スタマイ夢短編

◇アイスファースト【槙慶太】◇

仕事帰りに、お目当てのコンビニ新作アイスを手に入れると幸せホルモンが分泌された。それはもう、柄にもなく人通りの少ない夜の住宅街をスキップしながら、家に帰ってしまうほど。

家に帰ると即座にお風呂へ入り、適当にご飯を済ませる。
夢中になって、アイスを食べていると机の上で裏っ返しで置いていたスマホが震えていた。

「……アイス溶けるの嫌だし、今は無視。」

薄情にも、電話を取らずにスプーンでアイスを掬った。
画面に表示されてる名前が自分の彼氏だとも知らずに。

「あー…美味しかった。」

完食したアイスの余韻に浸っていると、またスマホが震えたので今度はちゃんと電話に出た。

「あ、槙くん。」
『電話でないから心配した。』

電話越しの槙くんは少し不機嫌な感じがした。
表情が見えないからか、余計に。

「ごめん、新作のコンビニアイス食べてたの。」
『それなら、しょうがないな。』

私の馬鹿正直な理由に、槙くんは優しい声音で返事をしてくれた。その返事に私の声のトーンもさらに上がる。

「でしょ?槙くんの分も買ってあるから、出張から帰ってきたら食べてね。」

分かった。と、相槌を打った槙くんは少しの間を置いた後、言葉を継いだ。

『……ホントは一瞬、アイスにヤキモチ焼いた。』

その一言を聞いて、私の頭の中は「可愛い」という言葉で埋め尽くされた。
今、声を発すると「可愛い」しか言えない。
でも「可愛い」は彼にとって褒め言葉ではなくむしろ禁句レベル。落ち着け、私。言葉を選ぶんだ。
頭をフル回転させていると、槙くんから名前を呼ばれる。

「言ったら、怒るよね?」
『“か”から始まって“い”で終わるひらがな四文字の言葉なら怒る。』
「心の中に留めて置きます。」

彼にはお見通しだったようだ。

『明日休みだからって夜更かしすんなよ。』
「うん。槙君も、無理せずにね。」

そのまま私がまたね、と言ってすかさず槙くんが相槌を打ったのを聞いて電話を切った。
そして私は、まるで息を止めて我慢してたかのように、思いっきり可愛い、可愛すぎる。と、ひたすら独り言を吐き出すのだった。
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