ヒロアカ短編集

◇速度制限◇

仕事帰り、星浮かぶ街で同じくプロヒーローとして活躍中の上鳴くんに会った。ヒーロースーツを着ているから、まだ勤務中みたいだ。
お互い軽く手を上げて挨拶をする。自然と横並びに歩く。

「上鳴くんって、wi-fi出せない?」
「はい?」

個性使い切ってないのに、腑抜けた顔をする上鳴くん。

「実はスマホ速度制限かかっちゃってさ。チャットも送れないし、アプリも全然動かない。電話くらいしか使えないんだよね。wi-fiも電波の一種だし、上鳴くんなら放出できないかなーなんて。」
「俺の個性、電気なんだけど!?」
「あはは!関連性あるかなって思って、ダメ元で聞いてみた!変なこと聞いてごめんね。……でも、冷静に考えて、もし今トラブルに巻き込まれたら、スマホ使えないの詰むよね。」

仕事終わって業務電話持ってないから、割と危険な状況ではある。
ヒーローは賞賛だけでは無い、憎しみをもつ者にいつ襲われたっておかしくない。

「wi-fiは出せねーけど。……一緒にいることはできる。」

上鳴くんが視線を逸らして、頬を掻きながら言う。
珍しく、チャラくなかった。

「でも、仕事中でしょ?」
「このパトロール終わったらちょうど終わり。……お前が良ければ」
「ありがとう。……じゃあ、速度制限が解除されるまで。」

8/1まであと数時間。

「そんな、細けーこと言うなっての。」

昔から変わらない上鳴くんの笑顔。
なのに、なぜか目に焼きついてしまった。

そのあと、結局

「いやー、ドリンクバーで粘ってお前とこんなに語り尽くしたの高校以来だな。」

数時間どころか、星が薄くなるほど空の色が変わるまで、ファミレスで一緒に時間潰してくれた。

「お互い忙しいからね。ごめん、今日も出勤?」
「別に気にすんなって。」
「余計なお世話はヒーローの本質ってやつかな?」

ニヤニヤしながら聞いてみたら、次の一言でやられた。

「俺、お前のことはヒーローとして動いてねーんだよな」

声が出なかった。
【ヒーローじゃないなら】の答えを出してしまったら、もう今のような感じに戻れないような気がして。

上鳴くんは じゃ、またな。っていつもの調子で言って、先に行ってしまった。
あの妙な言い回しに、その場で立ち尽くすしかなかった。
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