴明殿も私の腰に腕を回して居て下さい、降り落ち無い為の用心に。』
「判りました。」
ギュッ……!
『うん。 じゃ、優月。 山間部の集落迄、お願い。』
「了解致しました。」
グッ、フワッ……!!
優月は足に力を入れ、空に向かって翔んだ。 其れも、背に乗る者には負担が掛からぬ様……配慮しつつ、重力を感じさせぬ程に静かに空へと昇って行った。
* * * *
暫くの空の旅を、優月の背に乗って楽しんだ雪菜達。
漸く、目的地で在る山間部の集落に到着した。
フワッ……! トッ。
スタッ。
優月が音も無く着地後、雪菜達もその背から降り、目的地の地へと足を着けた。
「此処が……被害の報告が有った、場所……集落ですか?」
『えぇ、その筈だけど……気配とか空気等が此処迄、淀んで居る何て……。』
「どうやら、此処全体の地に〝鬼〟が住み着いた影響かも、知れませぬな?」
『その可能性は、高いかも知れませんね……。 では、打ち合わせ通り……別行動で動くとして、連絡は優月達経由で。』
「えぇ。 雪菜様も呉々も御気を付けて……。」
『クスッ。 其れは、晴明殿もですよ?』
「そうですな。」
『では、お互いに気を引き締めて行きましょうか。』
「えぇ。」
バッ……!
お互いに声を掛け合い……其々、別の方向へと歩いて行った。
『(晴明殿は、大丈夫だろうか……?)』
「雪菜。 お前……晴明の事が気掛かりで、優月の方を付けたんだろ? 少しは俺達、式を信頼しろよ……。」(ハァ……。)
心配そうに先程別れた、晴明の事を気にしている雪菜に対し、呆れつつ溜め息を吐いた結斗。
『ごっ……ゴメン、 結斗……。 決して、貴方達を信頼して無い訳じゃ無いの……。』
「んじゃ、何でだ?」
『………少し前に感じた“不安”が又、嫌な“予感”として感じて居るのよ。』
「………。 其れは、お前の〝陰陽師〟としての“勘”……でか?」
『えぇ、大いに関係有ると思う。』
「………判った。 俺も、晴明の事は気に留めて置く。 優月にも注意する様、伝えて置く。」
『ん……。 有り難う、結斗。』
「良いって事よ! んじゃ、早速……。
《優月、聞こえるか? 俺だ、結斗だ。》」
「《結斗? どうしました?》」
「《雪菜から伝言。 但し、晴明に伝えるかは……任せる。 一応、優月の心の内だけに留めとけ。》」
「《判りました、其れで……主からの伝言と云うのは?》」
「《雪菜が以前、感じた“予感”がするから、注意しろってよ。》」
「《主の“予感”ですか……。 其れは、侮れませんね?》」
「《あぁ、俺達も気を引き締めて置くぞ。》」
「《えぇ、判りました。》」
「(良し、此れで少しは良いだろ。)」
『結斗、優月とは連絡取れた?』
「あぁ。 彼方も気を引き締めて、注意して置くとさ。」
『そう……。』
「ほれっ! 此処の見廻りも兼ねてるんだから、さっさと済ませて優月達に合流するぞ!」
『ふふっ、判った。』
そんな会話をしつつ、雪菜と結斗のコンビは、着々と見廻りをして行くのだった。
* * * *
一方、晴明と優月のコンビは……。
「(ふむ、主の“予感”か……。 此処の見廻りを逐える迄、気を抜けませんね。)あの……晴明様。」
「何かな?」
「何か、感じたりしましたら……遠慮無く、御伝え下さいね?」
「えぇ、判って居ります。」
「なら、良いのですが……。」
「其れにしても……此処の見廻りを兼ねては居るとは云え、此処迄の淀み……。
儂ですら、嫌な予感がして居ます。」
「………晴明様もですか?」
「? 儂“も”…とは、何故ですかな?」
「先程、結斗から〈主も同様の嫌な“予感”を感じて居る〉と……伝言が有ったんです。(晴明様に伝えるな!とは……云われて無いし、晴明様も感じて居るのは余程の事……。 念の為、伝えて置いて損は無い筈ですから……。)」
「成る程、雪菜様も感じた“予感”……。
此れは……事が簡単には、済みそうも有りませんな……。」
「私も、晴明様と同感です。 気を引き締めて参りましょう。」
「えぇ。」
そんな会話の後、暫く歩き………辿り着いた場所で待ち受ける事とは───?
ー産屋敷邸ー
『耀李様。 組織の発足について、誰かに相談はされたのですか?』
「えぇ、雪菜様。 ある神社の神主の方に相談した所……どうやら、一族の中から〝鬼〟が出て居たらしく……その〝鬼〟を倒す事に心血を注げと、云われまして。 其れで〝鬼狩り〟の創立と発足に繋がったんです。 まぁ……〝鬼狩り〟の名ですと余り、馴染みが有りませんので……“鬼殺隊”と云う、別の名称も作りましたが。
そして……病による短命については、神職の一族から妻を娶る様に……と。 さすれば、少しずつで有っても効果が現れれば、上々だろうから……と。」
『成る程、そうでしたか……。
私共も引き続き、病の原因究明及び治癒に努めます故……何なりと、申し付け下さいね?』
「有り難う御座います、雪菜様。 所で、晴明様はどうされたのですか?」
今回、産屋敷邸に赴いて居たのは、雪菜のみで……晴明の姿が見当たらず、周りをキョロキョロと見渡すも……その姿を見る事は、ついぞ出来無かったのだった。
『あぁ……すみません、耀李様。
晴明殿は今、急用が出来まして……帝の呼び出しで、内裏へ出掛けて居るんです。』
「急用……ですか?」
『えぇ。 急用とは云っても……終わり次第、此方に伺うと仰って居られましたから、その内に来られるかと。 其れ程、心配為さらず共……大丈夫でしょう。』
「そう云う事でしたら、納得致しました。」
『ふふっ、其れなら良かったです。(まぁ……晴明殿に限って、口約束で有ったにしても、約束は約束。 反古には為さら無いでしょうから。 でも、何か有ってはどうしようも無いしな……。 ……水月に様子を見て来て貰った方が、良いかな?)』
『《水月、居る?》』
《はい、此方に。》
『《悪いけど、晴明殿の様子を見て来て欲しい。 頼める……?》』
《承知致しました。》
『《お願いね?》』
《はい。》
『(何事も無ければ、良いけど……。)』
産屋敷家当主との穏やかな会話を続けながら、〝鬼殺隊〟の今後の事等についての話を詰めて行くのだった──。
そして、雪菜は晴明を案じつつも……心の中で一縷の不安を感じたのだった………。
だが、この時感じた“不安”……。
この“不安”は数日後……、的中する事に為る──。
* * * *
そんな或る日……、ある一人の陰陽師が〝鬼の始祖〟である鬼舞辻無惨と接触した……。
???「ふむ、此処が彼の者──〝鬼の始祖〟の住み処か。」
鬼舞辻「何の用だ?」
???「何、貴殿を滅す件で此処へ来たが……貴殿を一目見て、闘って見たくなった。 相手を頼めるかの?」
鬼舞辻「ふん。 老体と云えど、生粋の陰陽師とやらか……。 まぁ、良い。
私の力を思い知るが良い……。」
そうして、始まった闘い……。
暫くして──。
???「ハァ、ハァ……。(此の者の力が、此れ程とはな……。 儂でさえ、赤ん坊如きと云わんばかりの扱いとは……。 此方は、息切れして居るにも関わらず……彼方は、平然として居る。 此の差が〝鬼〟と〝人〟の差なのか……。 下に、恐ろしき
鬼舞辻「どうした? もう、終いか?」
???「貴殿の力は今、闘って十二分に判った……。 其れよりも、儂の気が変わったわ。 貴殿は、儂と手を組む気は無いか?」
鬼舞辻「手を組むだと……?」
???「あぁ、そうじゃ。 どうだ?」
鬼舞辻「(ニヤリ)フッ、貴様の様な老体と、手を組む気は一切無い。
貴様には精々、此れ位がお似合いだろう。」
ザシュッ……!
ドサッ!
ドクンッ………!!!
???「ぐっ……! うぅっ………!!
(なっ、何……? か、身体が熱いだとっ……?!)」
鬼舞辻「もし、生き残れたのなら……又、会う事が有るかも知れんな?」
ザッ!
???「ま、待てっ……!(生き残れたら……とは、どう云う事なのだっ?!)」
ガクッ。
時間が数刻過ぎた頃───、
気絶して居た者が、漸く目覚めた……。
だが──、この男は鬼舞辻無惨により……〝鬼〟と成ってしまったのだった。
本人に自覚は、今の所無いが。
パチッ、ムクリ……。
キョロキョロ。
???「………? 儂は一体、どうなったのだ……?
(いや、其れよりも……喉が乾いたな。 腹も減っとるし……。 此処に居るより、動くか。)」
テクテク……。
暫く歩き……辿り着いたのは、山に囲まれた小さな集落だった──。
村の外れに在る、一軒のあばら家に向かった男は……。
コンコン。
「はい?」
???「もし、悪いのだが……一晩泊めては貰えんか?」
「え、えぇ。 良いですが……御一人なのですか?」
???「あぁ、済まんが良いか?」
「分かりました、どうぞ……。」
???「悪いな。」
「いえ……。(この人の顔色は、どうしたのだろう……? あまり聞かない方が、良いだろうか……。)」
???「………。(この者を見て居ると、何故だか……食べたくなるな。
寝静まった頃、様子を見るか……。)」
「あの、食事はどうしますか……?」
???「いや? 食事は今の所は、要らぬ。」
「分かりました。 では、用意は不要なのですね?」
???「そうじゃな。」
そんな会話の後、暫くして……就寝時間。
「Zzz……。」
???「………。(寝たか……。)
では、頂きますじゃな……。」
ムシャ……グシャ……ピチャ……ゴリッ……。
???「ふぅ……御馳走様。(先程迄、感じて居た飢餓が……消えたな。 ……生身の人間を喰ったからか? 人を喰うのも、悪くは無いな……。
講して、男は人間を食べると言う……常軌を逸した行為を重ねて行くのだった──。
* * * *
この出来事から、数日後……。
ー京の都・夜ー
安倍邸──。
『晴明殿、此処数日……都近辺の郊外に在る山間部の集落で、人が一晩の内に数人ずつ……消えて居るそうです。』
「山間部の集落で……ですか?」
『えぇ……。 其れも主に、年若い男女だけが消えて居る様で……老人や子供、赤子を持つ夫婦等は皆、無事な方が多かったそうです。 水月に頼んで、近辺の集落の様子を調査して貰ったので……事実かと。』
「うーむ……。 年若い男女のみの被害か……。」
『産屋敷家の方へも、文は出して有りますが……我々で、対処する可能性の方が高いかと。』
「では……我々も準備が整い次第、見廻りを兼ねて向かいますか?」
『えぇ。 その方が確実ですし、村人の人達も安心するかと思いますので……。』
「承知致しました。」
『では、集落への出立は準備も有りますので、明後日に出立しましょうか。』
「えぇ、そうですな。」
『優月、結斗。 居る?』
スッ……。
「「(はい/おう)、此処に居(ます/るぞ)。」」
雪菜の声に応え、姿を現したのは……白猫と黒猫の二匹。 彼等の正体は……歴とした雪菜の式で有り、此の姿とは別に彼等自身の本性の姿を持つ、
主と認めて居るのは、雪菜に対してだが……晴明にも一応、敬意を払っては居る。
『優月と結斗には其々、晴明殿と私に付いて、一緒に行動を共にして欲しい。』
「「判(りました/った)。」」
『何か有れば、結斗と優月のお互いか……若しくは、私か水月に念を送って知らせて。 頼んだよ?』
「「(はい/おう)っ!」」
「二匹共……頼もしい限りですな、雪菜様。」
『ふふっ。 えぇ、本当に……。』
講して……被害の報告が有る、山間部の集落への出立が明後日と、決まったのだった。
しかし、山間部の集落の被害は……今この瞬間も、拡大し続けて居るのだった──。
ー出立、当日ー
『さて、いよいよ出立ですが……。
晴明殿、集落に入ってからはお互いに別行動としましょう。』
「承知致しました。 ですが、連絡はどうします?」
『其れについては、昨日打ち合わせした通り……優月達に頼みましょう。 今回、優月達は私達と共に行動する予定ですし……念を使えば、お互いに連絡し合えますから。』
「成る程、その為のこの子達ですか。」
『えぇ。 優月達も宜しく頼んだよ?』
「「(はい/おう)!」」
雪菜にそう……頼み込まれた二匹は、晴明と雪菜……其々の肩の上で返事をするのだった。
『では、山間部の集落迄は……優月か結斗に乗って移動しましょう。 お願いね?』
「判りました、主。」
その返答の後、雪菜の肩から降り……。
ブワッ……!
優月の身体が大きく成り、たちまち2m程の体長に変化した。
『晴明殿、先に優月の背に乗って下さい。 私と結斗も後から乗りますので。』
「判りました、よっ……っと!」
ストンッ!
『乗れましたね? じゃ、結斗おいで。』
「おう。」
主で有る雪菜に応え、(予め、晴明の肩から地面に降りて居た)結斗は雪菜の肩に乗った。
『うん。 よっ…!』
スタッ……!
結斗が肩に乗ったのを確認し、雪菜は優月の背……晴明が座って居る位置の前方に軽々と着地し、座ったのだった。
『良し! 晴明殿も私の腰に腕を回して居て下さい、降り落ち無い為の用心に。』
「判りました。」
ギュッ……!
『うん。 じゃ、優月。 山間部の集落迄、お願い。』
「了解致しました。」
グッ、フワッ……!!
優月は足に力を入れ、空に向かって翔んだ。 其れも、背に乗る者には負担が掛からぬ様……配慮しつつ、重力を感じさせぬ程に静かに空へと昇って行った。
* * * *
暫くの空の旅を、優月の背に乗って楽しんだ雪菜達。
漸く、目的地で在る山間部の集落に到着した。
フワッ……! トッ。
スタッ。
優月が音も無く着地後、雪菜達もその背から降り、目的地の地へと足を着けた。
「此処が……被害の報告が有った、場所……集落ですか?」
『えぇ、その筈だけど……気配とか空気等が此処迄、淀んで居る何て……。』
「どうやら、此処全体の地に〝鬼〟が住み着いた影響かも、知れませぬな?」
『その可能性は、高いかも知れませんね……。 では、打ち合わせ通り……別行動で動くとして、連絡は優月達経由で。』
「えぇ。 雪菜様も呉々も御気を付けて……。」
『クスッ。 其れは、晴明殿もですよ?』
「そうですな。」
『では、お互いに気を引き締めて行きましょうか。』
「えぇ。」
バッ……!
お互いに声を掛け合い……其々、別の方向へと歩いて行った。
『(晴明殿は、大丈夫だろうか……?)』
「雪菜。 お前……晴明の事が気掛かりで、優月の方を付けたんだろ? 少しは俺達、式を信頼しろよ……。」(ハァ……。)
心配そうに先程別れた、晴明の事を気にしている雪菜に対し、呆れつつ溜め息を吐いた結斗。
『ごっ……ゴメン、 結斗……。 決して、貴方達を信頼して無い訳じゃ無いの……。』
「んじゃ、何でだ?」
『………少し前に感じた“不安”が又、嫌な“予感”として感じて居るのよ。』
「………。 其れは、お前の〝陰陽師〟としての“勘”……でか?」
『えぇ、大いに関係有ると思う。』
「………判った。 俺も、晴明の事は気に留めて置く。 優月にも注意する様、伝えて置く。」
『ん……。 有り難う、結斗。』
「良いって事よ! んじゃ、早速……。
《優月、聞こえるか? 俺だ、結斗だ。》」
「《結斗? どうしました?》」
「《雪菜から伝言。 但し、晴明に伝えるかは……任せる。 一応、優月の心の内だけに留めとけ。》」
「《判りました、其れで……主からの伝言と云うのは?》」
「《雪菜が以前、感じた“予感”がするから、注意しろってよ。》」
「《主の“予感”ですか……。 其れは、侮れませんね?》」
「《あぁ、俺達も気を引き締めて置くぞ。》」
「《えぇ、判りました。》」
「(良し、此れで少しは良いだろ。)」
『結斗、優月とは連絡取れた?』
「あぁ。 彼方も気を引き締めて、注意して置くとさ。」
『そう……。』
「ほれっ! 此処の見廻りも兼ねてるんだから、さっさと済ませて優月達に合流するぞ!」
『ふふっ、判った。』
そんな会話をしつつ、雪菜と結斗のコンビは、着々と見廻りをして行くのだった。
* * * *
一方、晴明と優月のコンビは……。
「(ふむ、主の“予感”か……。 此処の見廻りを逐える迄、気を抜けませんね。)あの……晴明様。」
「何かな?」
「何か、感じたりしましたら……遠慮無く、御伝え下さいね?」
「えぇ、判って居ります。」
「なら、良いのですが……。」
「其れにしても……此処の見廻りを兼ねては居るとは云え、此処迄の淀み……。
儂ですら、嫌な予感がして居ます。」
「………晴明様もですか?」
「? 儂“も”…とは、何故ですかな?」
「先程、結斗から〈主も同様の嫌な“予感”を感じて居る〉と……伝言が有ったんです。(晴明様に伝えるな!とは……云われて無いし、晴明様も感じて居るのは余程の事……。 念の為、伝えて置いて損は無い筈ですから……。)」
「成る程、雪菜様も感じた“予感”……。
此れは……事が簡単には、済みそうも有りませんな……。」
「私も、晴明様と同感です。 気を引き締めて参りましょう。」
「えぇ。」
そんな会話の後、暫く歩き………辿り着いた場所で待ち受ける事とは───?