スタマイ夢短編
◇帰りたくなくなった【槙慶太】◇
久しぶりのデートが2月14日ということで、堂々と準備出来た手作りの本命クッキー。
「あっ。」
「あ?」
それを忘れたのに気づいたのは、デートの終わり。澄んだ夜空にはぼんやりとした輪郭の三日月が浮かんでいる。そんな時間帯に、槙君は私のマンションの駐車場に車を止めた。
「槙くん、すぐに戻ってくるからちょっと車の中で待ってて。」
エンジン音が途切れたと同時に、シートベルトを外しながら彼にそう言い置いて、私は車から出る。
槙君が、おい。と呼んだのにも足を止めずに自室へ。
今日1日家に置き忘れてたクッキーを手にしてとりあえず一安心。もしかしたら今日1日中持ち歩いてた方が、型崩れしてたかも、無事で良かった。なんて、思っていたらドアが開く音がした。
「いくら短時間でも、鍵開けっ放しは不用心過ぎ。」
ただの呆れとも取れるけど、心配という優しさを醸し出しながら家へやってきた槙君。
「ごめん。早く槙君に渡したくて。今日一日……じゃなくて、いつも優しくしてくれて、ありがとう。」
いざ渡すとなるとどこか気恥ずかしくて、その恥ずかしさを笑って誤魔化しながら槙君に手渡したのは、紛れもない本命クッキー。
槙君は受けとるとすぐに、唇に弧を描かせて言った。
それはありがとうじゃなくて。
「ずるい。」
「はい?」
予想外の言葉に間の抜けた声が出る。多分表情にもその間抜けは出てるのだろう。そんな私の反応を余所に、継いで彼は笑みを崩さずに優しい声で言った。
「帰りたくなくなった。」
「えっ…。」
こんな積極的なの、普段の彼らしくなくて熱でもあるのかと疑いそうになる。
私も彼女らしく、彼の言葉をそのまま受け取って一緒に居たい。
「明日月曜日だよ?帰らなきゃ。」
でも、多忙な槙君だからこそ明日に備えて、今日はゆっくり休んで欲しい気持ちが勝ってしまった。が、結局私は、彼の気持ちに負けてしまうことになる。
「出勤前に一旦、家帰るから平気。……ありがとな。」
そう言って私の気持ちを汲み取りつつも、槙君は内鍵を回し、ドアを閉める音を短く響かせた。
久しぶりのデートが2月14日ということで、堂々と準備出来た手作りの本命クッキー。
「あっ。」
「あ?」
それを忘れたのに気づいたのは、デートの終わり。澄んだ夜空にはぼんやりとした輪郭の三日月が浮かんでいる。そんな時間帯に、槙君は私のマンションの駐車場に車を止めた。
「槙くん、すぐに戻ってくるからちょっと車の中で待ってて。」
エンジン音が途切れたと同時に、シートベルトを外しながら彼にそう言い置いて、私は車から出る。
槙君が、おい。と呼んだのにも足を止めずに自室へ。
今日1日家に置き忘れてたクッキーを手にしてとりあえず一安心。もしかしたら今日1日中持ち歩いてた方が、型崩れしてたかも、無事で良かった。なんて、思っていたらドアが開く音がした。
「いくら短時間でも、鍵開けっ放しは不用心過ぎ。」
ただの呆れとも取れるけど、心配という優しさを醸し出しながら家へやってきた槙君。
「ごめん。早く槙君に渡したくて。今日一日……じゃなくて、いつも優しくしてくれて、ありがとう。」
いざ渡すとなるとどこか気恥ずかしくて、その恥ずかしさを笑って誤魔化しながら槙君に手渡したのは、紛れもない本命クッキー。
槙君は受けとるとすぐに、唇に弧を描かせて言った。
それはありがとうじゃなくて。
「ずるい。」
「はい?」
予想外の言葉に間の抜けた声が出る。多分表情にもその間抜けは出てるのだろう。そんな私の反応を余所に、継いで彼は笑みを崩さずに優しい声で言った。
「帰りたくなくなった。」
「えっ…。」
こんな積極的なの、普段の彼らしくなくて熱でもあるのかと疑いそうになる。
私も彼女らしく、彼の言葉をそのまま受け取って一緒に居たい。
「明日月曜日だよ?帰らなきゃ。」
でも、多忙な槙君だからこそ明日に備えて、今日はゆっくり休んで欲しい気持ちが勝ってしまった。が、結局私は、彼の気持ちに負けてしまうことになる。
「出勤前に一旦、家帰るから平気。……ありがとな。」
そう言って私の気持ちを汲み取りつつも、槙君は内鍵を回し、ドアを閉める音を短く響かせた。